炎症性腸疾患のくすり
指導/
東山正明 防衛医科大学校消化器内科


 
▼病気に関する基礎知識
 炎症性腸疾患は、腸に慢性的な炎症が生じる原因不明の疾患で、潰瘍性大腸炎とクローン病があります。若い年代で発症することが多く、腹痛・下痢・血便などの症状があります。潰瘍性大腸炎の炎症は、直腸から連続して大腸に広がっていきます。一方、クローン病の炎症は大腸や小腸などに不連続に起こり、瘻孔(皮膚・腸管・膀胱などへの穴)を形成することもあります。
▼治療に関するくすりの説明
  治療は、5-アミノサリチル酸(5-ASA)で炎症が治まらない場合、重症度に応じ副腎皮質ステロイド、アザチオプリン、タクロリムス(潰瘍性大腸炎のみ適応)、生物学的製剤(抗TNFα抗体、抗α4β7抗体など)、JAK阻害剤(トファシチニブ:潰瘍性大腸炎のみ適応)といった免疫をコントロールするくすりを使い分けます。また潰瘍性大腸炎の直腸病変には注腸剤や坐剤(5-ASA、ステロイド)も有効です。5-ASA以外のくすりでは感染症に注意が必要となります。そのほかの代表的な副作用を表に示します。JAK阻害剤では帯状疱疹(体の左右どちらか一方に、ピリピリ刺すような痛みのある紅斑や水疱が帯状に現れる病気)の発症頻度が高くなりますが、早めに対処することでコントロールできることが多く、不活化ワクチン(シングリックス)が予防に有効とされています。
治療に関するくすりの説明
▼治療における留意点
 腹部症状が落ち着いても消化管の炎症は持続していることがあり、定期的に検査を受け、治療を続けることが大事です。
 


 
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