
Q.ガン1.大腸がん検診とは?
A. 通常、健康診断では大腸がんの場合、2日分の便を採取して、便に付着ないし混入した血液を調べる「便潜血検査」(一次検診)が行われます。出血の疑いがある場合は「陽性」と判定されます。必ずしも「陽性」=「がん」ではありませんが、陽性の場合何らかの病気の疑いがありますから、より精度の高い検査(二次検査)が必要です。
★大腸がん検診(主なもの)
1.便潜血検査:便内の大腸粘膜のがんによる出血をチェック
2.大腸内視鏡検査:大腸の表面を直接観察し、形や深さを捉え、生検や治療も可能
3.注腸X線検査:腫瘍による大腸表面の凸凹や腸管の変形をチェック
便潜血検査は大腸がんのリスクがある人をふるいわける役割(スクリーニング)があります。まずは便潜血検査を受け、陽性と判断された場合には、大腸内視鏡検査などのより精度の高い検査を受けることが重要です。(※ 平坦ながんなどでは、便に血液が付着せず、「陰性」と判定されることもあります。)
また、会社に勤めている人は定期的な検診で便潜血検査を受けますが、定年退職した方や自営業の方などは自主的に検査を受けることが少ないようです。また、便潜血検査を受け二次検査をすすめられた人の多くが、精密検査を受けていないのが実情のようです。
大腸がんは、早期に治療を行えば治癒できる可能性が高い病気と考えられています。初期の段階にはほとんど自覚症状がありませんので、自覚症状がなくても定期的に検診を受け、必要に応じてより精度の高い内視鏡検査などを受けることが大切です。
Q.1.インフルエンザと普通のかぜはどう違うのですか?
A.普通の「かぜ」の症状は、のどの痛み、鼻汁、くしゃみやせきなど上気道炎症状が中心で、発熱も37℃前後で、重症化することはあまりありません。一方、インフルエンザの症状は38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く、あわせて普通のかぜと同様にのどの痛みや鼻汁などの症状も見られます。さらに、肺炎、中耳炎、熱性ケイレン、脳症などを合併し重症化することがあります。乳幼児や高齢者、重篤な基礎疾患を持つ人は重症化するリスクが高いので、十分注意する必要があります。インフルエンザは、例年11月〜4月に流行しますが、一旦流行が始まると乳幼児から高齢者まで強い伝染力で感染が広がります。感染後、潜伏期が24-48時間程度で発症します。
Q.2.インフルエンザにかからないためにはどうすればよいのですか?
A. 予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることです。また、インフルエンザにかかった場合の重症化を防ぐ方法としても有効であることが報告されています。インフルエンザは、感染患者のせきやくしゃみなどで飛沫と共に放出されたウイルスが、ほかの人の鼻腔や気管など気道に吸入されることによって飛沫感染します。インフルエンザが流行してきたら、できるだけ人混みや繁華街への外出を控えましょう。空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下するためインフルエンザにかかりやすくなります。外出時にはマスクを着用したり、室内では加湿器などを使って適度な湿度(50〜60%)を保ちましょう。十分に休養をとり、体力や抵抗力を高め、バランスよく栄養をとることも大切です。帰宅時のうがいや手洗いも、一般的な感染症の予防としておすすめします。また、インフルエンザにかかった方は、周囲への感染予防のためマスクの着用が勧められます。
Q.3.インフルエンザにかかったらどうすればよいのですか?
A. 早めに治療し、体を休めることは、自分のからだを守るだけでなく、他の人にインフルエンザをうつさないという意味でも大変重要なことです。一般的には以下のような点に注意しましょう。
1)早めに医療機関を受診して迅速に診断した上で、適切なアドバイスを受けましょう。
2)安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。
3)水分を十分に補給しましょう。
健常者では、インフルエンザのほとんどは免疫の力で1週間前後で自然に軽快します。しかし、リスクの高い患者(免疫力の弱い方、基礎疾患のある方や高齢者など)には、重症化を防ぐ目的で抗インフルエンザ薬としてタミフル(経口薬)やリレンザ(吸入薬)など医師の判断で使用できます。ただし、発症後48時間以内に服薬を開始しないと効果がありません(5日間服用)。ただし、タミフルは服薬後の異常行動などの副作用のため10歳以上の未成年の患者では特別な場合を除き原則使用できなくなりました。また、小児・未成年者で本剤を服薬した場合少なくとも2日間は副作用の発現に注意して保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することが義務付けられました。
ウイルス感染症に抗生物質(抗菌剤)は効きませんが、肺炎や気管支炎など二次感染による合併症に対して抗菌剤が必要な場合があります。また、発熱や鼻汁、鼻づまりなどの症状に対して、一般的な「かぜ」と同様な処方を用いることもあります。それぞれの薬の効果は、ひとりひとりの症状や体調によって異なり、副作用への注意などがありますので、医療機関できちんと医師に相談し説明を受けてください。
一般的にインフルエンザウイルスに感染して、症状がでてから3〜7日間はウイルスを排出すると言われ、他の人へうつす可能性が高いので、人の多く集まるところは避けた方が良いでしょう。また、この間はマスクをするなど、周囲の人へうつさないように配慮してください。学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としております。
Q.4.インフルエンザにかかったとき、解熱剤は使ってもよいのですか?
A. 解熱剤には多くの種類がありますが、インフルエンザに罹っているときには使用を避けなければならないものがあります。ライ症候群の合併やインフルエンザ脳炎・脳症の重症化との関連性から、特に15歳未満の子どもへの使用を避けるべき解熱・鎮痛剤は、サリチル酸解熱鎮痛薬(アスピリン、バファリン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、メフェナム酸(ポンタール)などです。普通のカゼなどで処方された使い残しの痛み止めや解熱剤を勝手に使用することは避けるべきです。また、市販の解熱鎮痛薬の一部にはアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛成分を含んだものもありますので、自己判断せず、使用時にはかかりつけの医師によく相談してください。使用できる解熱剤としては、アセトアミノフェン(カロナール、アンヒバ坐薬など)が比較的安全とされています。
Q.5.インフルエンザワクチンの接種は効果がありますか?
A. インフルエンザワクチンの接種を行うことで、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にとどめることが期待できます。65歳以上の健常な高齢者については、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったという報告があります。小児については、1歳以上で6歳未満の幼児では発病を阻止する効果は約20〜30%で、1歳未満の乳児については効果が明らかではありません。ワクチンの効果は、年齢、本人の体調、そのシーズンのインフルエンザの流行株とワクチン株の抗原性の適合状況によっても変わります。特に65歳以上の方や重篤な基礎疾患がある方では、インフルエンザが重症化しやすいので、かかりつけの医師とよく相談のうえ、接種することをお勧めします。
インフルエンザワクチン接種については、13歳以上の場合、接種量は1回あたり0.5mlを皮下注射し、1回ないし1〜4週間(免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい)の間隔をおいて2回接種を行います。ただし、65歳以上の高齢者に対しては1回接種が推奨され十分な効果を認めています。13歳以上64歳以下の方でも、近年インフルエンザに罹患していたり、昨年インフルエンザの予防接種を受けている方は、1回接種でも追加免疫による十分な効果が得られると考えられます。2回接種をしたほうがより抗体価は上昇するという報告もあり、接種回数が1回か2回かの最終的判断は、接種を受ける人の状況(健康状態や生活環境など)と接種する医師の判断によりますのでよく相談して決めて下さい。
現在、世界で広く流行しているのは、A-ソ連型、A-香港型、B型の3種類です。抗原性の違う2種類のインフルエンザウイルスが、同じシーズンの中で複数流行した場合には、A型インフルエンザにかかったあとB型にかかったりすることがあります。インフルエンザワクチンには、その年流行が予測されるA-ソ連型、A-香港型、B型の3種類のワクチン株が含まれており、それぞれの型に対して効果があります。なお、当然のことですが、インフルエンザのワクチン接種ではSARSや鳥インフルエンザ、他のウイルスによる「かぜ」には効果がありません。
Q.6.インフルエンザのワクチンはいつごろ接種するのが効果的でしょうか?
A. インフルエンザに対するワクチンは、個人差はありますが、その効果が現れるまでに通常約2週間程度かかり、約5ヵ月間その効果が持続するとされています。通常日本のインフルエンザの流行は12月下旬から3月上旬が中心となりますので、12月上旬までに接種を済まされることをお勧めします。2回接種の場合は、2回目は1回目から1〜4週間あけて接種しますので、1回目をさらに早めに接種しましょう。
予防接種法による定期接種では、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者の方と、60〜64歳の基礎疾患がある方に接種が勧奨され、市町村から接種券が事前に送付され補助が受けられます。接種時に、必ず医療機関に接種券を持参してください。
任意接種では、医学的に接種が不適当だと考えられた場合を除けば、基本的にはインフルエンザの発症と重症化を防ぎたい方すべてが対象となります。 特に、基礎疾患がある方は、ワクチン接種を考慮すると良いと考えられます。接種期間に制限はなく、地域の医療機関、かかりつけ医などでワクチン接種が可能です。ただし医療機関によって予約が必要な場合もありますので、事前に直接電話等で問い合わせて確認してください。なお、任意接種の費用は医療機関により多少異なりますが、接種する国内生産のワクチンの効果および安全性には大きな違いはありません。
小児については、1歳以上6歳未満の乳児については、有効率20〜30%であることから任意接種としてワクチン接種が推奨されます。小児において気管支喘息などの呼吸器疾患やそのほか重篤な基礎疾患を有している場合、インフルエンザに罹患した場合に重症化したり合併症を起こすリスクが高くなるため、かかりつけ医に相談して接種を考慮すると良いと考えられます。また、医療従事者、介護ヘルパー、ハイリスク患者の家族の方々も「インフルエンザをうつさない」という観点から、ワクチンの接種を考慮すると良いと考えます。
(今年度の実施については「お知らせ」をご参照下さい)
Q.7.インフルエンザワクチン接種を受けない方がよい人や受けるときに注意が必要な人は?
A.1)予防接種法に基づいたインフルエンザワクチンの定期接種が、不適当と考えられる方は、予防接種実施規則に以下のように示されています。任意接種については、かかりつけ医から十分な説明を受けて判断する必要があるといえます。
< 予防接種実施規則による接種不適当者>
(1)明らかな発熱を呈している者 (通常は、37.5℃を超える場合)
(2)重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
(3)当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーショックを呈したことが明らかな者
(4)その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者 (ワクチンのアレルギーを疑う症状を呈したことがある者並びに過去に免疫不全の診断がされている者)
接種を受ける方の健康状態や体質をよく考えたうえで、医師によって接種の可否が判断されます。接種を行う際には改めて効果や副反応などについて説明をうけて、十分に理解した上で、接種を決めてください。
2)通常生後6カ月未満の乳児にはワクチンを接種しません。
3)妊婦または妊娠している可能性の高い女性に対するインフルエンザワクチン接種に関しては、エビデンスが十分でなく、現段階ではワクチンによって得られる利益が危険性を上回ると判断された場合にワクチンを接種するとされています。また、妊娠初期は様々な理由で自然流産する危険性の高い時期なので、一般的に予防接種は避けた方がよいと考えられています。一方、インフルエンザ予防接種直後に妊娠が判明しても人工妊娠中絶を考慮する必要はないと考えられています。
4)熱性けいれんやてんかんの既往がある方に対するワクチンの接種に関しては、一般に実施して差し支えありませんが、かかりつけの医師と相談して発熱やけいれん時の対策をとってワクチン接種をすすめてください。
Q.8.卵やゼラチンにアレルギーのある人もインフルエンザの予防接種ができますか?
A. 卵アレルギーの程度にもよりますが、ほとんどの場合問題なく接種できます。インフルエンザワクチンは、その製造過程に鶏卵を使うために、ごく微量の鶏卵由来成分がワクチンの中に残って、それによるアレルギー症状がまれに起こることがありえます。しかし、近年は高度に精製されてワクチンには、ほとんど不純物はなく軽い卵アレルギーの場合は問題にはなりません。しかしながら、重篤な卵アレルギー(重症のじん麻疹、呼吸困難、アナフィラキシーショックの既往)のある方は、ワクチン接種を避けるか、接種前にかかりつけの医師とよく相談のうえ十分に注意して接種することを勧めます。
また、ワクチンの安定剤として添加したゼラチンに対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が報告されていましたが、現在、国内のインフルエンザワクチンにはゼラチンは含まれていません。
Q.9.授乳中にインフルエンザワクチンを接種しても大丈夫ですか?
A. 授乳期間中にインフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため体内でウイルスが増えることもありませんし、母乳を通してお子さんに影響を与えることもありません。一方、母親がワクチンを接種したことによって、乳児に直接のインフルエンザ感染の予防効果を期待することはできません。また、ワクチン接種による精子への影響もありません。
授乳期間中にインフルエンザウイルスに感染した場合も、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられます。しかしながら、母親と乳児は極めて濃厚に接触していますので、インフルエンザ罹患中は感染の危険性が増加します。個々の状況に応じて現実的に対応することが必要であり、少なくとも、手洗い、マスクなどにより可能な限りの予防策をとることは重要です。なお、抗インフルエンザ薬を使用した場合は、薬剤が母乳中に移行するため授乳を控えてください。
Q.10.インフルエンザワクチンの接種による副反応にはどのようなものがありますか?
A. 一般的に副反応は軽く、10〜20%でワクチンを接種した場所の発赤、腫れ、痛み、しこり、熱感、しびれ感などをおこすことがありますが、通常2〜3日で消失します。全身性の反応としては、5〜10%で発熱、頭痛、関節痛、さむけ、体のだるさ、めまい、吐き気などがみられますが、やはり2〜3日で消失します。ワクチンに対するアレルギー反応としてまれに湿疹、じんましん、発赤とかゆみなどが数日見られることもあります。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、化学的に処理され病原性はありませんから、その接種によってインフルエンザになることはありません。その他にギランバレー症候群(GBS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、けいれん、肝機能障害、黄疸、喘息発作などの報告がまれにありますが、ワクチン接種との直接的関連についてはまだ明らかになっていません。 インフルエンザワクチンで著しい健康被害が発生した場合は、接種された医療機関でご相談ください。
インフルエンザ関連Q&A;1〜10
(参照;国立感染症研究所感染症情報センター http://idsc.nih.go.jp/index-j.htmlより)
Q.ピロリ(1)今話題のヘリコバクターピロリ菌とは? 日本人の約6千万人が感染しています。
A. 最近、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因として、ヘリコバクターピロリ菌が注目されています。この菌は、胃・十二指腸の粘膜に寄生し、慢性胃炎の主な原因となっています。また胃癌との関連も指摘されています。ピロリ菌の感染者は、日本人の50歳代以上の60〜80%以上の人が感染しているといわれています。一方、若い世代の感染率は、低くなっています。ピロリ菌は、感染した胃の粘膜を傷つけます。そのため、ピロリ菌が感染すると、胃の粘膜に慢性的な炎症がおこります。胃の粘膜は、だんだん萎縮して薄くなります。これを萎縮性胃炎といいます。萎縮性胃炎は、ピロリ菌に感染していれば、誰にでもおきますが、病気というよりも老化現象、いわば粘膜の肌荒れのようなものと理解されています。つまり、萎縮性胃炎があっても、ほとんどの人は深刻な病気にならずに、ピロリ菌と共存しているといえます。このほかピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃の粘膜にリンパ腫が発生する胃MALTリンパ腫の原因になることがわかっています。そのほか胃のポリープや胃がんとの関連性も疑われていて、現在その研究がすすめられています。潰瘍で悩んでいる方、身近に胃癌や潰瘍の家族がいらっしゃる方は、ぜひご相談下さい。
Q.ピロリ(2)ピロリ菌に感染した方のほとんどが、慢性胃炎になります。胃がんとの関係は?
A. 慢性胃炎の状態では、症状が全くない人と、胃の痛み・もたれ感・不快感等の症状が現われる人があります。一部の方は、感染時に急性胃粘膜病変という急性胃炎をおこし、激しい痛みをともなうこともあります。ピロリ菌に感染した人のうち、2〜3%の方は胃潰瘍・十二指腸潰瘍になります。潰瘍の原因は、ピロリ菌だけではなくストレス・体質などの複数の要因が重なって発症に至ると考えられます。ピロリ菌の保菌者では、一度潰瘍になると、くり返し潰瘍をおこすことが多いようです。こういう場合は、除菌療法の適応になります。慢性胃炎の方で症状の無い場合は、当面は様子をみていいと思います。ただし、胃癌検診(胃内視鏡検査など)は定期的に受けてください。
1994年WHO(世界保健機構)の国際癌研究機関(IARC)が、ピロリ菌を確実な発癌因子に指定しました。もちろん感染者のすべてが癌になるわけではありません。多くの感染者は、無症状のまま慢性胃炎でとどまります。胃がんは、 幼少期にピロリ菌に感染し、その後の食生活などを通して発癌物質に長期にわたって暴露されたり、遺伝的な背景が関与して発生すると推定されます。現在のところ除菌療法は以下のピロリ菌陽性の方を原則として適応としています。
ピロリ菌除菌治療の適応疾患
(日本ヘリコバクター学会、H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2003年改訂版より)
1.胃潰瘍・十二指腸潰瘍:【Aランク】
2.低悪性度胃MALTリンパ腫:【Aランク】
3.早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術後胃:【Bランク】
4.慢性萎縮性胃炎:【Bランク】
5.胃過形成性ポリープ:【Bランク】
6.機能性胃腸症:【Cランク】
7.逆流性食道炎:【Cランク】
8.消化管以外の疾患(特発性血小板減少性紫斑病など): 【Cランク】
ランクA;ピロリ菌の除菌治療が勧められる疾患
ランクB;ピロリ菌の除菌治療が望ましい疾患
ランクC;ピロリ菌の除菌治療の意義が検討されている疾患
ピロリ菌除菌療法の保険適応は、現在のところ胃潰瘍または十二指腸潰瘍に限定されています。かかりつけ医と相談しながら除菌療法の適応を判断し治療をすすめてください。
Q.ピロリ(3)ピロリ菌一次除菌療法とは?
A. 除菌療法の実際は、まず内視鏡検査を行い胃潰瘍または十二指腸潰瘍である事を確認します。(ただし、潰瘍である確証がある場合は省略できます。) つぎにピロリ菌がいるかどうかを調べます。患者さんの状況により検査法は異なりますが、内視鏡を用いて胃の粘膜の一部を採取してしらべる迅速ウレアーゼ試験や鏡検法、あるいは血液や尿による抗体検査、試験薬内服前後の呼気をしらべる尿素呼気試験、あるいは糞便の検査などを用いて判定を行っています。菌の存在が確認できたら除菌療法を行います。
現在保険で認められている一次除菌療法では、胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ・インヒビター(タケプロンなど)と2種類の抗生剤(サワシリンとクラリス)を1週間内服していただいています。状態に応じ、胃粘膜保護剤や整腸剤の併用を行います。確実に除菌を行うためには薬の飲み忘れがないように注意する必要があります。約80〜90%の除菌効果を認めます。
これらの薬をのむと軟便・下痢などの消化器症状(10-30%)や味覚異常、舌炎、口内炎(5-15%)が起こることがあります。軟便、軽い下痢、または軽度の味覚異常の場合は自分の判断でのむ量や回数を減らしたりせず、残りの薬を最後まで7日間のみ続けてください。症状が軽い場合は、治療終了後にほとんど速やかに軽快します。ただし、のみ続けているうちに下痢、味覚異常がひどくなる場合には、自己判断せずに直ちに主治医に相談して下さい。
また、ペニシリンアレルギーなどの既往のある方は必ず申し出てください。この場合は、現在の抗生物質の治療法は適しておりませんので、施行しません。
発熱、腹痛を伴う下痢、あるいは下痢に粘液や血液が混ざっている場合は直ちに主治医に連絡して内服中止などの対処が必要です。
Q.ピロリ(4)ピロリ菌除菌後の判定の重要性とは?
A. 除菌成功率は100%ではありません。除菌治療は消化性潰瘍の再発を著明に抑制する画期的な治療法ですが、約2割程度の方は失敗に終わります。失敗の場合には、消化性潰瘍の再発抑制効果が期待できませんので、従来のお薬を飲み続けるか、再除菌(二次除菌療法)を行う必要があります。除菌治療の成否により、治療方法が大きく変りますので、完全にピロリ菌が除菌されたかどうかを確認することが重要です。除菌療法やプロトンポンプ・インヒビターなどの抗潰瘍剤による治療終了後、4週間以上の間隔をあけて尿素呼気試験にて除菌を判定します。除菌失敗例では、二次除菌を実施しますが、健康保険では再除菌は1回のみに認められています。その一方で除菌成功例では、ピロリ菌の再感染率(2〜3%)は低いと報告されていますが、除菌後にも胃がんが発見されるなどの報告もありますので、定期的に胃内視鏡検査をしていく必要はあります。
Q.ピロリ(5)以前にピロリ除菌療法(一次)を受けたにもかかわらず除菌できませんでした。どうすればよいのですか?
A. これまで胃酸分泌を抑えるプロトンインヒビターと、アモキシリンおよびクラリスロマイシンの2種類の抗生剤による3剤併用による一次除菌療法が実施されてきました。しかしながら、10〜20%程度の患者さんが除菌不成功のまま放置されてきました。平成19年8月より、一次除菌が不成功例に対して有効な二次除菌療法が保険適用となりました。プロトンインヒビター(パリエットなど)とアモキシリン(サワシリン)に、新たにメトロニダゾール(フラジール)を組み合わせ7日間内服する治療法です。前述の一次除菌が不成功例に対し80%を超える高い除菌率が報告されています。一次および二次除菌療法を組み合わせることにより、95%を超えるピロリ菌の除菌が可能となりました。かかりつけの医師と相談の上、必要な検査を受けて二次除菌療法の適応を判断してください。
ただし、下記の患者さんは、二次除菌療法が禁忌ないし原則禁忌となりますので、ご注意ください。
(1)使用薬剤の成分に対してショックや過敏症の既往歴のある患者
(2)硫酸アタザナビル(抗HIV薬)を投与中の患者
(3)伝染性単核症の患者(発疹の発現頻度を高めるおそれがある)
(4)血液疾患のある患者(白血球減少があらわれることがある)
(5)脳・脊髄に器質的疾患のある患者(中枢神経症状が現れることがある)
(6)妊娠3ヶ月以内の女性(授乳中の婦人の場合、授乳を中止させること)
二次除菌療法の副作用には、薬剤アレルギー(蕁麻疹やショックなど)のほかに、下痢、悪心、味覚異常などの消化器症状、めまい、頭痛などの精神神経症状、肝機能障害などがあります。特に、下痢・軟便の頻度が高いとされています。また、メトロニダゾールはアルコールとの相互作用があるため、治療期間中はアルコール摂取(飲酒)を避けてください。治療開始後、体調が悪くなったり上記症状が悪化する場合は、遠慮せずに直ちに主治医に連絡し相談してください。自己判断で服薬を中止したり服薬の仕方を変えると、ピロリ菌の除菌が不成功となるだけでなく、抗生剤の効きにくい新たな耐性獲得につながる恐れがあります。
Q.ピロリ(6)ピロリ菌をめぐる今後の課題
A.A.問題点
1)除菌療法後に、逆流性食道炎をひき起こし易いとの報告があります。
2)除菌後に、ピロリ菌が原因でない胃癌と食道腺癌が、少し増える危険性を指摘した報告もあります。
3)感染経路がまだよくわかっていません。 汚染した水や、よく洗ってない生の食品、食べ物の口移しが危険です。ハエやゴキブリが菌を運ぶことも報告されており、食品や調理場の衛生管理が大切です。
4)抗生物質の効かない耐性ピロリ菌の出現。
5)ピロリ菌除菌にはタバコの禁煙または節煙が必要です。タバコを吸いながら除菌治療を受けると約50%の方が除菌に失敗しています。
B.ピロリ菌をめぐる最新情報
1)慢性じん麻疹が、ピロリ除菌により23〜36%の方で改善したとの報告があります。
2)慢性型の特発性血小板減少性紫斑病が、ピロリ除菌により改善されることが注目されています。
3)ピロリ菌感染と動脈硬化性疾患、脳卒中との関連が報告されています。(冠動脈疾患の危険因子ではない!)
上記疾患以外にもピロリ菌と他の全身疾患や発癌などの関連性が研究されています。
C.ピロリ菌を減らす食品
1)ココア脂肪成分(遊離脂肪酸);inner FFAココア(森永製菓)
2)ピロリ菌を減らすヨーグルト;LG21(明治乳業)
3)梅肉エキス
4)ブロッコリーの新芽(スプラウト)
5)ニュージーランド産のはちみつ「アクティブマヌカハニー」
6)地中海のギリシア・ヒオス島に自生するマスティクの樹液を含んだガム
ほかに、わさびの葉、シナモン、クランベリー(こけもも)、海草類などの報告があります。ただし、これらの食品はいずれも試験管内の実験でピロリ菌の増殖抑制効果が確認されていますが、人体内での除菌効果ははっきりせず、現在のところ除菌療法をしのぐものではなく、あくまで補助的療法と考えてください。
Q.ノロウイルス(Q1)冬の感染性胃腸炎、とくにノロウイルスについて
A. 感染性胃腸炎という診断名は様々な原因による症候群であり、ウイルスや細菌によるもののほか、寄生虫によるものもあります。冬季に発生する感染性胃腸炎のほとんどがウイルスによる胃腸炎です。原因ウイルスは、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、アストロウイルスなどが知られています。
毎年11月頃から翌年の4月にかけて、ノロウイルスの感染を原因とするウイルス性のおう吐・下痢症が大流行します。特に保育園、学校、老人施設など、集団生活を送っている施設においては、内部でヒトからヒトに感染し、爆発的に流行することがあります。
ノロウイルス感染症は、牡蠣(かき)などの2枚貝の生食による食中毒が有名ですが、ヒトからヒトへの感染力がきわめて強力なため、貝を食べなくても感染するケースが大半を占めています。
このウイルスを持った人がトイレの後で手をよく洗わずに調理をすると、ウイルスが食品に付着してしまい、汚染された食品が食中毒の原因になると考えられます。また、少量のウイルス(数個から100個程度)でも感染するので、食べ物だけでなく、人→人、人→器具→人などの感染もあります。ノロウイルスは環境中で数週間にわたり安定して感染性を持ち続け、アルコール消毒も歯が立ちません。従って、吐物や便で汚染された衣服や床はウイルス感染の危険性があるものとみなして直ちに交換・消毒することが必要です。
Q.ノロウイルス(Q2)ノロウイルス感染症の症状・治療法について
A. 主な症状ははき気、おう吐及び下痢です。通常は便に血液は混じりません。あまり高い熱とならないことが多いです。小児ではおう吐が多く、おう吐・下痢は一日数回からひどい時には10回以上の時もあります。感染してから発病するまでの潜伏期間は短くて数時間〜数日(平均1〜2日)であり、症状の持続する期間も数時間〜数日(平均1〜2日)と短期間です。乳幼児や高齢者、重篤な基礎疾患などがなければ、重症になって長い間入院しないといけないということはまずありませんが、脱水に注意してください。
特効薬はありません。症状の持続する期間は短いですから、その間に脱水にならないように、できる限り水分の補給をすること(場合によっては医療機関で点滴をしてもらって)が一番大切です。抗生物質は効果がありませんし、ノロウイルス感染症に対しては通常は使用しません。その他は吐き気止めや整腸剤などの薬を使用する対症療法が一般的です。極端にひどい下痢の場合には一時的に下痢止めの薬を投与することがありますが、一般的には下痢止めは症状を遷延させたり重篤化させるため最初から用いるべきではありません。
Q.ノロウイルス(Q3)ノロウイルス感染症の予防法とは?
A. ノロウイルスにはワクチンもなく感染を防ぐことは簡単ではありません。しかも感染力が強いため、免疫力の弱い小児や高齢者には簡単に感染して発病します。最も重要で、効果的な予防方法は流水と石けんによる手洗いですが、他にも様々な注意すべきことがあります。
1.調理に関して:
■ 調理の前と後で流水・石けん(液体石けんが推奨)による手洗いをしっかりと行うこと。
■ 貝類をその内臓を含んだままで加熱調理する際には十分に加熱して調理し、貝類を調理したまな板や包丁はすぐに熱湯消毒すること。
■ 食事を配膳する際にも手洗いをすることが勧められる。
2.おう吐物・下痢便の処理:
ノロウイルス感染症の場合、そのおう吐物や下痢便には、ノロウイルスが大量に含まれています。そしてわずかな量のウイルスが体の中に入っただけで、容易に感染します。また、ノロウイルスは塩素系の消毒剤や家庭用漂白剤(商品名:ハイターなど)でなければ効果的な消毒はできません。(アルコール消毒は無効)
ア)処理:感染を広めないためにできるだけ早く処理する必要があります。マスク・ゴム手袋(丈夫であることが必要です)をしっかりと着用し、雑巾等で吐物・下痢便をしっかりとふき取ってください。眼鏡やゴーグルなどで目の防御をすることをお勧めします。汚れた雑巾はビニール袋に入れて密封し、捨てることをお勧めします。その後うすめた塩素系消毒剤(家庭用漂白剤では200倍程度)で汚染した場所を中心に広めに消毒してください。
イ)汚れた衣類など:おう吐物や下痢便などで汚れた衣類は大きな感染源です。そのまま洗濯機で洗うと、洗濯槽内にノロウイルスが付着するだけではなく他の衣類にもウイルスが付着してしまいます。マスクと手袋をした上でバケツなどでまず水洗いし、更に塩素系消毒剤(200ppm以上)で消毒することをお勧めします。
3.家庭における注意点
最も重要な予防方法は手洗いです。帰宅時、食事前には、家族の方々全員が流水・石けんによる手洗いを行うようにしてください。 流行時は、公共施設の公衆トイレやドアノブなど、汚染の可能性が高く気をつけてください。
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