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  2011年8月 第143号
アメリカの実態と日本の医療の未来


先月末、長崎県保険医協会の定期総会が開かれ、そのとき記念講演、「貧困大国」アメリカの真実、があり聴講しました。演者の堤未果氏は若くて美人、魅力的な才媛でした。声もきれいで話し方も大変わかりやすく、内容もしっかりしたものでした。以前彼女が執筆されたルポ「貧困大国アメリカ」(岩波新書)を読んでいたこともあり、大変興味深く聞きました。その内容の中に医療問題があり、重要なことが述べられました。私がそのときメモしたことを今回かいつまんでご紹介したいと思います。

アメリカの実態:アメリカは世界最大の強国、豊かな国といったイメージで、特に1950年代は圧倒的な存在でした。しかしマスコミはあまり実態を伝えませんが、現在は貧困化が進行、オバマ大統領就任後も着実に進んでいます。ごく普通の中流階級も負債で貧困化し、テント村が急速に拡大。家の差し押さえは7秒に1件、食料切符が必要なひとは7人に1人。定職がない人は10人中6人、実質失業率は20%、自助努力しない生活保護者は5年間で打切りと徹底しています。

アメリカの医者のあいさつ:
日本ではまず患者さんに「どうされましたか」などと聞くことが大半ですがアメリカではまず「どこの保険会社のどのプランにお入りですが」と尋ねるのだそうです。95%の人がなんらかの民間の医療保険に入っており、保険の程度でどれだけの治療が受けられるかが決まっていて、病院も先生も自由には選べません。患者が救急車の中に乗っているときも同じことを聞かれるというから驚きです。医療の中に確実にビジネスが入っています。

驚きの保険会社:子宮筋腫と診断され、検査診断で100万円かかり、結局子宮筋腫でないことがわかると保険金の支払いが却下、何回も保険会社とやりとりしても埒が明かず、最後は保険会社はテープ電話のみの応対となります。却下で保険会社の職員の点数が上がるということです。もし一人がんになると2000万円の費用がかかり、保険に入っても莫大な金がかかります。それに収入が高いほど保険料は安く、低いほど保険料が高いという日本と全く逆な状態で、貧困層に極めて厳しいようです。医療保険を持っていても家族でがん患者が出れば破産を覚悟しなければなりません。医者も大変で保険会社とやはり契約し、看護師数、事務職員数などは指図され、できるだけ少ない人件費でいくよう指導されます。日本同様かそれ以上に、アメリカも事務手続きが極めて煩雑で、1週間のうち、4日患者診て3日は事務にあたる医者もいます。このため50時間寝ていないでそのまま手術に入る医者もおり、これで医療過誤もおきやすくなります。実際訴訟される医者も多く、莫大な費用を払って、訴訟保険に医者は入ります。2000万の収入があるのに1800万保険金を払わねばならなくなった医者もいて何のために働いているのかわからないと嘆いています。その結果医者の自殺率はアメリカで各種の職業の中で最も高くなっています。アメリカで儲かっているのは弁護士、大手製薬会社、金融、保険会社、軍需産業で、医者はすべてが必ずしも儲かっていないし、多くの患者も辛い状況にあります。

くすりづけ:コンビニには日本とは比べられないくらい大量で様々な薬品があり、一大ビジネスとなっています。You sick,We quickがキャッチフレーズで、人々は高額医療のため市販の医薬品で済ませようとします。また世界一のサプリメント消費国です。1年に7万人の子どもが誤飲のため病院を訪れ、死因の第一位はなんと薬の副作用で、年間30万人が死んでいます。

医療の市場化:医療が市場化すると、日本もアメリカのようになる恐れが高くなります。アメリカが加入を勧めるTTPに24の分野がありますが、もっとも国民に影響を与える1つは医療の分野です。市場化されアメリカの金融、医療資本が日本に入ってくると、国民皆保険の制度が危うくなると日本医師会、保険医協会は考えています。米国の市場化導入時のやり方はワンフレーズをばらまく、内容をぼかす、議論させない、マスコミには一部しか見せないです。TTPが何だかよくわからないまま決まってしまう危険性は大です。日本はWHOで医療制度第一位と認められたように、世界で冠たる医療制度充実国で、国民皆保険は日本の宝、誇りです。これをビジネスに渡して、医療制度の市場化をさせては絶対にいけない、と結ばれました。


  2011年7月 第142号
ヒトと動物について


私は多くの動物が好きです。今犬を飼っていますが、これがまたとても可愛い。容姿も可愛いが性格が特によくて優しいのです。主人に似て少しイヤシンボウですが、私を心から信頼しきっており、帰ってくるとまず、一番最初に挨拶しとびついてくれるのが、この犬です。疲れが吹っ飛びます。以前飛びついてきた子どもたちは、いまや見向きもしません。動物はいつまでも無心で、打算のない愛がそこにあります。動物と心を通わせることができることの幸せをしみじみと感じます。ところが今日本における動物の接し方はどうでしょうか。時々寂しい気持ちになることもあるのです。飼えなくなると何と捨てる馬鹿もいる。

動物好き:私は基本的にどの方ともできるだけ心置きなく付き合うように努めております。それでもどうしても気が合う、合わないは出てきますね。特にその方が心からの動物好きであれば、例外もありますが、だいたいにおいて、楽しいお付き合いができるようです。私は音楽好きですが、音楽好きの方とは必ずしもいつもいい関係であるとは限りません。立派な方も多いのですが、変わった方が多いのはむしろ音楽好きの方のほうでしょうか。

ペットについて:今の日本にはペットがたくさんいます。ペット療法も効果を上げています。例えば、末期患者、犯罪性のある精神障害者、障害児、性的虐待を受けた子供達のために有効です。また日常生活でも一緒に暮らすペットから癒しやリラックス効果を実感している人は沢山います。しかし残念ながら多くのペットが人間の身勝手で捨てられ、殺されている現実があります。また悪徳ブリーダーも数多くあり、そこで商品価値のなくなった犬や猫たちをむごい環境で死なせています。それらのことについてはここでは紙面もないので書きませんが、興味のある方は太田?虚F氏の「犬を殺すのは誰か」(朝日新聞出版)を読まれることをお勧めします

被害地の動物、ペットたち:悲しいことにこのたびの震災で多くの人が亡くなったり行方不明になり、その方々のペットや、飼っていた動物たちも大きな被害を受けました。犬や猫、そして牛たちがさまよい、痩せながら死んでいった姿をみると、人間の業の深さを感じられずにはいられません。牛を手放さなければならなかった私と同じ年齢の方は「原発さえなければよかったのに」といって自殺され、私はおおきなショックを受けました。

哲学者とオオカミから:今、私は左記の本(著者:マークローランズ・白水社)を読んでいろいろと啓発されることがありました。その中から一部ご紹介します。哲学者だけあり、難しい言い回しもありますが、サルを人間にたとえ、オオカミを本当の自然にたとえ、こう言っています。サルは物の価値をそれが自分に役立つかどうかで測る、人生で一番大切なものも、コスト、利益分析の視点から見る。だからサルには本当の友だちはいない、いるのは共謀者である。これに対してオオカミは私たちに人生で最も重要なものは決して計算ずくで得るものではないことを教えてくれる。真に価値があるものは量で測ったり、取引できないことを思い出させてくれる。そして私たちの誰もが、オオカミ的というよりサル的であると。その意味において著者は、ブレニンという名のオオカミは自分を教えてくれた兄でもある、といいきっています。このほかブレニンとのやりとりも大変面白く書かれており、一読をお勧めします。

敬愛する作家、故中野孝次氏の言葉:心より愛した柴犬の一生を描いた「ハラスのいた日々」は犬好きに愛され、私も興味深々で読みました。また映画化もされました。その中で、「犬もこの地球上に生きる一つの命である。しかも何千年来の人間の親しい友である。その親しい命への想像力と共感を失う時、ヒトはヒトとしてだめになってしまうにちがいない」と断言されています。





  2011年6月 第141号
放射線障害と原発事故


今回のテーマは現在わが国でもっとも深刻な問題となっている、原発事故についてです。まず放射線障害とはなにか、それに関する基礎的なことを述べ、そして原発事故に関しては、被爆地長崎に住む人間として、また医療従事者の一人として、一言述べます。

放射線は、生体細胞内のDNAを損傷させます。修復が不可能である場合にはDNAが損傷したまま分裂するか、もしくは細胞死を起こします。これらの影響が蓄積・拡大して身体機能を低下させるようになったものが放射線障害で、障害には以下の急性のものと慢性のものとがあります。

急性(即時性)放射線障害:主に細胞死によって生体器官の機能が損なわれて生じる影響です。ごく少量の被曝では影響が現れず、一定の線量を超えて被曝すると影響が発現します。確定的影響とも呼ばれます。1Gy(グレイ)以上被曝すると、一部の人に悪心、嘔吐、全身倦怠などの二日酔いに似た放射線酔いという症状が現れます。1.5Gy以上の被曝では、最も感受性の高い造血細胞が影響を受け、白血球と血小板の供給が途絶えます。これにより出血が増加すると共に免疫力が低下し、重症の場合は30-60日程度で死亡する。5Gy以上被曝すると、小腸内の幹細胞が死滅し、吸収細胞の供給が途絶します。このため吸収力低下による下痢や、細菌感染が発生し、重症の場合は20日以内に死亡します。15Gy以上の非常に高い線量の被曝では、中枢神経に影響が現れ、意識障害、ショック症状を伴うようになります。中枢神経への影響の発現は早く、ほとんどの被曝者が5日以内に死亡します。

慢性(遅延性)放射線障害:主にDNA損傷が固定化したことで発生する影響です。被曝者本人に発現するがん、白血病のほかに、遺伝子の異常によって子孫に遺伝障害が現れることもあります。ただ日本の原爆被害者の子孫では放射線照射による奇形は報告されていません。被曝した線量が多くなるほど発生する確率が高くなります。被曝線量が障害の発生確率に関係するため、確率的影響とも呼ばれます。

原子力発電所事故:放射線障害の最も大きな原因は、戦時では核兵器の使用でしょう。米国の無慈悲な広島、長崎への原爆投下で十分証明されました。本格的核兵器戦争となれば、人類をはじめとする、地球上生物は死滅します。また劣化ウラン弾の後遺症でイラクの人々は今も奇形、発ガンで苦しんでいます。ベトナム戦争時の枯葉作戦(ダイオキシン撒布)と同様アメリカの罪は大変重い。

平時での原発事故ではどうでしょうか。山下俊一長崎大学教授の放射能の安全性に関しての発言が様々な憶測を呼び、ネット上などで痛罵されています。真面目な立派な先生であることを知っている私たちだけに、十分な真意が伝わらないまま、心汚い人たちからの罵詈雑言を浴びせられるのを見ると、本当に心が痛みます。専門家でさえも意見が大きく割れているのに、放射線の影響、原子力に関するずぶの素人の私たちが、十分な科学的知識もないまま、詳細な安全性に関して知ったかぶりにあれこれは言えません。
ただ私見ですが、今後原発は中止の方向にすべきでしょう。理由を述べます。1)日本の原子力政策はアメリカの指示(技術下)のもとにすすめられ、結局は安全性より商業的利益を優先させていること。2)日本は地震が世界でも最も多い地域なのに、臨海部に建設され、活断層上にある所も多く、危険極まりないこと、そしてこれは今回はからずも実証されました。3)放射線障害の人体に対する影響は計り知れず、また放射能で激しく汚染された土地は長期にわたり住めなくなります。原発事故がさらに起これば、狭い祖国で日本人はいったいどこで暮らせばいいのでしょうか。政府の政策、マスコミの誘導で日本人は原発がなければ電気がなくなるというマインドコントロールにのせられました。電力会社もさることながら、おおもとの政府の政策、そしてそれを陰で操ってきたアメリカの施策(基本的には黒い金融資本家によるものでしょう)は強く非難されるべきだと思います。ドイツは住民の民度、意識が高く、自然エネルギーを最も多く使う先進国です。もともとクリーンエネルギーの開発国、日本は見習うべきところも多いようです。





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