新庄内科だより

新庄内科だより(平成30年1月号)

セキと胃食道逆流症(GERD)

胃食道逆流症(GERD)の有病率は1990年代末期より増加しつつあります(図1)。増加の原因は胃酸分泌の増加、ピロリ菌感染率の低下、GERD認知率の上昇、GERDの疾患概念の進歩などが挙げられます。

図1

GERDと関連するセキの原因として主に2つのメカニズムが考えられています。ひとつは迷走神経を介した食道-気管気管支反射(いわゆる反射説 reflex theory)であり、もうひとつは逆流した胃内容物の不顕性誤嚥(いわゆる逆流説 reflux theory)です。食道運動不全と食道排出遅延も上記の2つの原因と関連しています。GERDと関連したセキではほとんど(約75%)で胸焼けなどの上部消化管症状が認められません。かがみこんだり立ち上がったりなどの姿勢の変化・食事・発声などでセキが増悪する場合にGERDによるセキを疑う必要があります。

表1は京都大学附属病院喘息慢性咳嗽外来での慢性咳嗽の原因の推移を示しています。咳喘息(CVA)は一貫して順位1位(36%→62%→57%)ですが、GERDでは2%→8%→11.5%と十数年の間に慢性咳嗽に占める割合が着実に増加しています。

表1

表1よりもさらに最近の遷延性・慢性咳嗽の原因疾患の統計が名古屋市立大学病院から発表されています(図2)。一番多いのが咳喘息で31.9%、二番目がGERDで13.8%です。

図2

「2疾患以上の合併」が38.1%を占めていますが、表2で明らかなようにGERD合併例が大多数です。

表2
2疾患以上の合併(n=80)
咳喘息 + GERD 58
SBS + GERD 6
咳喘息 + SBS + GERD 7
アトピー咳嗽 + GERD 3
咳喘息 + SBS 4

合併症例を重複させて改めて数え直すと咳喘息(64.8%)、GERD(50%)であり、長引くセキ(遷延性・慢性咳嗽)の場合に半数にGERDが絡んでいると考える必要があります(表3)。

表3
原因疾患 n(%)
咳喘息 136(64.8)
GERD 105(50.0)
副鼻腔気管支症候群(SBS) 35(16.7)
感染後咳嗽 18(3.8)
アトピー咳嗽 7(3.3)
心因性咳嗽 2(1.0)

セキが逆流を惹起し、逆流がさらにセキを悪化させる悪循環(セキと逆流の自己永続サイクル:Cough-Reflux Self Perpetuating Positive Feedback Cycle)の概念が提唱されています。セキによる経横隔膜圧の上昇や下部食道括約筋の一過性弛緩が胃食道の逆流をもたらし、それが遠位食道−気管気管支反射や微量誤嚥などにつながることでさらにセキを生じるという考え方で、抗逆流療法でこの悪循環を断ち切ることが重要と考えられています(図3)。

図3

最後に日本呼吸器学会が2012年に発表した「咳嗽に関するガイドライン第2版」を示します。

図4

「胃食道逆流症(GERD)による咳嗽」ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)を8週間投与し、標準量のPPI投与で効果がない場合には、PPIの倍量投与や分2投与、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、消化管運動機能改善薬の追加投与を考慮します。