横須賀中央駅,横須賀市,若松町 泌尿器科 里見腎泌尿器科
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〜ゆうゆうひろば〜
当院で定期的に発行しているものです。開院から定期的(3〜4ヶ月に1号)に発行し、10号に達したのを機にテーマ別に編集しなおして2003年1月小冊子として刊行いたしました。

この小冊子は1冊350円でお譲りしております。1500部の売り上げの全てを『国境なき医師団』へ寄付しています。ご希望の方は当事務まで電話又はFAXでご注文下さい。

※尚、2011年4月現在、29号まで発行しております。

上手に医者にかかるための講座
 1 インフォームドコンセントとセカンド・オピニオン
 2 再びセカンド・オピニオンについて(別の医者の意見を聞くこと)
 3 良い家庭医を見つけましょう
 4 良い病院の見分け方−その1
 5 良い病院の見分け方−その2
 6 また又、セカンド・オピニオンのすすめ
 7 セカンド・オピニオンを求めた実例
 8 病診連携に関心を持とう
  〜3時間待って3分診療をなくすために〜
 9 病診連携と医者の責任
10 インフォーム→セカンド・オピニオン→そしてコンセント(同意)
11 もう一人の医者の意見を求めた記録
12 病診連携を有効に使おう
  〜病院と開業医の両方に主治医を持つこと〜
13 手術はどの様に決定されるのか (その1)
14 手術はどの様に決定されるのか (その2)
15 手術はどの様に決定されるのか (その3)
16 また再びセカンドオピニオン論
17 セカンド・オピニオンを求めても、主治医は不愉快には思いません
18 セカンド・オピニオンに対する医者の本音を聞いて下さい
19 隠れセカンド・オピニオンの勧め
20 一度は専門家にかかろう
21 前立腺がんと診断されたが、実はがんでなかった話
22 前立腺肥大症と思われていたが、前立腺癌であった話
26 医療は不確実なもの「死ぬ危険があるかもしれませんが、いいですか」
27 お母さんが頼りです 睾丸回転症で睾丸を失わないために
  〜全国で毎年200人が睾丸を失っています〜
28 -平均余命表から- 齢80。まだまだ捨てたもんじゃない。
29 -微量の放射線なんて怖くない?- 私達は毎日それを浴びて生きているのです。
30 -先生方!安易にCTを撮りすぎていませんか- 患者さんは大量の放射線を浴びていますよ
31 -前立腺がんが増えました- 泌尿器科医はがん専門医です。
32 血尿に気づいたら。
33 セカンドオピニオンの実例
34 水分を大量に摂っても血液はサラサラになりません。
35 セカンド・オピニオン 自分の努力で、自分の命を救った患者さんの話
36 性感染症(性病)は静かに広まっています−横須賀市の集計を紹介します−

II
日本の医療の崩壊は始まっている(1)
23 勤務医が今、病院を辞めたくなる理由―「多忙」
24 勤務医の多忙の理由はなにか
25 病院の医者が辞めていくのは多忙のためか


1.インフォームドコンセントとセカンドオピニオン

■インフォームド・コンセントという言葉を一度くらいお聞きになったことがあると思います。

『十分な情報、説明と同意』という意味です。

日本の病院の診察は3時間待って3分診療という悪評ですが、患者さんに病気のことを十分説明して、治療方法を同意してもらった上で治療しようというアメリカ直輸入の考え方で、近代的な考え方として流行しはじめました。アメリカは訴訟社会ですから、結果が悪ければ直ぐ訴えられます。

医療も患者と医者の間の商契約と考えられており、病気についての情報や何通りかの治療法とその成績、副作用などを説明し、よく理解した上で患者自身の意志で治療法を決めてもらい治療にうつることが原則的におこなわれているようです。

■日本では多くの病院でインフォームド・コンセントが一応行われています。しかし、これが曲者なのです。例えばある病気の治療にA・B・Cの3つの方法があるとします。夫々の治療法と成績、副作用をある程度詳しく説明を うけ、さて貴方がどの方法を望むか決めて下さいと言われても、不十分な理解で自分の命にかかわることを決断することはそう容易ではありません。結局多くの場合「おまかせします」ということになります。

■医者もA・B・Cの治療の説明の際に自分の得意なAのみを強調し、あまり十分知らないB・Cについては批判的に副作用を強調したりして説明をするきらいがあります。患者は当然Aが良い方法だと判断してしまいます。本来のインフォームド・コンセントではないのです。しかし、あまり目くじらをたてないで下さい。大体は多分良い治療法が選択されているからです。

■しかし、時に、手術をしなくても良いのに手術をされたり、摘出をしなくてよいのに臓器を取られたり、放射線療法で十分延命できるのに、よい放射線治療装置がないため放置されたり、内視鏡手術で十分であるのに技術がないために開腹手術になったりした患者さんを見聞きすると、あまりにもずさんなインフォームド・コンセントがなされていると、自分のやってきた過去の診療を棚に上げて怒りを感じるのです。

■現代の医療は進歩し、細分化(専門家)しすぎてしまい最先端の知識と技術を全ての医者が持っているのは不可能です。当然医者は自分のできる範囲内での治療を説明し、奨めることになります。あなたがその治療に不安や疑問を感じたり、手術が必要かどうか迷ったときは、ぜひ別の医者の意見( セカンド・オピニオン)を聞くことをおすすめします。これが不完全なインフォームド・コンセントを補うよい方法で、賢い医者のかかりかたです。できれば、隠れてではなく、もう一人の医者に セカンド・オピニオンを求めてから決定したいと主治医に申し出ることがよいと思います。自分の治療に自信のある医者は喜んで、セカンド・オピニオンを聞くことをすすめてくれます。あなたの命や苦痛にかかわることですから当然慎重に決めて下さい。上手に医者にかかって下さい。



2.再びセカンド・オピニオンについて(別の医者の意見を聞くこと)
 
■現在受けている治療に不安や疑問を感じたり、手術をすすめられ本当に必要なのか迷った場合には、ぜひ別の医者の意見(セカンド・オピニオン)を聞くことが賢い医者のかかり方ですと 前号でお話致しました。

今回は当院にセカンド・オピニオンを求めた方と、当院から他の病院にセカンド・オピニオンを求めた方の具体例を紹介し、皆様の参考にしていただきたいと思います。

■その1
患者さんは71歳の男性でK市にお住まいの方です。ある大きな病院の泌尿器科で開腹による前立腺肥大症の手術をすすめられましたが、本当に開腹手術をしなければならないのか迷い、別の医者の意見を求めて友人(医者)の紹介で当院へ来院されました。かなり大きな前立腺肥大症で頻尿も長期に続いており、排尿障害も強いようですので手術はされたほうが良いと思いました。

前立腺肥大症の手術は、一般的に100gを超える大きなものは開腹手術が適応ですが、70g以下では開腹せず尿道から内視鏡を入れて切除する方法が患者さんの負担が少なく、すすめられています(腕に自信のある医者は100gを超えても内視鏡で切除しています)。この方の場合、指で触った印象では50gくらいで、前の病院で前立腺のレントゲン写真を撮っていると言うことで取り寄せて再検討することになりました。本人が前医に頼んで、レントゲン写真と情報(紹介状)をもらってきました。これは、なかなか勇気のいることですが、自分の病気のことですので真剣にあたれば、自信のある医者ほど快く別の医者に意見を求めることに協力してくれるものと信じています。本人の希望通り内視鏡術のベテラン医師を私が紹介し、手術は無事終了、良い結果で患者さんは今満足されています。この患者さんの場合、合計8通の紹介状が4人の医師の間で行き交いました。

■その2
患者さんは1歳10ヶ月の男の子で、両側の睾丸(現在は医学的には精巣といいます)がいつも陰嚢(睾丸が入っている袋)の中になく、少し上がっていることが分かり、A病院で精巣固定術をすすめられました。本当に手術は必要なのか心配で、かかりつけ医のすすめで当院に相談に来ました。精巣は確かに上がっていますが、小児にありがちな移動睾丸で将来は陰嚢の中に落ちてくるので手術は不要と説明しました。しかし、両親はまだ心配で、さらにまた同じA病院の別の泌尿器科医に相談し、やはり手術をすすめられた といって戻ってきました。停留睾丸という先天性の病気があり、これはいつまで待っても自然に下降して来ませんので原則として手術をします。それとの鑑別が問題だったわけです。そこで4人目の医師の意見を求めて、この病気の権威である神奈川県こども医療センター泌尿器科部長へ紹介状を書きました。こども医療センターの部長からは「移動睾丸の手術は必要ないと思う。両親も納得した。」との返事をいただきました。この位しつこく努力されることを、ぜひおすすめ致します。

■実際には今の日本で「別の医者の意見を聞きたいので、治療はちょっと待って下さい。」と断り、今までの資料を借りて別の医者の所へ行くのは非常に勇気のいることですが、これが当たり前のようになるには患者さんの熱意に頼るしかありません。期待しています。
(*この2人の患者さんの掲載は、本人または家族の承諾を得ております。)
(「ゆうゆうひろば」2号.2001.1発行より)

■私も泌尿器科に病気でセカンド・オピニオンドクターとして相談を受け付けています。ご利用ください。料金は初診料のみです。
(「ゆうゆうひろば」1号1面 1999.10発行より)



3.良い家庭医を見つけましょう

「医者を選ぶのも寿命のうち」という医者の立場から言えば、残念な言葉がありますが、確かに上手に医者にかかるためには良い医者を選ぶことが大切です。今回は、良い医者を選ぶため のヒントを少しお教えします。

■イギリスでは原則として自分で医者を選ぶことはできず、自分の地域の開業医は指定されます。アメリカは自由にかかれますが、お金がなければ希望の医者にかかれません。日本では、誰でも同じ安いお金で自分で選んだ医者にかかれる非常に良い制度になっています。厚生省の目指すものは、体の調子が悪くなったらまずはじめに、地域の家庭医(開業医)にかかり、家庭医が自分の手に余る病気であれば地域の病院へ紹介し、 地域の病院でも手に負えない場合は更に上級の専門病院(がんセンターやこども医療センター)や大学病院に送るシステムになっています。

■しかし、地域の開業医についての情報がないため(医院の医者の出身大学や経歴を広告することは規制されています)、どの医者が良いのか分からず、「まあ、大学院の医者なら大丈夫だろう」と3時間待たされるのを覚悟で病院へ集まります。
患者さんのこの病院志向が、説明不十分で患者さんの話も十分聞かない、悪評の3分診療を支援することになっています。皆さんが不評の医療を育てているのです。

■開業医には2種類あります。1つはプラマリーケアを目的にした一般の家庭医で、まず症状が出たら何でも相談にのり、自分の不得意な分野、手に負えない病気は他医に紹介する医者です。もう1つは、皮膚科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、そして我が泌尿器科などの単科を標榜している専門医の開業医です。この専門医は大学や大きい病院で長年修業を積んだ人々ですので、大病院の外来診療に優るとも劣らない診療がなされているはずです。また、内科医の中に、胃腸科、循環器科などの標榜があるものは、得意な専門分野をやっていることを示しています。私自身、開業をしてみて、開業医の多くが誠実に真剣に診療しているのに感服しています。安心してかかって良いのではないでしょうか。

■信頼できる家庭医を常日頃から見付けておくことが必要です。一口に信頼できる医者の見分け方は言えませんが、誠実な人、自分の得意でない分野の病気、手に負えない病気はすぐ他医へ紹介する医者が最低限の基準でしょう。専門分野ではないのに全ての病気の人を抱え込んでしまう医者は要注意です。専門医への紹介を依頼してみて、すぐに迷わず紹介してくれる医者は家庭医として信用できます。

■医学は日進月歩ですから、勉強しない医者は、どんどん実力が落ちていきます。勉強しているかどうか見分ける方法は、一般の人には難しいでしょう。学会や医師会の勉強会によく参加しているかどうか、密かに観察されるのは一案です。家庭医は誠実さが、単科の専門医は臨床的実力が特に要求されます。

■以上、手前みその話を信用しない方は、自分で情報網を巡らし、少しずつ良医マップを作成し、広めていくことです。市民の力で医者を評価し、医療を育てて下さい。医者を選ぶのも患者さんの責任です。

4.良い病院の見分け方 ― その1 ―

前号で、体の調子がおかしい時に、まず相談するのは普段から良い家庭医を見つけておいて、そこにかかった方がよいですよという話を書きました。しかし、家庭医では手に負えない重大な病気の場合は病院へ行かねばなりません。今回は、病院の良し悪しを少しお話しします。一口に病院といっても、ベッド数100床前後の小病院、200床くらいの中病院、500床以上の大病院そして大学病院など夫々目的(地域における役目)が異なります。あなたの病気がどの種類の病院で治療するのが適当か判断して受診すべきです。そのためにも 初め家庭医に相談することをお勧めいたします。

■よい医者と十分な医療設備(医療機器)そしてよいスタッフ(看護婦、看護助手、検査技師、レントゲン技師、薬剤師、臨床心理士、ケースワーカー、理学・作業療法士、その他)が、豊富にそろっているかどうかが病院の評価の基準です。

■病院におけるよい医者とは、臨床的な実力のあることが最も求められますが、実際にはあなたのかかっている医者に臨床的能力があるのかどうか簡単に判断できないのが困ります。一つは、その病院の知り合いに聞くと正直な情報が得られます。勉強しているかどうか知るためには、インターネットでその医者の論文の数と題目が分かるようです。これも一つの方法です。論文を書いている医者が全てよいかどうかは問題がありますが、常に勉強しようとする姿勢をもっているということは言えます。大学の医者のように基礎研究の論文のみでは困りますが。

■もう一つは、共感する心を持っている医者かどうかも重要です。あなたの話をよく聞いてくれるかどうか、今、癌を心配しているのに2週間以上も先に検査を予約しただけで診察が終わる医者は心ある医者とは思えませんね。よく見極めて下さい。愛想はよいけれど心の無い、逆に厳しいけれど患者さんのことを心配している医者も多いので、正しく見極めましょう。

■医療機器特に放射線科の設備、CT、MRI、アイソトープ検査、放射線治療装置があることは大病院のシンボルです。しかも夜中にレントゲン検査が出来ること、夜中に検査室が活動していること、病理学の常勤医が毎日勤務しており、手術中、生検組織の返事が直ぐわかるなども必携です。
(次号に少し詳しく述べます)

■朝日新聞にクリティカル・パスのことが掲載されていました。今、病院では入院の際、診療予定表(クリティカル・パス)を手渡し、説明する方向にむかっています。あらかじめ入院から退院までの検査日程、手術、点滴、退院日など教えてもらえば患者としては安心です。心の準備ができます。また、ある手術で10日間で退院の病院と20日で退院の病院があればどちらがよいか判断もできます。多くは早いほうが、手際よく手術をして、術後も必要以上に病院にとどめることを少なくしようとする意思が感じられます。
(これも次号で詳しく述べます)

■大中小のいろいろな病院があり、夫々地域において役目があります。ただ漠然と大きい病院だから安心という選び方は感心しません。医者にも病院にもいろいろありますから。
次号はもう少し具体例でお話します。
(註:最近クリティカル・パスという言葉はやめ、クリニカル・パスが普通に使われています。)



5.良い病院の見分け方 ― その2 ―

前号で、良い病院とは、よい医者(臨床的な実力があり、患者さんの話に共感する心を持っている人)、十分な医療施設、十分な医療スタッフがあることだと申しました。それだけの説明では十分に理解できなかったことと思いますので、今回は具体的な例で話を進めます。なお、誤解のないように申し添えますが、病院とはベット数が20床以上ある医療施設のことです。ベットがないかまたはあっても19床以下は診療所=医院と言います。ここではベット数が多い病院の話です。

■患者さんの夜間急変に如何に対応できるかは、病院の評価の一つの重要点です。私の勤めていた病院の経験ですが、入院中の患者さんが夜中に急に呼吸困難を訴え、血中の酸素、炭酸ガス濃度を直ちに測定し、呼吸困難の程度が判明し(これは夜中も検査室が昼と同じように機能しているから出来ることです)、緊急の治療が必要ということになりました。放射線科へ依頼、重いポータブルのレントゲン装置を押してレントゲン技師さんが来てくれ、肺のレントゲン写真が撮られ、その結果太い気管支に何かがつまっていることが分かりました。夜の12時過ぎですが、直ちに院内にいる呼吸器科の医師を探し気管支鏡を依頼したところ、部長はじめ4人の若い医師が駆けつけ病室で気管支鏡を行い、気管内のつまった物を吸引し気管支内を洗浄し、症状は改善しました。この様に昼間と同じように機能できることは病院のあまり知られていない優れた点なのです。

■病院での病理の医者の重要性を知っている方は少ないと思います。手術や検査(生検といいます)で採取した組織は病理の医者が顕微鏡で見て、何の病気か、程度はどうかなどが分かるのです。目で見ただけでは癌であるかどうかなど確定診断はできません。術前のレントゲン検査ではいかにも癌のようであっても、摘出してみて癌でないことが時々あります。癌かどうか確実でない場合は通常手術中に組織の一部を採り、20〜30分待つことで「癌ですよ」とか「癌はありません」という病理の医者からの電話を待ち、次の段階に進む方法がとられます。しかし、病理の常勤医がいない(常勤でも休みを取っている場合もあります)と取らなくても良いものを摘出してしまう結果になったり、摘出しなくてはならないものを取らなかったりする結果になります。常勤の臨床病理の医者が毎日いることは、良い病院の必要条件です。

■その他、麻酔科の常勤医がいることも重要な評価材料です。夜間急変したとき手術をしたくても、麻酔科の常勤がいないと次の日まで手術をやむを得ず延ばすことがあります。夜間も手術ができる体制が整っているかどうかも大きな要点です。

■放射線治療の専門医がいるかどうかも大きな問題です。放射線の専門医がいても、診断医が多く、治療医は少ないのです。最新の癌の治療ができるかどうかを彼らは握っているのです。

■例えこのように十分な施設でなくても、あなたの主治医が熱意のある優秀な医師であれば自分の手に負えない時には、更に上級の病院へ患者さんを紹介(転送)することにより、よい医療が受けられるのです。この様な事まで思い巡らして病院を選択するのは非常に難しい事でしょう。結局信頼できる医者(家庭医)に相談することが、よい医療を受けるための最短の方法かと思うのです。



6.また又、セカンドオピニオンのすすめ

■現在受けている治療に不安や疑問を感じたり、病院で手術をすすめられ本当に必要なのか迷った場合には、別の専門医の意見(セカンド・オピニオン)を聞くことが上手に医者にかかる方法ですよと本紙1号、2号に書きました。その後、当院には大勢の方がセカンド・オピニオンを求め来院され、私の愚見を聞いて元の病院へ帰られた方、他の病院に紹介した方、そして当院で治療している方などがおられます。一応それぞれ安心し納得しておられるだろうと思っています。

■しかし実際には、初めの医者に、もう1人の医者の意見を聞きたいので資料を貸してほしいという勇気はなかなか出ないものです。5月9日の朝日新聞の特集でもこの問題の難しさを取り上げていました。セカンド・オピニオンの話を持ち出すと、機嫌が悪くなったり怒ってしまう医師がいることは残念ながら事実でしょう。この 様な医者は「患者が医師の私の言うことを信用しないためにセカンド・オピニオンなどという考えを持ち出すのだ。」と自分の立場きり見えず立腹するのだと思います。「患者さんは自分の命がかかっているのだから迷うのは当然で、もう1人の医師の意見を聞きたいというのは当たり前」と患者さんの気持ちに同感できれば何にも怒りはおこらないはずなのです。この 様な未成熟な医者を困った事だと嘆いても問題は解決しません。

■一度出来上がってしまった夫々の医者の個性を改善するのは並大抵ではありませんが、医学生の内から患者さんがセカンド・オピニオンを求めることは当たり前なのだという教育を徹底すれば、医師の習慣となりこの問題は簡単に解決すると思うのです。曲がりなりにもインフォームド・コンセントが今普及し始めたのを見れば明らかです。同じようにやれば良いのではと思うからです。朝日新聞にはここまで言及してもらいたかったのですが。

■さて、現実には今どのように対処したら良いでしょうか。(1)医者と貴方との信頼関係が厚い時は、率直にセカンド・オピニオンを受けたい旨伝えれば良いと思います。(2)信 頼関係が薄いと思う場合に医師を怒らせないためには「親戚に(又は知人に)医者がいるのですが、資料を貸してもらえないか。」というのも一つの方法かと思います。(3)セカンド・オピニオンは必ずしも資料がなくては出来ないというものではありません。患者さん自身が詳細な経過や、病名、癌であれば悪性度の程度( 浸潤度と癌細胞自体の悪性度)が分かれば、かなり十分な意見が聞けます。主治医から常に正確な値などを聞き記録しておけば万全です。

■先日、私の知人の奥様が横浜のK病院で直腸癌の手術をされ、術後の抗癌剤の投与に対し十分な説明をされ、更に御希望なら他の専門医の意見を聞いてください、資料貸しますと言われたのでどうしたものかと私に相談がきました。こんな立派な医者もいるのだと私はうれしくなりました。早速、神奈川がんセンターの 大腸科の部長にセカンド・オピニオンを依頼したところ、やはり前医と同じ意見で元のK病院で治療することになりました。さて、当院の患者さんで他院へセカンド・オピニオンをご希望の方は喜んで資料をお貸しします。ご遠慮なくお申し出下さい。こっそり転医されるより、私にとってずっと気持ちの良いものです。



7.セカンドオピニオン を求めた実例

今回はAさん(70歳、男性)の通院経験を通して診療の現実とセカンド・オピニオンの重要性を考えていきたいと思います。

■Aさんは本年4月頃から排尿の勢いがなくなり5月に入り大病院であるB病院の泌尿器科を受診し前立腺肥大症の薬をもらって服用していました。5月末の血液検査で前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAは63で(本紙の愛読者の皆様は5号の前立腺癌の記事で既にご存知とは思いますが)B病院の医者はほぼ前立腺の癌であるとわかっていたはずです。しかし患者さんへは説明されず、6月末の二度目の検査でPSAがやはり67と高いことが わかり、やっと7月中旬頃癌の拡がりを調べるためのCT、骨シンチの検査をしています。しかし、病気の説明がなく何のための検査かの説明がなく、8月下旬にもう一度検査をするということを言われ、もし癌だったらこんなに遅くなってよいのかと心配になり、知人(義弟)に相談しセカンドオピニオンをしている医者ということで私のところへ相談に来院されたのが7月31日です。

■B病院の医者の言い分も聞かず患者さんの話だけで勝手に判断するのは危険ではあるのですが、患者さんが前立腺癌を心配して質問しているのに何故説明せず、PSAの高いことも言わず、ずるずると2ヶ月も肥大症の治療をしていたのかわかりません。

■Aさんの賢明なところは、こんなに結論が出ないのは少しおかしいと考え周囲の人々に相談し、もう1人の医者の意見を聞こうと考え実行したことです。来院時、癌を思わせる硬い部分もあり、当院で直ちに8月6日に前立腺の生検を施行、中等度の悪性度の前立腺癌と診断され、更にB病院で検査したデータも取り寄せ(患者さん自身から頼んでもらい)、8月13日から薬による治療がはじめられました。

■治療方針に、私は実は少し迷っています。前立腺癌の治療は大きくわけて手術と薬(男性ホルモンの作用をなくす)があります。この薬が非常に有効ですので、手術までしなくてよいのではないかといつも迷うのです。特にAさんの場合、悪性度が中等度でPSA79は既に他の部位へ転移、または浸潤している可能性が高く、手術で取り残すことになれば、無駄な努力になるからです。そこで、Aさんからは私の方針にまかすと言われたのですが、治療方針に対するセカンドオピニオンを聞くことをすすめ、神奈川がんセンターの泌尿器科へ紹介し手術の適応についての第3者の医者の意見を聴くことにしました。がんセンターの部長の意見もほぼ私の考えと同じで、一年後まだ癌細胞が消失しない場合は放射線療法なども如何かということでした。

■Aさんには本紙の記事にすることを承諾を得ています。B病院の医師には承諾をえていません、意見も聞かず、お怒りであればごめんなさい。B病院にはいろいろな事情があったのだと思います。私も病院勤めの時は同じ 様なことを平気でやっていたと思います。ですから反省もこめて今、患者さん側に立ってできるだけよい治療をと考えています。ただ一度の人生ですから、悔いはできるだけ少なく生きたいものです。



8.病診連携に関心を持とう
〜 3時間待って3分診療をなくすために 〜

病診連携(びょうしんれんけい)という言葉をご存知ですか。病院と診療所(開業医)が連携をして、協力して患者さんを診て行こうという考えです。病院の医者と診療所(医院)の医者と患者の3者がこの制度方針をよく理解し合って、初めて理想的な医療が出来るわけです。特に、その主役の一人である患者さんに良くわかってもらいたいのです。

■あなたが体の調子が悪いとき、まずあなたの信頼するかかりつけの家庭医(診療所)に診療を受けて下さい。その医者が簡単な病気だと判断すれば自分の診療所で治療しますし、自分の手に余る病気ではないかと疑えば、その家庭医が信頼する病院の医者に診療情報書を添え(有料です。医者は3,000円請求できます。保険がききます。)あなたを紹介します。

■病院の医師は、診療所では出来ない検査や、入院しなければ出来ない治療(手術)をして病気が治癒又は安定した時には、「もうあなたは外来通院で大丈夫ですから、あなたの家庭医に通院して下さい。」と言って、もとの又は他の専門の診療所の医師に逆紹介してくれます。(このときの紹介状も有料です。)あなたはその後は近くの診療所へ通院すれば良いのです。これを病診連携といいます。

■このシステムの患者さんにとっての一番のメリットは、遠い病院まで出かけ何時間も待たされて、2〜3分の診療で終わる現在の病院治療の大きな問題が解決することです。こんなに良いことは無いと思うのですが、これがなかなか実を結びません。何故でしょうか。予約制なのに2時間も待たされて1分の診療時間だったと怒っている人がいました。病院の予約は1時間15人位予約しているわけですから、当然1人数分になってしまうのです。本来は1時間に5人位の予約にしなければいけないのですが、今でさえ赤字の病院に3倍の医師と看護婦を要求することになり、それは無理というものです。
賢明なあなたは次の策として、病院の外来患者数が今の1/3に減れば待たされずに診療が受けられ、医者と10分くらいゆっくり話が出来、見落としもなく今よりずっと良い医療がされるようになることがおわかりと思います。それを目指した病診連携なのです。

■病院指向のあなたから変わらなければ日本の医療は変わりません。これができないということは病院の医者は信用できるが、開業医は信用できないということでしょうか。開業医は実力がなくて勉強もせず誠意のない人が多いとおもっているのでしょうが、病院の医者も勉強もしてなく、誠意のない人もいますよ。風邪や便秘や腰痛や高血圧や糖尿病や膀胱炎や前立腺肥大症や前立腺癌の治療が病院の医師のほうが優れていると思っているのでしょうか。

■前にも書きましたが(第3号)、開業医の大部分は、もとは大学病院や大きな病院で長年診療をしてきた医師達です。日々勉強もしています。あなたの健康のことを考えています。信用なさったら如何でしょうか。

■しかし、実は病診連携は患者さんの意識が変わるだけで解決する問題ではないのです。もう一方の主役、病院の医者、そして開業医の意識改善が必要なのです。次号で書きたいと思います。



9.病診連携と医者の責任

前号で「病診連携」という言葉と内容を御紹介しました。余りまだなじみのない言葉であったと言うのが多くの方の印象の様でした。病院の医者と診療所の医者(開業医)が協力しあって患者さんを診ていこうというこの考え方の医者側の問題点について、今回はお話しします。

■開業医側の問題点は大きく分けて2つあります。1つは、一度来院した患者さんを抱えこんでしまい、なかなか専門医へ紹介しないことです。自分の手に余る病気なのに病院に又は専門医に相談せず自己流で治療している医者が残念ながらいることです。例えば腎結石と診断され何ヶ月も結石を溶かす薬を服用している方がいます。実は結石を溶かす薬などありませんし、腎結石は何か悪さをしない限り治療しなくてよいのですが。患者さんも泌尿器科へ行くと痛い検査をやられるから嫌だといって、かかりつけ医に頼り切りにになっていることも、その悪い傾向を助長しているのです。手早く病院へ又は専門医へ紹介してくれるかかりつけ医は、信頼できると思います。

■もう1つの問題点は、開業医の手に余った病気(患者さん)を紹介する時、どこの病院に紹介するかということです。日本では多くの場合、ただその病院の医者を知っているからと言う理由で簡単に紹介病院を決めているとアメリカの専門家に批判されています。その病気がどこの病院で治療しても大差ない簡単な病気の場合は紹介病院はどこでも問題ないのです。しかし病気によっては難しい手術が出来る病院と出来ない病院があり、よい放射線治療装置をもっていない病院もあるわけで、病気によって紹介する病院をかえなくてはならないのですが、そこまで配慮した紹介をあなたの家庭医がしていてくれているかが問題なのです。私も完璧ではありません。例えば、前立腺癌の手術は病院により格差があるのですが、どの病院がよいのか情報が十分ではなく、いつも迷っています。又、紹介した病院で癌の手術で3ヶ月も待たされたと聞き、悪かったなあと反省するのです。患者さんにとってどこの病院に紹介するのが最もよいのか相談して決めることは開業医に必要なことです。それが出来て本当の病診連携です。

■そのためには、病院は自主的に主な手術の件数と治療成績など公表しないといけません。公表していない病院は公表できない自信の無い病院と見ることが出来ますし、この情報で患者さんも開業医も、この手術はどこの病院が適当か選択できる様になるのですが、まだとても十分ではありません。

■病診連携で開業医が病院に期待することは、紹介した患者さんが退院することになり、開業医で十分今後は治療できると判断した場合は開業医に逆紹介してもらいたいということです。これはかなりすすんでいますが、癌の手術のあとなどは帰って来ないことが少なくありません。また悪くなったら病院へ、それまでは家庭医に通院すると言うのが理想で、患者さんは主治医を開業医と病院の両方にもつことが望ましい姿です。

■手術後の患者さんを全て家庭医に帰していたら病院は経営上成り立たないという現状が1つのネックです。患者離れのよい病院、患者離れのよい開業医、そしてどちらも自分の主治医としてうまく利用していく患者さんが病診連携の基本かもしれません。
里見腎泌尿器科
10.インフォーム→セカンドオピニオン→そしてコンセント(同意)

「手術の説明(インフォーム)を受けたら、その場で直ぐ同意をしないで、別の日にもうひとりの専門医の意見を聞いて納得してから、最終的に手術の同意をしなくてはいけません。」 ということを今まで何度も書いて来ました。今回、患者さんも私も力を尽くし、理想的な手術ができたと思われる実例を御紹介しましょう。

■60才の働き盛りの若々しい精力的な印象の患者さんで、当院で膀胱癌と診断され、私が信頼しているY病院へ紹介しました。膀胱癌はかなり拡がって浸潤しており膀胱は全て取らなければならないが、今は腸で新しい膀胱を作って尿道とつなぎ、術前と全く同じように尿道から排尿できるから大丈夫ですよ、安心して手術を受けなさいと送り出しました((4)の手術)。

■紹介した患者さんがどの様な状況か私は原則として週1回お見舞いがてら様子をみに行っています。その際、話を聴きますと、新膀胱はまだ新しい手術で(10年くらいたっています)、評価がはっきりしていない、術後尿道からの再発の危険もあり、尿が十分出きらないで困ることがある、手術の時間がかかるなどの悪い点をあげられ、(2)の回腸導管の手術をすすめられたと言うのです。これはまさに、創刊号に書いたとおり、医者は自分の得意な(2)のみを強調し、あまり知らない(4)について批判的に合併症を強調して手術の説明をした形ばかりのインフォームの典型でした。私は患者さんに絶対に(4)をやってもらうよう主張し、だめなら(4)を沢山している国立がんセンターへ紹介するからまだ同意しないよう話し、その足で主治医に面会し、新膀胱をしてくれるよう申し出ました。

■ここで少し手術について説明します。膀胱癌でかなり進行したものは残念ながら膀胱を取らなくてはなりません。膀胱を摘出した後、膀胱にかわるものをどうするか(尿路変更術)で手術がいろいろあります。図に示す様に(1)一番簡単なのは膀胱は作らず尿管を直接腹壁に出す手術です。(2)は小腸を15cmくらい切って膀胱の代用にして、それを腹壁に出す方法です(回腸導管:ブリッカーの手術といいます)。(1)(2)共このままでは尿のたれ流しですから、 腹に尿を貯めるための袋を貼り付けた生活になり日常生活は少し制約を受け、袋を週に一度はりかえる手間がかかります。これを改善するため(3)大腸と小腸を使って新しい膀胱を作り、少し工夫して尿がもれない様にし腹壁へ出す手術(インディアナパウチ)で 、これは女性に適しています。自分で管を使って導尿するという少し不便さがありますが日常生活にはほぼ制約はありません。(4)は既に説明しました。(1)(2)はどちらも同じ良いところ悪いところありで(3)は袋をつけないところが優れ、(4)は素晴らしい手術です。(これも私個人の意見ですが)

■この方は結局(4)の手術をすることが出来、袋をつけないで済んだことを大変喜んでいます。癌が取れればよいというものではありません。術後も何10年も生きるのです。情報網をはって生活の質を考えた最も適切な医療を受けて下さい。皆さん、「おまかせします」はやめましょう。

■なお、このような偏った説明はこの病院に限らず、どの病院でもいつでもやっていることで、私も勤務医時代はやっていましたが、自分では十分な説明をしたと思っていることがまた問題なのです。



11.もう一人の医者の意見を求めた記録

手術をすすめられた時などに、もう一人の医者の意見を求めるセカンド・オピニオンが日常的にあたり前のものになる様願いつつ診療を続けていますが、当院へ意見を聞きに来院された最近の患者の集計をしましたので、ここで御紹介します。あなたも同じ様な場面になったらぜひ思い出して実行されるようお奨めします。

■最近の2年半(平成12年7月〜平成14年12月)にセカンド・オピニオンを求めて当院へ来院された方は53人です。その病気の内訳は、癌36人(68%)(前立腺がん12人、腎癌10人、膀胱癌7人、腎孟癌3人、その他の腫瘍4人)、血尿3人、前立腺肥大症3人、尿路結石3人、その他8人で癌の方が7割余りを占めています。

■求めた理由の最大のものは
(1)手術方法への不安で40人(75%)でした。その内容はまず手術そのものが必要なのか、手術方法がこれでよいのか(日本で最高の病院を紹介してほしい)、術後に放射線又は抗癌剤の治療を加える必要があるかなどで、命にかかわる深刻なものです。

(2)次は診断が正しいかどうかというものが9人(17%)で、多くは癌と診断され本当に癌であるかどうか確認しに来院する方々です。癌でない場合もあります。

(3)主治医の説明不足に対する不安で来院した方が6人(11%)です。病院の医者は外来での病気の説明に5〜10分しかとれず、癌などの場合当然患者さんは不満を残します。別の時間を求めると良いのですが。(4)病気の予後(今後どの 位生きられるか)をもう一人の専門医に意見を聞きたくて来院された方が3人(6%)でした。

■主治医がセカンド・オピニオンをすすめた例は1人(2%)で、他は全て自分で頼んで、又は内緒で来院しています(52人、98%)。この比率が逆転するのはいつのことでしょうか。初診時資料を借りてきた人は11人(21%) だけでした。

■セカンド・オピニオン・ドクターの基本は患者さんを元の病院へ帰すことです。29人(55%)は元の病院へ、12人(23%)は他の医療機関へ、残り12人(23%)は当院で診ることになりました。相談に来てよかった方がたくさんいることがお分かりと思います。

■最近来られた方を簡単に御紹介します。
(1)45歳男性。某大学病院で腎癌と言われ手術をすすめられました。もう一人の医者の意見を求めて、癌専門病院へ行き、癌ではなく腎嚢胞だと全く正反対のことを言われ、インターネットで当院を探し沢山の資料を持って来院しました。癌ではありませんでした。癌専門病院へ帰る様すすめましたが、東京から当院へ通院するということになりました。

(2)65歳男性。某大学病院で、前立腺癌の手術をすすめられました。手術方法につき下腹部を切開して(腹を開いて)手術をする方法と、腹壁に穴をあけて腹腔鏡による手術のどちらがよいかどうか意見を聞きに来院されました。私は後者は全く経験なく、正しい意見がいえないので、東京の某大学病院へ電話し手術成績などを聞き、本人が希望している後者をすすめました。10日間で退院しています。多忙なこの方にとってよい選択でした。

(3)5歳男児。某公的病院で包茎の手術をすすめられました。今どき小児の包茎手術をすすめる病院は見限りなさいと当紙8号にも書きましたが、当日簡単に治療し完治し修了しました。
できれば次回も実例紹介をつづけます。



12.病診連携を有効に使おう 
〜 病院と開業医の両方に主治医を持つこと 〜

重い病気で病院で手術や治療をしてもらった後、そのままその病院に通院し服薬を続け経過をみてもらうか、掛かり付けの開業医に戻りその後は開業医に通院するか決断しなければならない時があります。病院の主治医は「どちらでもよいですよ」と患者さんに選ばせる傾向があります。その時、患者さんは開業医の方を選ぶに当たりいくつかの不安がよぎります。

(1)町医者に命にかかわる病気を診て行かれる実力があるのだろうか。

(2)病気の経過をみてゆくのに診療所には十分な検査設備がなくて大丈夫だろうか。

(3)病院と縁を切ってしまうと、いざという時に直ぐ快く入院などさせてもらえないのではないか。
→だから病院と縁を切らない様に病院へ通うと結論づけ、待たされて、説明時間も少ない病院へ通院しておられる方が多いようです。

■町の開業医の全てが、癌や心臓や肺の手術の術後をうまく診療し、終末期の診療ができ、自宅での見取りができるとは限りません。今、横須賀医師会の病診連携委員会では、横須賀の全開業医にあなたはどこまでできるか、専門は何かなどのデータ ーを聴き、その資料を作り、それをもとに病院の医者が責任をもって安心して診てもらえる開業医へ紹介するというシステムを作っています。また、病院の医者は既に地域のどの医者が信用できるか大体知っているものです。病院の主治医が信頼できる人であれば、紹介された開業医にまず安心してかかってよいと思います。

■診療所の設備が十分でないのはたしかです。CT、MRIをもっている町医者はわずかです。しかし、必要な場合は病院に依頼し簡単に検査を受けることができる、病診連携のシステムが出来上がっていますので、町医者でもCT、MRIも簡単に検査できるのです。

■病院と縁を切っていると「いざと言う時に病院が直ぐ受け入れてもらえないのでは」というのが患者さんの最大の不安だと思います。病院の医者の立場にたてば、2年も3年も来院していないのに急に悪くなったから直ぐ入院させてくれと言われても困ると いう気持ちもわかりますし、癌の手術をしたあとその患者さんがどの様な経過を取るのか見てゆきたい気持ちもわかります。術後すぐ開業医へもどす(逆紹介)ことはしたくないものです。この問題を解決するために私は、退院後は病院の医者と開業医と両方で一人の患者さんを診ていきましょうと提案し少しずつ実行しています。退院後は主として通院は開業医の方にですが、年2〜3回は開業医の方から検査データーやレントゲン写真などを添えて病院の主治医に診てもらうことを勧めます。2人の医者に診てもらえば、患者さんも安心ですし、いざという時も大丈夫ですし、病院の主治医もその後の様子がわかり満足ですし、診療所の医者もひとりよがりの診療もチェックされ安心ですし、三者にとってうれしいシステムです。今までも当院では少しやっていましたが、今後、もっと患者さんにすすめていきます。

■「病院と診療所の両方に主治医をもとう」という提案は、横須賀医師会の病診連携委員会でもしています。今、少しずつ地域医療がかわっています。患者さんもぜひ、目を開いて積極的によい医療への改善に協力して下さい。本来、患者さんが主役なのですから。



13.手術はどの様に決定されるのか (その1)

最近手術による事故死の報道が多くなり、患者さんの身になれば、どうしたら手術の上手な医者に出会え、手術をしてもらえるか関心事だろうと思います。しばらくセカンドオピニオンのシリーズは中断し、手術に関するお話を何回かに亘り続けたいと思います。今回は手術がどの ように決められ、実行されているか簡単に解説し、次号から少し問題点をしぼって掘り下げていきます。

■手術日の決定:一口に手術と言っても、虫垂炎や外傷のような緊急手術と、少しは待てる癌の手術などとでは手術の決定方法が異なります。ここでは後者の癌の手術(例えば前立腺癌の手術)について考えてみます。まず、外来の検査で病名がほぼ決まりますが、確定診断のためには組織の一部を採取する検査、生検をしないと診断できない場合もあります。その生検のため入院も必要な時もあります。診断が確定したら、次に手術の日を決めます。本人の都合も聞いてくれます。しかし、できるだけ早くといっても2ヶ月も3ヶ月も待たされることがあります。1日に出来る手術数は限られているからです(これについては、次号でもう一度お話し します)。

■手術方法:以前は入院後に詳しい説明(インフォームドコンセント)がありましたが、現在はできるだけ入院期間を短くするために、大体の説明は外来で行われている様です。例えば、胆石や肺癌や、副腎の手術、腎臓を摘出する手術や前立腺癌の手術など、内視鏡的に行うか、従来の胸、腹部を開いて行うか説明され、患者さんはどちらを希望するか本人か家族が決定します。この説明に医者のやりたい手術へ導く 意志が働き兼ねませんので、今まで何回もお話しした様にセカンドオピニオンを他の専門医に聞く必要がでてきます。

■術前の準備:体が手術のできる状態かどうか一般的な採血(肝機能、腎機能、出血傾向がないか、貧血がないかなど)、心電図、肺のレントゲンなどがなされ、更にC型肝炎、B型肝炎、梅毒、時にエイズなどの感染症の有無も調べます。輸血は術前に自分の血液を400〜800採血しておき、出血に備えます(自己血輸血)。もちろん大量出血が予想される場合は輸血用の血液を日赤から病院が買い用意しておきます。

■入院中の予定表:入院するとクリニカルパスという退院までの予定表をもらいます。術後1日目に医の管を抜去し、2日目には尿道の管を抜き、3日目から歩行、4日目にシャワーなどと詳細に書かれています。

■麻酔の医者と看護師が貴方にご挨拶に来室し手術中の話や注意などをします。横浜市大の患者取り違え事件の後は、皆、鑑識のため名前を書いた腕輪がつけられます。

■手術日は、予定より早めにストレッチャー(移動ベッド)で手術室へ送られ、予定の手術部屋へ入ります。大きい病院ですと手術する部屋は10〜20室あり同時に10〜20人が手術できます。この時に手術室入口は混雑をきわめます。(患者さんの取り替えがおこらなかったのが不思議です)

■術者は誰が決めるか:これは患者さんの最大の関心事です。多くはその科の最高責任者(部長)が術者を誰にするか決定し、術者に当日までに勉強して来る様申し渡します。大学病院などでは大きな手術はまだ教授が決める場合もある 様ですが病棟医長(講師クラス)が決めるのが普通です。手術の上手な医師に手術してもらいたいと思っても希望の人が手術をしてくれるかどうかわかりません。手術は術者よりもそれを指導する第一助手が重要な役目を持っている場合が多いのです。手術が上手とは何かなど、次回お話しします。
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