新型インフルエンザ最前線


 新型インフルエンザH1N1は一昨年5月に国内での最初の感染が確認され、その後兵庫県や大阪府で高校生を中心に拡大し、小児では野々市町で7月8日、白山市でも7月16日最初の感染者がいずれも当院で確認され、その後散発的な発生が見られ、11月より小中高生に流行し引き続いて瞬く間に幼稚園児や保育所児童に流行してきました。12月末日まで計1513名のインフルエンザ簡易キットA陽性者(99%新型インフルエンザ)がありました。幸い12月下旬より流行は下火になっています。
 今年2011年は1月頃よりインフルエンザが流行してきましたが、新型インフルエンザと季節性インフルエンザA香港型およびB型の3つが流行っています。
 季節性インフルエンザでは若年者が多く発症していますが、亡くなるのはほとんど高齢者で、結局体力を消耗して死亡しています。一方新型インフルエンザでは多くは若年者が罹患して、亡くなるのも基礎疾患を持っている人たちや若年者が多くなっています。
 季節性インフルエンザでは合併症として肺炎が見られますが、ほとんど細菌性肺炎の形で、そのため抗生剤が有効となります。しかし新型インフルエンザに伴う肺炎ではウィルスそのものによる間質性肺炎の形をとりやすく、そのため人工呼吸器が必要な例も少なくなく、季節性に比べて明らかに重い肺病変を起こしてきます。
 当初、徹底した学級閉鎖やマスクの着用などで、大きな流行は阻止できていましたが、晩秋の気温低下とともに流行の大きくなることは阻止できませんでした。

≪予防ワクチンと治療法≫
 何と言ってもワクチンを積極的に受けることです。成人では1回接種でもかなり免疫抗体価が上がったとの報告もありますが、免疫の全く無い人では2回接種が必要です。
      ただインフルエンザワクチンの効果は100%ではなく、重症化、死亡の防止については一定の効果がありますが、感染防止、流行阻止に対する効果は季節性インフルエンザワクチン同様保証されていません。 
 新型インフルエンザの疑いがあれば、簡易検査を待たずに直ぐに抗インフルエンザ薬を使用するのがベターです。幸い日本ではタミフル、リレンザは備蓄分だけで、人口の50%をカバーできる量を確保しており、会社の市場在庫を含めれば6,000万人分の備蓄があるので、使い切るつもりで処方してもよいようです。例えば家族や職場で濃厚接触が考えられ、感染の予想される後数日中に発熱があったら、抗インフルエンザ薬を投与することです。
 メキシコやアメリカで今回の新型インフルエンザで死亡率が高かったのは抗インフルエンザ薬はほとんど使用しないで、重症化してきた例に対して発症1週間も過ぎてからやっと使用していたことが大きな理由の一つになっています。
 今のところ薬剤耐性については新型インフルエンザでの報告はごく少数です。耐性ウィルスの発生を防ぐためにも、特別の事情を除いて予防としての抗インフルエンザ薬を使用しないようになっています。
新型インフルエンザの重症患者の40%は、健康成人や健康小児であることは、基礎疾患がなくても経過中の観察が極めて大切です。特に呼吸困難、顔色不良、嘔吐、意識低下、意味不明言動などに注意しなければなりません。そして脳症は幼小児だけでなく、学童などにも脳症が増える可能性があります。
 しかし恐れる必要はありません。診断キットの充実、ワクチン、治療薬など、現在、日本で行われているインフルエンザ治療は世界一です。



A型に続いてB型が大流行の一昨年年初のインフルエンザ


 もう年中行事のように昨年の1〜3月冬もインフルエンザが流行りました。一昨年のインフルエンザは一昨年11月より少数見られていましたが、1月中頃よりA型の大きな流行があり、1ヶ月続いた後減少しこのまま落ち着いてくるのではとの予想に反して次は3月初めよりB型によって第2波がやってきて、3月いっぱい続いていました。例年はA型の流行がおさまる頃B型が少しづつ見られてインフルエンザの流行が終了してくるのですが、昨年の流行では後半B型の顕著な流行という大きな2つの山の形で、これまでになかった変化でした。
 インフルエンザ抗原陽性例は当院では1、2、3月でA型668名、B型649名でAもBも陽性例10名で合計1,327名でした。一昨年の同期710名に比べて2倍近くで、A型の中にB型が大流行した平成17年の1,313名を超して過去最高でした。
 中にはA型に罹患して、数日あるいは1、2ヶ月してまたB型に罹患した方も少なくありませんでした。

 また今年は抗インフルエンザ薬についてよく効いた例もありますが、使用しても期待したほどの効果がなかった例も少なくなかったようです。
当初よりタミフルはAソ連型には無効という試験管内実験結果が言われておりましたが、実際服用していただくとそれほど無効でもなかったようです。しかしリレンザについてはB型には一昨年まではかなり効いていましたが、昨年は中には使用していても1週間近く発熱が持続していた例もありました。インフルエンザウィルスも生き残りをかけていろいろと変化しているようです。
 またインフルエンザ罹患によりけいれんを発症した方も数名いましたが、幸いインフルエンザ脳症は当院では一人もいませんでした。
(2009.4.1.)




第109回日本小児科学会学術集会

 第109回日本小児科学会学術集会が2006年4月21、22、23日に75年ぶりに金沢市で開催されました。全国より3,900名の出席があり、900題を超える多数の研究報告、症例報告他教育講演会などが、石川県立音楽堂コンサートホールを中心に11の会場で行われました。中でも初日には座長谷口昂名誉教授の司会で1998年金大小児科で世界で初めて発見されたヘムオキシナーゼ1(HO-1)欠損症とそこから学ばれた「観察、発見、挑戦」の大切さを金大小児科小泉晶一教授が会頭講演として初日に講演され、多くの研究者に感銘を与えられました。
初めて設定された日本小児科学会賞には川崎病発見者の川崎富作氏が選ばれ、受賞記念講演では1961年の発見以来川崎病は増加しており、1982年、1986年に急増し、今では日本でもアメリカでも後天性心臓病の第一位を占めるようになったと講演されました。
 北海道大学の傳田健三氏は自己記入式抑うつ評価尺度の大規模調査から子どものうつ病が一般に認識されているよりはるかに多く存在し、決して楽観できず適切な治療の必要性を強調されました。
 また鳴門教育大学橋本俊顕氏は社会的な相互作用の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害によるこだわり行動の3つを特徴とするIQ70以上の高機能自閉症は集団生活の場で様々な問題を起こしながらも家庭や診察の場で問題点が見えてこないことも多く、的確な対応の必要性を説いておられました。
 慶応大学井ノ口美香子医師や保健管理センターの方から、子どもの成長曲線からその変動により子どもの心の状態も知ることが出来、ハイリスク児抽出のために学校現場で成長曲線作製を基本事項とすることを提唱していました。そしてこの成長曲線は保育所・幼稚園、小中高校と分断することなく継続することが重要で、また3ヶ月毎の体重差のグラフも大きな意味を持っているとの指摘でした。
 また石川県のMLグループよりインフルエンザ流行期における学級閉鎖の効果についての検討がありましたが、2日間も3日間も流行に対する効果はなかったということでした。流行を阻止しようとするなら学級閉鎖はやはり4日間は必要なのではないかとの意見もありました。
 その他たくさんのためになる話を聞くことができました。また日本小児科学会将来計画委員会高田五郎氏より、「高校生まで小児科へ」と特別提言がありました。欧米を始め東南アジア諸国でも高校生までは小児科となっており、精神的身体的にまだ成長発達の段階にある思春期の子どもたちを生まれたときから見守ってきた小児科医が診ることは自然なことです。