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メタボリック症候群と腎臓

〜メタボリック症候群と慢性腎疾患(CKD)の関係〜

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〜動脈硬化予防の総合戦略〜

高血圧の話

〜血圧と塩分の関係〜

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第62回日本透析医学会へ参加しました。

Dialysis in Tokyo

Introduction of Nishi Clinic in Tokyo

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高血圧の話

高血圧の話    〜血圧と塩分の関係〜

日本では、30才以上の男性の約50%、女性の40%、全体で約4000万人が高血圧症といわれ、高齢化に伴い、今後とも増加するとみられ、まさに「国民病」の代表といえます。高血圧は脳卒中(脳梗塞、脳出血)と密接に関連していて、さらに心筋梗塞、心不全、慢性腎疾患および閉塞性動脈硬化症の最大の危険因子であり、「沈黙の殺し屋」ともいわれています。
血圧=循環血液量x末梢血管抵抗 と定義されます。いいかえれば、血圧は細胞外液量(=体内食塩(NaCl)総量)と血管壁の硬さ(柔軟性の逆) の積 といえます。生物の進化をたどると、最初に海に誕生した我々の祖先が、陸上に進出してきたのは3憶5千万年前頃といわれます。これを可能にしたのは、我々が体内に細胞外液という「内なる海」をもったことによります。細胞外液の一部である血液が、心臓というポンプの力で全身を循環して酸素と栄養素を配ることが陸上動物の営みの基本なのです。
したがって、塩分摂取量と血圧は密接な関係があります。食塩は細胞外液を維持するのに必須です。人類が農耕をはじめる前の約1万年前、我々の祖先が狩猟採取で生活していた頃は必要な塩分をとるのに大変な苦労をしました。塩分不足=脱水が生存をおびやかす最大の危険因子でした。古代〜中世でも塩はたいへん貴重なもので、岩塩や塩田を確保することが権力の維持に必須のものであったのです。その名残は塩山=ザルツブルグ、塩の道などの地名や「敵に塩をおくる」などの言葉に残っています。一方、私たちの腎臓は乏しい塩分摂取でも脱水にならないように、再吸収という機能とレニンという血管を収縮する(血管抵抗を上昇させる)ホルモンの働きにより細胞外液と血圧を維持するように進化してきました。私たちの体の設計図であるDNAはこの一万年前、つまり人間が塩分を自然の環境から摂取するのに大変苦労した時代(平均一日1gm以下)と同じです。これは、現代でもアマゾンの奥地などで原始的な生活をしている人々の調査によるものですが、彼らにはまったく高血圧はありません。つまり我々の体は、塩分摂取がきわめて少ない環境に適応して進化してきたのです。
ひるがえって、塩が大量合成できる現代の文明社会では、塩分の過剰が細胞外液の増加を招き、高血圧をもたらします。世界諸民族の高血圧の頻度をみると、塩分摂取量とよく相関していることがわかります。現在の日本人の塩分摂取量は1日11gmと、欧米(6〜8gm/日)にくらべて多く、この10年以上低下はみられません。これはわが国で、塩が伝統的に食物保存のため使われ、醤油、漬物,味噌などがあり、さらにインスタント食品がコンビニなどで簡単に手に入ることが関係しています。ある集団で塩分を5gm/日減らすと、30年後に収縮期血圧が約10mmHgは下がるといわれています。すべての食品の分かりやすい塩分表示などの規制をふくめ、国民の減塩対策を推進する必要があります。

◆高血圧症への取り組み
「日本高血圧学会」では「高血圧治療ガイドライン」をつくり(JSH2009)取り組んでいます。収縮期が140または拡張期が90 mmHg 以上はなんらかの治療を要する高血圧症です。長年我が国では(医師も含め)160mmHg以上を治療の対象としてきました。しかし、近年の大量の人口群を長年観察してゆく疫学研究により、「血圧は低ければ低いほど心脳腎血管の病気が少なく、長生きできる」という結論がでました。つまり、正常の血圧とされる130と120mmHgの血圧の人を比較しても、前者は後者の2倍のリスクがあるということです。ガイドラインでは血圧の数字に加え、1)年齢 2) 喫煙 3) 脂質異常 4) メタボリック症候群 5) 糖尿病 6) 脳血管障、心筋梗塞の既往 7) 慢性腎疾患 などの危険因子を評価して、高血圧のリスクを層別化して、治療方針をきめています。現在様々な降圧剤がありますが、利尿剤以外はほとんど血管拡張作用のあるものです。しかし、塩分摂取を制限することが、それらの降圧剤を有効に働かせるために必要です。また、高血圧には本態性といわれるもの(約80%)以外に二次性という腎臓や内分泌の異常からくるものがあり、鑑別診断が必要です。
最後にいくつかおすすめしたいことがあります。
1)高血圧は症状が無いのがあたりまえ。将来の病気の予防のために血圧を140/90mmHg未満にコントロールしましょう。
2)塩分は控えめに、薄味に慣れましょう。
3)一家に一台、上腕で測る血圧計を備えて自分で血圧を測ってみましょう
4)なるべく専門の内科系医師に相談しましょう。この時、過去の健診結果をもってゆきましょう。薬を処方する前には総合的な検査が必要です。

2010年6月25日
西クリニック 院長 西 忠博