膵臓病Q&A

膵臓の働きや病気についてQ&A形式でまとめてみました。

Q膵臓(すいぞう)とは
A膵臓は腰椎の1〜2番目くらいの高さで、胃の裏側に位置し、十二指腸から脾臓にかけて横に長く伸びている臓器です。重さは約60〜70g、長さは約12〜15cm程度で、人体最大の臓器である肝臓(重さは1〜1.5Kg)と比べるとかなり小さな臓器です。膵という字は「すべて肉のかたまり」という意味から作られており、膵臓が実質臓器であることを表しています。膵臓の中は主膵管が走り、そこから分枝膵管がいくつも枝分かれして腺房に達します。腺房で作られた膵液(消化液)が分枝を通って主膵管に入り、十二指腸へ流れて行きます。

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Q膵臓の働きは
A膵臓には消化液を作る外分泌腺(膵臓の90%以上)とホルモンを分泌する内分泌腺(残りの数%)が存在します。消化液には炭水化物を分解するアミラーゼやタンパク質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなど多くの消化酵素が含まれ、膵液として十二指腸に流れ、食べ物を消化する働きをしています。1回の食事で500〜800mlという大量の膵液が膵臓で作られます。一方、内分泌腺は海に浮かぶ島のように、外分泌腺の中にポツンポツンと散在し、ランゲルハンス島と呼ばれています。この島に存在するB細胞からインスリンというホルモンが血中に放出され、血糖を調節する働きをしています。

Q膵臓の働きが悪くなればどうなりますか
A外分泌腺の機能が低下すれば消化吸収障害が起こり、栄養状態の悪化、下痢、体重減少などの症状が見られるようになります。また、内分泌腺の機能が低下すれば糖尿病を発症することになります。

Q膵臓の病気にはどのようなものがありますか
A膵臓の炎症(急性膵炎、慢性膵炎)
 膵臓の腫瘍(膵臓がん、膵管内乳頭粘液性腫瘍)
 糖尿病

Q膵臓の炎症はどのようにして起こるのですか
A膵臓で作られた膵液(消化酵素)は食べ物を消化する働きがありますが、膵臓の中ではその力を発揮させない仕組みが備わっています。しかし、何らかの原因(飲酒、胆石、ストレスなど)でその仕組みが障害されると、膵液(消化酵素)が自分の膵臓を消化してしまいます。
それが急激に起こって膵臓を溶かしてしまった状態を急性膵炎、徐々に起こって、ゆっくりと膵臓が壊れていく状態を慢性膵炎と言います。

Q急性膵炎とは
A膵臓で作られた消化酵素が、種々の原因で自分の膵臓を急激に消化して溶かしてしまう病気です。お腹の中が火傷でただれてしまったような状態で、激しい腹痛(みぞおち辺り)や背部痛が起こります。成因としてはアルコール性が最も多く(約40%)、次いで特発性(原因不明)や胆石性が各々約20%を占めます。急性膵炎は良性の病気ですが、一旦炎症が起こると肝臓や腎臓、肺など他の臓器も炎症に巻き込まれてしまいます。更に重症化してしまうと出血傾向(DIC)や感染症、多臓器不全などを合併し、死の転帰を取ることも少なくありません。毎年2万人以上が発症しています。

Q慢性膵炎とは
A消化酵素が膵臓を徐々に消化し、膵臓の慢性的な炎症を引き起こすことによりゆっくりと膵臓の機能が低下してしまう病気です。膵臓の炎症に伴う腹痛や背部痛が生じ、血中の膵酵素(アミラーゼやリパーゼ)が高値を呈する時期を代償期と言います。持続する炎症により膵臓の破壊が進行すると、残った膵臓の細胞も減ってきます。痛みは軽くなり、膵酵素の上昇も軽度になります。炎症で破壊された膵組織は線維化して硬くなり、膵臓は萎縮(小さくなる)してきます。この時期を移行期と言います。さらに進行すると、膵酵素を作れないために外分泌機能が低下し、内分泌機能も障害され糖尿病が出現してきます(膵性糖尿病)。この時期を非代償期と言い、大量の消化酵素剤の服用やインスリンの注射が必要になります。慢性膵炎の患者さんは年々増加しており、年間受療者数は約4万5千人と推定されています。

Q慢性膵炎の原因は
A2002年の厚労省の報告ではアルコール性が67.5%と最も多く、年々増加傾向にあるようです。若者や女性の飲酒人口の増加が一因と考えられます。次に多いのが特発性で20.6%を占めています。ストレスや遺伝の関与が考えられていますが、原因がわからない慢性膵炎です。男女別でみると、女性ではアルコール性25.4%、特発性50.3%と特発性が最も多く、女性の慢性膵炎の約半数は原因が不明です。以前は胆石による慢性膵炎も多かったのですが、3.1%と年々減少傾向にあります。

Q膵臓の腫瘍にはどのようなものがありますか
A膵臓にできる腫瘍にはかたまりを作るものとふくろを作るものがあります。
かたまりを作る代表が膵管がん(通常の膵臓がん)で、ふくろを作る代表が膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)です。その他に腺房細胞がんや内分泌腫瘍(インスリノーマなど)があります。

Q膵がんについて
A膵がんは消化器がんの中で最も予後の不良な悪性腫瘍です。早期発見が困難で、80%以上の方は診断時にはすでに手術ができない状態にあります。膵がんの発症数は年々増加傾向にあり、2002年には約2万人が膵がんで亡くなられています。がんの部位別死亡数では男性の第5位、女性の第6位でした。

Q膵がんの発症要因は
A発症要因には遺伝的要因と環境要因があります。
膵がんの患者さんには膵がんの家族歴が4〜8%に認められ、近親者に膵がんが居られる方が膵がんになる確率は13倍とされています。大腸ポリープが多発し癌化しやすい家族性大腸腺腫症なども膵がんが出来やすい危険群です。
環境要因としては喫煙が挙げられ、喫煙者の膵がん発症リスクは約2倍です。しかし、禁煙によりリスクは低下し、10年禁煙すると非喫煙者と同程度にまで下がると言われています。肥満や脂肪食の摂り過ぎ、コーヒーの飲み過ぎ(1日4杯以上)も膵がん発症のリスクが上昇すると報告されています。

Q膵がんになりやすい病気は
A糖尿病、慢性膵炎で発癌のリスクは増加します。
糖尿病歴を有する人は男性で2.1倍、女性で1.5倍膵がんの発症リスクを増加させ、糖尿病の罹病期間が長いほどリスクが増加するとも言われています。糖尿病の方は血糖コントロールだけではなく、膵酵素の測定、腹部エコーやCTなどの画像検査を定期的に行う必要があります。また、家族歴がなく高齢で発症した糖尿病の方、治療経過中に誘因なく血糖コントロールが悪化した方は腫瘍マーカーも測定する必要があります。
2002年の報告では、慢性膵炎の44%は悪性腫瘍で亡くなられており、そのうち23.9%が膵がんです。次いで肺がん12.8%、肝がん11.1%、大腸癌10.3%と、膵がんが高率に発症しています。慢性膵炎における膵がん発症リスクは一般人口の10〜20倍で、膵の石灰化(膵石)を伴うと危険率は増加すると言われています。

Q膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは
A膵臓にふくろを作る腫瘍の代表であり、膵臓の中を走る主膵管やその分枝膵管にドロッとした粘液を作る腫瘍細胞が出来て、その細胞が産生する粘液のために膵管が拡張してくる病気です。多くは無症状で、人間ドックの腹部エコーなどで偶然発見されることも多いようです。主膵管型と分枝型の2種類がありますが、主膵管型は約70%が癌であり、原則的には手術を考慮することになります。分枝型はブドウの房のような形態をとり、約70%は良性ですが、サイズが大きくなると悪性化することもあります。また、分枝型IPMNでは胃癌や大腸癌、肺癌を合併しやすいこと、膵臓内の他の部位に通常の膵癌が出来てくることがわかってきました。膵臓のふくろを指摘された場合には専門医の診察を受けられたほうがよいと思います。

参考文献:生活習慣と膵臓病 第38回日本膵臓学会大会/編