ヒポクラテスのひとり言6
第33回
明けましておめでとうございます。 

昨年は、東北大震災、原子力発電所事故など国難がつづく一年でした、まだまだ復興、収束には時間がかかるでしょうか、今年は少しでも明るい年でありますように祈るばかりです。

診療所の近くに三条通り商店街があります。アーケードが千本から堀川まで東西約2キロにわたって空を被い、雨の日でも買い物ができる、なんかほっとするレトロな雰囲気の商店街です。その通り沿いに「頑張れ、野口みづきさん、私たちはずっと応援しています」というのぼりが立ち並んでいます。
金メダリストの野口みずきさんが、無名の時代からアーケードの下を毎日は走ってトレーニングされているそうです。今年はオリンピックの年です。がんばれ、野口みずきさん。
日本に元気を与えてください。

平成24年1月1日元旦


第32回
最近、健康保険組合から被保険者(患者さん)のご自宅に「ジェネリック医薬品に切り替えた場合の薬代の自己負担額の軽減可能額に関するお知らせ」という手紙が郵送されることがあるそうです。そこには「今飲んでいるお薬をジェネリック(後発品)にかえると一月あたりの病院での支払いが¥○○円安くなります」と具体的に書かれ医療機関でジェネリックに代えてもらうよう勧める内容です(ジェネリック(後発品)とは、特許の切れた薬を30%以上安くして製造販売されたものです)。

まあ何というご親切なこと!。でもなんかおかしいぞ!。

最近TPP加入の是非が議論されていますが、安い外国産の農作物が大量に輸入されれば食の安全が脅かされるのではないか、食の安全を値段だけで判断していいのかとい う意見があります。ましてや薬、より命に直結しているものを価格だけでジェネリックに変更していいものか?ジェネリックには中国やインドの製造工場で安い人件費で作られるものもあります。政府(厚生省)のご指導?のもとジェネリックに一斉に変更して、もし国民に健康被害がおこればどうするのでしょう?そして、先発製薬メーカーの競争力をそぎ将来新薬を開発する力をそぎ落として、技術立国日本として、いいものでしょうか?

政府の政策の過ちが重大な事故を引き起こした2011年の師走ですから、あらためて考えさせられます。

平成23年12月1日


第31回
今回は金子みすずさんの詩をお届けします。きっと気持ちが優しくなりますよ。

金子みすゞ詩の世界みすゞこれくしょん©HeartFactory

平成23年11月1日



第30回

現在子宮頸部癌のワクチンの接種が始まっています。 公費負担では、中学生から高校1年生の女子が対象です。

二十年後には、女優の仁科亜希子さんや歌手の坂井泉さんがかかったあの子宮頸部癌の発生がほとんどなくなると期待されています。

思えば私は医学部に入学した頃は、がんの発症にウイルスが関わっているらしいことが最新の話題でありました。私が大学3回生の夏(30年前)、国際パピローマウイルス学会(当時京大微生物学教室の伊藤洋平教授主催)が京都で開かれ、私はスライドがかりのバイト学生として、何も分からぬまま、ただただ外人の研究者の方が出されるスライドを出していました。「門前の小僧習わぬお経を読む」、なんとなくパピローマウイルスが子宮がんの原因なんだと初めて知ったわけです。

それから30年経ち、今パピローマウイルスのワクチンを接種する立場にいます。 医学の進歩は着実に進んでいるという喜びと、30年もかかった、その間に亡くなった方を思うとその悲しさの両方をかみしめています。

平成23年10月1日



第29回

今年の夏は、節電に始まり、なでしこフィーバー、局地豪雨、世界陸上での鉄人室伏選手、そして最後は管内閣の退陣、野田新首相の誕生といろいろビッグニュースがありましたが、皆様はどのような夏をおすごしでしたでしょうか?

私事ですが、数年前から定期的に北海道の病院に診療応援に行っている関係で、少しですが、勤務の合間にすがすがしい北海道の夏を楽しむことができました。旭川から稚内までのローカル線、網走から川湯温泉までのローカル線の鮮やかな緑のトンネル、層雲峡の軽登山、湖面を眺めながらの秘湯の湯(丸駒温泉)などすばらしい体験でした。いつもはとんぼ帰りで帰るのですが、この夏は時刻表をみて勤務の合間時間を見つけて楽しみを見つけるようにしてみました。あと何年健康でいられるか、だれにもわからないです。年々歳々人同じからず。一期一会、一瞬一瞬を悔いのないよう生きていきたいものです。

平成23年9月1日



第28回

焼き肉店えびすやでのユッケ、生レバーでの食中毒騒動から、関西の焼肉屋さんからユッケ、生レバーのメニューが消えてさみしく感じているのは私だけでしょうか?
なんでも、特に生レバーは牛の消化管から肝臓内の胆管に細菌が逆流して増殖することがあるので、表面の過熱やトリミングでは100%食中毒を防ぐことは難しいとのこと。近い将来販売禁止の法的処置がだされるとのことです。なんだか、フグの肝や卵巣みたいですね。
そういえば、クジラ肉も欧米の常軌を逸した反捕鯨運動のため食卓から消えて久しいです。こんな風に、食文化がまた一つ消えていくのでしょうか?
10年後の夏、焼き肉屋での会話::::
「そういえば、昔はまず最初に生レバー食べたよな。これが、ごま油と少しの塩をかけるとまろやかで濃厚な味に変わるんだよ、うまかったな。もう一回食べたいな」
こんな会話が聞かれるかも。


平成23年8月1日


第27回

7月が始まります。今年は猛暑の予想に加えて節電の要請もあり暑い夏が予想されます。皆さん、熱中症にはくれぐれも注意しましょう。スーパーやデパートでもらう氷冷剤を使い、くび、脇, 股を冷やすと効果的です。暑いときには、冷たいジュースばかり飲まないで、むしろ温かいお茶でくつろぐと汗がひきます。
古人は(クーラーや扇風機がない時代)、暑い京都の夏をすごすためいろいろ工夫しました。お昼には、行水、おやつには冷えたキュウリ、トマト、庭先には風鈴、浴衣を着て夜は団扇を持ってそぞろ歩き、縁台で座って花火、そんな日本の昔の生活を思い出すいい機会にしたいものです。冷や麦、流しそうめん、スイカ、きゅうりやうりの浅漬・・・・考えただけでも涼しくなります。節電の夏、皆さん熱中症に注意しながら、クーラーに頼りすぎないで夏を乗り切りましょう。

平成23年7月1日



第26回

依存症といっても、覚せい剤依存症、アルコール依存症、ニコチン依存症、買い物依存症、コーヒー依存症、恋愛依存症などなどいろいろありますが、最近の新聞でネット依存症外来が韓国で開設されたと報道されていました。
依存症といっても嗜好の範囲から病気、または反社会的行為に至るものまで広く含まれていますが、果たしてどこまでが病気か?治療の対象となるか?難しいところです。
最近は、電車に乗ると老若男女を問わず、椅子に座ると皆が一斉に携帯やスマートフォンを開けてメールやネットに没頭している光景をよく見かけますが、日本でも携帯(ネット)依存症という病気が広まっているのかもしれません。
電車の中で、新聞を広げて読むサラリーマンや世間話でもりあがるおばさんたちの姿が懐かしく感じるこの頃です。
阪急電車―15分の奇跡ーという映画ではそんな懐かしい人間関係が描かれていてなんだか心温まります。そうだ〜〜私も、携帯やネットから離れてみよう。そして、本を読んだり隣の見知らぬ人とおしゃべりしたりして、携帯(ネット)依存症にならないように気をつけたいものです。


平成23年6月1日


第25回
先日亡くなられた田中好子さんのお葬式に流された最後のメッセージには心打たれました。

「私も、一生懸命、病気と闘ってきましたが、もしかすると負けてしまうかもしれません。でもそのときは、必ず天国で、被災された方のお役に立ちたいと思います。(略)映画にもっと出たかった。テレビでもっと演じたかった。もっともっと女優を演じたかった。(略)いつの日か、支えてくださった皆様に少しでも恩返しができるよう復活したいとおもいます。その日までさようなら」私は、数多くの方のご臨終に立ち会ってきましたが、こんなすばらしいご臨終は初めてです。

がんで亡くなる3週間前にこのテープを残せるなんて。がんの末期は、不安、痛み、呼吸苦などで理性を失う人も多い中で、最後まで被災者の方や周囲の人への思いやりや感謝の気持ちを持てるなんて。あなたは、女優としても、人間としても、十分立派です。本当に感動しました。有難うございました。

安らかに、お眠りください。合掌。   ファンのひとりより。

平成23年5月1日


第24回

東日本大震災で被害を受けられた方々、謹んでお見舞い申し上げます。

あの日から20日余り。それまでは日常であったのに。あの日からすべて変わってしまいました。私も、診察中も、食事中も、テレビを見ていても、「このままでいいのだろうか」、「なにかできることはないだろうか」と焦燥感や自責の念にとらわれます。

先日、福島県双葉町(福島原発1号基のある町)から避難されてきた方を診察する機会がありました。その方は、地震直後近くの公民館に避難、数時間後津波警報の為すぐ高台に避難、そのあと原発が危ないとのことで、20キロ範囲外の町に避難と、「あの日」から一回も自宅に帰れず、着の身着のままで親せきを頼って避難されていました。私は、診察後なんとお声をかければよいやら全く言葉を失いました。「大変でしたね」「お大事に」「頑張ってください」どの言葉もその患者さんを前にしては、空虚でふさわしくありません。ただただ、頭を下げ見送りました。そして涙があふれました。

季節は、春。被災地でももうすぐ桜は咲くでしょう。石をも割って、見事にあでやかに東北の桜が咲くことをお祈りしています。

平成23年4月1日