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正常眼圧緑内障のラタノプロストによる長期視野
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正常眼圧緑内障の
ラタノプロストによる長期的視野

-3、5、6、8年群の比較-
小川 一郎、今井 一美  慈光会 小川眼科
あたらしい眼科 25(9):1295〜1300, 2008

はじめに
1. ラタノプロスト単独点眼による正常眼圧緑内障(NTG)の多数例の5年を越える長期視野についてはいまだほとんど報告されていない。著者らは先にラタノプロスト単独点眼による3年後視野(2003)、5年後(2005)、6年後(2006)を報告した。今回は8年群(2008)の成績を述べ、各群の経過を比較検討した。
2. 治療による効果としては、対象となるNTG症例群の進行度、視野進行の判定法も異なるので直接比較は困難であるが、米国のCollaborative Normal-Tension Glaucoma Study Group(CNTGS)(1998)は対緑内障手術法、レーザー療法、薬剤点眼療法等によりOctopusまたはHumphrey視野計のevent法による評価で30%以上眼圧下降させた症例では、視野障害進行率は3年でも5年でも20%であったと述べている。これに対し、著者らはラタノプロスト単独点眼では視野変化解析のtrend法による評価では3年後(90眼)で10%、5年後(85眼)で17.6%、6年後(71眼)で19.7%、8年後(52眼)21.2%で、最終平均眼圧下降率もそれぞれ18.4%、15.3%、14.1%、14.6%とCNTGSに比し、はるかに低いが殆ど劣らない成績を示したことになる。


対象および方法
対象はNTG患者8年群では、男性19例、女性33例、計52例52眼で、いずれも満3年継続時の第1回報告に含まれており、かつ6年報告例のうちで8年まで経過をみることができた症例である。治療開始時年齢(平均±標準偏差)は68.8±8.9歳、観察期間は91.3±3.4ヵ月。眼圧はGoldmann圧平眼圧計で午前9時〜12時の間に測定。Humphrey30-2プログラム測定(Fastpac)は平均11.2±1.2回施行。視野進行の判定には、視野変化解析で最低5回以上の計測を要するが、薬剤の長期効果を判定するのに有効とされるtrend-type analysisで行った。 MD slope dBの線形回帰解析で自動的にプリントアウトされる有意(p<0.05)を示した症例を進行眼とした。最終視野測定時の年MDスロープdB(MD slope dB per year)を年MD進行度としてこの2項目を指標として、全症例、進行眼群について、3年、5年、6年、8年群経過の比較検討を行った。症例はニデック社製無散瞳ステレオ眼底カメラ(3-DxNM)による視神経乳頭のポラロイド写真をステレオ・ビューアで観察、明瞭な緑内障性陥凹が認められる症例とし、いずれも 1)眼圧20mmHg以下、2)弓状暗点など初期病変以上の確実な緑内障視野障害、3)平均偏差(MD)は末期では25dBまでとし、かつ視野障害の進行を判定するため、求心性視野のほか周辺にも残存視野が認められるものに限った。



結 果

(表1)正常眼圧緑内障のラタノプロストによる3、5、6、8年群の治療成績比較

治療経過数 3年群 5年群 6年群 8年群
例(眼)数 90 85 71 52
治療前平均偏差(MD)dB -8.92±5.72 -9.2±6.0 -9.71±6.15 -9.05±6.16
治療前補正
パターン標準
偏差(CPSD)dB
8.17±3.91 8.12±4.14 8.58±4.25 8.54±4.04
進行眼数
(進行率)
9(10%) 15(17.6%) 14(19.7%) 11(21.2%)
年MD 進行度dB
  全例
  進行眼群

-0.34±0.76
-1.53±0.55

-0.31±0.19
-1.11±0.25

-0.21±0.43
-0.83±0.21

-0.17±0.34
-0.57±0.17
治療前眼圧
(mmHg)
14.1±1.9 14.1±2.2 14.2±2.2 13.7±2.3
眼圧下降幅(率)(mmHg)
  全例

2.6±1.9
(18.4±10.2%)

2.2±1.5
(15.3±9.9%)

2.1±1.6
(14.1±10.8%)

2.0±1.4
(14.6±9.7%)

視野障害進行眼数(率)は表1の如く、それぞれ9/90眼(10%)、15/85眼(17.6%)、14/71眼(19.7%)、11/52眼(21.2%)と増加しているが、その程度の漸次微増となっている。平均眼圧下降率も表示の如く点眼長期にわたるも著しい減弱を示さなかった。

図1の拡大図はこちら

NTGのラタノプロストによる3、5、6、8年群の年MD進行度dBを隔年ごとに表示したのが図1である。
一般的には観察期間が短く、視野測定回数が少ないほど症例の分布が大きい傾向であった。各群全例の年MD進行度dBは3年群-0.34±0.76dB、5年-0.31±0.19、6年-0.21±0.43、8年-0.17±0.34で漸減しているが、t 検定では3年群と比較して有意ではなかった。進行眼群は3年-1.53±0.55dB、5年-1.11±0.25、6年-0.83±0.21、8年-0.57±0.17で3年ごと比較して5、6、8では有意(p<0.0001)な減速が認められた。8年群で-1.0dB以下に留まっているのは52眼中1眼(1.9%)のみであった。3年後の年MD進行度が-0.5dB以下の症例は経時的に減速し、3年後と比較してすべての評価時期で有意の改善が認められた。


考 按

NTGの自然経過および治療経過は文献上下記の如くであった。

自然経過  症例数 観察期間 測定方法 進行眼率
白井等 (1994)   42例56眼 4年 -4.0dB 44.5%
Araie (1994)   56例65眼 5年4月 視野変化確率解析 80%
CNTGS (1998)   125眼→9眼
1年→7年
3年
5年
event法
(4 of 5 end points)
40%
60%
 
治療経過  症例数 観察期間 測定方法 進行眼率
CNTGS (1998) 手術、レーザ-、点眼
30%以上眼圧下降
  3年
5年
event法
(4 of 5 end points)
20%
20%
山本 (1999) チモプトール
ラタノプロスト
23眼
24眼
2年
2年
-3.0dB 21%
21%
小関、新家 (2000) 線維柱帯切除術  進行眼
線維芽細胞増殖阻害剤
23眼 5.2年 視野変化解析 13%
小川、今井 (2003)
小川、今井 (2006)
ウノプロストン単独
    〃
48眼
40眼
6年
10年
視野変化解析(trend法)
      〃
17.8%
22.5%
小川、今井 (2004) ウノプロストン
ラタノプロスト
50眼
同一眼50眼
4年
後4年
8年
視野変化解析(trend法)
      〃
      〃
10%
18%
24%
小川、今井 (2003)
小川、今井 (2005)
小川、今井 (2006)
小川、今井 (2008)
ラタノプロスト
   〃
   〃
   〃
90眼
85眼
75眼
52眼
3年
5年
6年
8年
視野変化解析(trend法)
      〃
      〃
      〃
10%
17.6%
19.7%
21.2%


結 論

正常眼圧緑内障にラタノプロスト単独点眼8年で視野障害進行率は経過とともに増加はするが、その頻度は漸減する。年MD進行度dBは前例では3年後と比較して僅かに減速しているものの有意ではなかった。進行眼群では3年後と比較して5、6、8年後では有意な減速が認められ、点眼が長期にわたり有効に作用しつづけていることが示唆された。

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