糖尿病性神経障害とは
指導/佐々木秀行
和歌山県立医科大学内科学第一講座 准教授


▼糖尿病性神経障害の基礎知識
 糖尿病で血糖値が十分にコントロールされないと末梢神経の働きが悪くなり、糖尿病性神経障害が起こります。侵されやすい神経は、皮膚の感覚を伝える「感覚神経」と、心臓・胃腸など内臓の働きを調節する「自律神経」で、体を動かす「運動神経」の障害による症状は軽度です。
感覚神経障害:糖尿病では、両足先や足裏から左右対称性に起こるしびれ、痛みや感覚が鈍くなる症状が特徴的です。病状が進行すると激痛が起こったり、逆にまったく感覚がなくなったりします。足の感覚が鈍くなると潰瘍(かいよう)ができ、ひいては足や足指の切断の原因となります。

*治りにくい傷

自律神経障害:心臓・胃腸や膀胱(ぼうこう)の働きが悪くなり、立ちくらみや頑固な便秘・下痢、尿が出にくい、などの自覚症状が起こります。重症になると、立ち上がったときに気を失う、はき気・嘔吐(おうと)で食べられない、便失禁する、尿が出ないなどの症状で悩まされるほか、低血糖や心筋梗塞(しんきんこうそく)の症状を感じにくくなるため、これらがより重症化することがあります。
▼発症予防・進展防止のために
 糖尿病性神経障害の原因は高血糖であり、血糖コントロールを良好に保つことが最も大切です。高血圧、アルコール多飲、喫煙も神経障害を悪化させます。
 治療薬にはアルドース還元酵素阻害薬(かんげんこうそそがいやく)やビタミン薬がありますが、すでに存在する神経症状を消失させることは困難です。神経障害が強い場合には、症状を軽減させるくすりを用いるほか、日常生活でも注意すべきことがあります(表)。足の感覚が鈍くなっている場合は、自分の足を毎日観察して、タコ、ウオノメなどの皮膚変化、水虫や傷の有無をチェックする習慣をつけ、立ちくらみのある場合はいったん座ってから立ち上がる習慣をつけることが重要です。気になることがあれば、何でも担当医に相談してください。

発症予防・進展防止のために
表 糖尿病性神経障害の症状と生活指導
  自覚症状 日常生活の注意点
感覚神経障害 足のしびれ・痛み 寒冷を避け保温、マッサージ、鎮痛薬
足の感覚が鈍い 毎日足を観察し、傷や皮膚変化をチェック
爪の切り方にも注意(ストレートカット)
自律神経障害 立ちくらみ、めまい 急に立ち上がらない、ふらついたらすぐにしゃがむ、弾性ストッキングや腹部圧迫帯の着用
頑固な便秘・下痢 食物繊維の多い食事を摂り規則正しい生活
尿が出にくい 十分な飲水と規則的に排尿する習慣
食事・運動療法による血糖コントロールや、禁煙・禁酒・塩分を摂り過ぎないことも重要です。



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