環境によるドライアイ
指導/杉田二郎
名古屋大学大学院医学系研究科
眼科学・感覚器障害制御学教室


▼ドライアイとは?

「ドライアイ」とは、涙の量あるいは質の異常によって生じる目の表面の障害と定義されています。

 涙の量の検査としては、シルマー法が一般的に行われます。これは、特別な濾紙(ろし)を外側の眼球結膜(しろめ)と眼瞼結膜(まぶた)の間にかけて、5分間で濾紙が涙で何mm濡れたかを測定します。5mm以下の場合は、涙の分泌量が少ないとされます。また、涙の分泌量が正常でも、蒸発量が増えると「ドライアイ」になり得ます。
 涙の分泌量が少なくなる病気としては、シェーグレン症候群などがあります。
 一方、環境などの要因によって生じる「ドライアイ」は、最近注目されてきており、その報告も増えています。

ドライアイを誘発する要因
IT(information technology)技術の進歩により、オフィス以外でもVDT(visual or video display terminals)作業に従事する機会が増え、目の疲れや乾きを訴える人が増加しています。コンタクトレンズ、エアコンなどの空調も涙に大きな影響を与えます。1つの環境要因だけでなく、いくつかの要因が重なってドライアイになることも多いと考えられます。



▼I T 眼 症
 近年、職場のみならず家庭においてもVDT作業が増え、目を中心として、手、肩、腰などに疲労を訴える人が増えています。平成10年に厚生労働省が行った「技術革新と労働に関する実態調査」では、仕事でコンピューター機器を使用することで、何らかの疲れや痛みを感じている労働者の割合は約8割にも上ることが判明しました。かつては「VDT症候群」と呼ばれていましたが、最近では、テレビゲーム、携帯電話のメールなど多岐にわたるため、IT技術の進歩に関連した機器を用いた作業による眼症状を包括して「IT眼症」と呼ばれています。

▼I T 眼症におけるドライアイ
 まばたきの回数は、安静時には1分間に約20回といわれていますが、VDT作業時には1分間に約6回とかなり減少します。このため、目を開いている時間が長くなり、涙の蒸発量が増えてドライアイになるといわれています。また、VDT作業時には、目を大きく開けるために、さらに涙の蒸発量が増えることも指摘されています。
 IT眼症によるドライアイの対策は、環境の改善と涙への対策になります。
 厚生労働省の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、VDT作業1時間につき、10〜15分間の休憩が推奨されています。モニター画面が見にくいと、凝視しようとしてまばたきの回数が減りますので、モニター画面を見やすいものに工夫することも大事だと思います。また、目線が上向きだと、目を大きく開ける必要があり、涙の蒸発がより増えると考えられるので、モニター画面が下向になるようにすることも効果があるといわれています。もちろん、ドライアイ用の点眼薬を使用することも有効です。

▼コンタクトレンズ(CL)
 コンタクトレンズ(CL)を装用すると目の表面の涙の層が不均一になるために、乾燥感をはじめとしたドライアイの症状が健常眼でもでてくることがあります。
 CLに関連したドライアイは、CLの装用を中止して眼鏡に変更することや、装用時間を短くすることで、改善することも多くあります。CLの装用が止められない場合には、人工涙液の点眼、CLの適切なケア、CLの種類の変更などが必要です。
 CLを装用したまま点眼する際には、点眼薬に含まれる防腐剤がCLに吸着して角膜障害をおこす恐れがありますので、防腐剤無添加の点眼薬が推奨されます。CLのケアを怠ると、タンパク質などの汚れがレンズに付着しやすくなり、CL表面の涙の水濡れが悪くなるためにドライアイが生じたり、アレルギー結膜炎の原因にもなりますので、レンズのケアも重要です。
 また、涙の蒸発のメカニズムはハードレンズとソフトレンズでは異なりますので、CLの種類を変更してみるのもひとつの方法だと思います。



▼エアコン
 低温度、低湿度の環境は、ドライアイになりやすいといわれています。エアコンなどで過度に低温度・低湿度にするのは、ドライアイに対しては禁物です。オフィスにおいては、ビル衛生管理基準法で推奨する温度(17〜28℃)、湿度 (40〜70%)に従ってエアコンを設定するのが良いでしょう。
 対策としては、エアコンの風が直接目に当たらないようにします。また、冬季では加湿器などで湿度を補うことや、ドライアイの目薬を使用することも有効な対策だと思います。

▼眼精疲労
 目の疲れ、目の奥の痛みなどドライアイによく似た症状を起こすものとして、「調節性眼精疲労」があります。近くを見る際には、ピントを合わせるために目は調節力を使います。長時間にわたり近くを見ていると、目の調節をする筋肉に負担がかかります。
30歳を過ぎてくると、目の調節力が低下してきますし、遠視であったり、眼鏡やCLの度数が強かったりすると、さらに症状が現れやすくなります。
 対策は、休憩をしっかり取ることですが、翌日まで症状が残るような場合は、眼鏡などの度数を少し落としてみるのも1つの方法です。
参考文献 丸山邦夫,横井則彦:環境と眼の乾き.あたらしい眼科22:311-16,2005


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