早期の発見が難しい、膵がん
 


 

平成28年1月20日、国立がん研究センターより、がんの部位別施設別5年および10年後の相対生存率が発表されました。ニュース番組などでも取り上げられましたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。この調査において、もっとも相対生存率が低く印象に残ったものは「膵がん」で、4.9%です。Apple社の創業者スティーブ・ジョブズや、最近でもジャーナリストの竹田圭吾さんが膵がんで亡くなっています。膵がんは症状を自覚した時にはかなり進行した状態であることが多い、難しいがんです。今回はこの膵がんについて紹介いたします。



  膵がんの相対生存率、罹患率
   

平成26年の厚生労働省の調査によると、全死因の第一位は「悪性新生物」(一般的は“がん”と言われます)で、367,943人(死亡総数に占める割合は28.9%)です。そのうち膵がんは31,692人(死亡総数に占める割合は2.5%)で、平成25年から1,517人増。つまり、全死亡者の100人に約2人は、膵がんで亡くなっています。ちなみに気管・気管支および肺がんは5.8%、胃がんは3.8%、乳がんは1.0%です。また、膵がん死亡者を年次推移でみていくと、徐々に増加していることがわかります。2005年の段階では25,000人に満たず、2000年の段階では20,000人以下でした。

現代人が膵がんになりやすいのか?
がんをテーマに取り上げる場合、たいていは生活習慣が主な原因として挙げられますが、膵がんの場合はどうでしょう。国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターより「高精度地域がん登録のがん罹患データ」(山形、福井、長崎の3県、1985年〜2010年)が公表されています。これによれば、年齢構成を一定にそろえた年齢調整罹患率の年次推移において、40歳頃を境に膵がんの罹患率が上昇し、またこの傾向は年次推移でもほぼ一定です。つまり、時代とともに現代人が膵がんにかかりやすくなっているわけではなく、膵がんを発症する年齢層が増加しているということです。また、時代とともに検査の精度が上がってきたことも考慮すべきです。

男性は膵がんにかかりやすい
この罹患率データを男女別で見ていくと、おおよそ全年齢層において女性よりも男性の方が罹患率が高い状況です。例えば、2010年の50代前半の女性が6.1%であるのに対し、同じ世代の男性では16.1%です。60代前半では、女性が22%であるのに対し、男性は41.6%です。この差は、高齢になればなるほど顕著になります。

(参考:「がん情報サービスganjoho.jp 統計」国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)


  膵がんの症状
   

早期ではほとんど症状が見られない
膵臓は、十二指腸、胆のう、胃、肝臓などの臓器に囲まれており、膵がんを発症した位置によっては周辺の臓器に浸潤(転移)してしまいます。ところが膵がんの場合の多くは、自覚できる症状が見られません。そのため、症状が出現した頃には多くの場合、膵がんがかなり進行してしまっている状態です。

よく見られる症状
腹痛、食欲不振、消化不良、全身倦怠感、黄疸(白目が黄色くなる、尿が濃くなる他)、腰や背中の痛み、体重減少、あるいは糖尿病の発症または急激な悪化といった症状が見られ、膵がんを疑うことになります。これらはがんが発症する位置によって異なります。

膵臓の左側(膵頭部)の場合
自分でみて膵臓の左側にできた膵がんの場合、大きな症状としては黄疸症状が見られます。(日本人の場合は気づきにくく、医師が気づいた頃にはかなり進行している場合があります。)また半数近くのケースで腹痛、体重減少が見られます。

膵臓の真ん中(膵体部)、右側(膵尾部)の場合
食欲不振、腹痛、背中の痛み、腰痛、体重減少といった症状が見られます。この部分にがんが発症してもなかなか症状が出にくいので、発覚した時点でかなりがんが進行している状態です。膵臓は胃などの臓器の裏側にあり、多くの神経が集中している背中のすぐ近くに位置しているため、膵がんが進行してくるとすぐに浸潤してしまいます。
また、食欲不振、腹痛など、日常の何気ない症状が見落とされてしまい、どんどんがんが進行してしまう点も膵がんの恐いところです。はっきりとした原因が見当たらないのにこれらの症状が続く場合は膵がんを疑い、医療機関で検査することが大切です。

糖尿病の発症、急激な悪化
膵臓では、膵液およびインスリンなどのホルモンを分泌しています。そのため、糖尿病を新たに発症したり、糖尿病が急激に悪化した場合は、膵がんを疑うきっかけとなります。
糖尿病の要因(急激な体重増加、肥満、過食)がないのに糖尿病を発症したり、すでに治療を進めているのに急激に悪化した場合などは要注意です。

検査は、まずは診療所がおすすめ
健康診断などで要検査とされた時や前述のような症状を自覚した場合はすぐに、医療機関で検査を受けましょう。内科や消化器内科を標榜している診療所が望ましいです。まずは診療所で受診し、専門施設などを紹介いただくステップがおすすめです。はじめから大きな総合病院を受診する場合は消化器内科などで受診します。


  膵がんの主なリスクファクターと予防
   

前述の通り、膵がんは年齢が高くなるほど発症率が高いがんです。これは膵がんに限ったことではないですが、あらためて危険因子(リスクファクター)を見てみましょう。

膵がんリスクファクター

  • 喫煙者(ヘビースモーカー)
    膵がんになる確率が2〜3倍となります。
  • 大量飲酒および慢性膵炎
  • 遺伝
    近親者にがん発症者がいる場合。
  • 糖尿病患者さん
  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍の患者さん
  • 肥満
    BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)×身長(m)
    男性では25以上、女性では30を超えると肥満です。この基準値を超えると、正常値内の方に比べて男性の場合は膵がん危険率が1.4倍、女性で1.3倍と言われています。
    参考

自己の生活習慣の改善により膵がんになる危険要因を遠ざけるものは、喫煙、飲酒、肥満です。肥満に気をつけた食事と運動、適度な飲酒と喫煙を心がけましょう。
一方で、遺伝や糖尿病患者さんなどは、膵がんを意識した定期的な検査を受けることにより、早期の発見につながる可能性があります。


  膵がんだとわかったら
   

信頼できる医師がいる医療機関を選ぶ
膵がんが疑われた場合、あるいは膵がんであることがわかった場合は、専門医がいる医療機関での受診します。インターネットや本であらかじめ、個人医院や総合病院の内科や消化器内科など、専門医の有無、専門医の診察可能時間などを情報収集しましょう。

膵がんだとわかると、膵がんであることを告知し、患者に合った治療法の提案がなされます。膵がんは一人ひとりタイプや状態が異なり、それにより治療方法の選択肢も変わってきます。また医療機関によって治療方針が異なる場合もあります。そして膵がんは5年、10年とつきあっていく可能性がある病気です。したがって、治療方針についてメリット・デメリットなどをわかりやすく説明してもらえるか、質問することができるか、セカンドオピニオンのための紹介状や資料を用意してもらえるか、今後よいコミュニケーションを築いていけそうかどうか、も医療機関選びのポイントになってきます。

膵がんの状態や進行度などを知って治療方針を検討する
膵がん疑われたら、種々の画像診断でがんの進行度や悪性度などを把握します(病期診断)。
膵がんは進行度によって治療方針が異なります。がんが膵臓の中にあるのか、周辺の臓器にまで浸潤しているのか、またはリンパ節などを通じて他の臓器に転移(遠隔転移)しているのかなどを診断します。
これらは個人によって異なり、また治療方針もそれぞれです。医師から治療方針の説明を受けた時に、疑問や不安を抱えている場合は、主治医以外の医師の意見「セカンドオピニオン」を聞くこともできます。その場合は、主治医にその旨を説明し、これまでの検査結果や紹介状といった資料を準備してもらいましょう。これらが無いまま他の医療機関を受診しても、同じ検査の繰り返しとなる可能性がありますので、留意が必要です。

膵がんの治療法
主な治療法としては、「手術療法」、抗ガン剤を使う「化学療法」、ガン細胞に放射線を照射する「放射線療法」の3つがあります。基本的には複数の治療法を組み合わせた治療が行われます。

  • 手術療法(外科治療)
    膵がん治療の中では最も確実で、がん部を含めて膵臓と周辺のリンパ節などを切除します。しかし7割〜8割の患者さんが、切除が不可能なまでに進行しています。
  • 化学療法
    診断により、手術療法ではがんを取りきれないと診断された場合に行われます。
  • 放射線治療
    手術では切除できないがんであると診断された場合に対して行われます。

早期の発見が難しいとは言われていますが、2013年、アメリカの15歳の少年が膵がんを5分で、しかも安価で発見する画期的方法を開発しました。NHK「Eテレ」の番組でご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。今後の検査技術の発展に、注目です。


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