食道がん ― 進行しやすい、転移しやすい、再発しやすい
 


 

「食道がん」について、2014年1月、著名人の訃報で耳にされた方も多いと思います。発見しにくく、進行しやすい、転移しやすい、再発しやすい、やっかいながんです。
原因は主に生活習慣。まずは正しい知識を身につけましょう。



  「食道がん」とは
   

気管との分岐点から胃の入り口をつなぐ一本のパイプ状の臓器(食道)にできたがんを「食道がん」といいます。
食道は「頸部食道」「胸部食道」「腹部食道」の大きく3つに分かれ、日本人の食道がんの90%近くは「胸部食道」にできます。食道の入り口から3cm下から、約20cmのあたりにできるがんです。


  食道がんの種類と原因
   

食道がんには2タイプあります。

1)扁平上皮がん
食道の内側(筒の内側)の表層部(粘膜上皮)できるがんです。
日本人の食道がんの90%を占めます。
口から入ってきた刺激物や異物に繰り返しさらされ、細胞分裂が著しく、そのため細胞の異変もおこりやすくなります。異変が起きても自然修復が追いつかなくなり、異変が積み重なりがん細胞ができます。健康であれば免疫の力でがん細胞は排除されますが、排除が追いつかなくなるとがん細胞が活発に細胞分裂しはじめます。

原因:喫煙、大量の飲酒、刺激的な食べ物(熱い飲食物、焦げた食べ物)などの危険因子に長期間さらされること。

発がんしやすい人:若いころから喫煙、毎日大量に飲酒(アルコール分解力が弱く、飲酒で顔が赤くなる人)、肥満、野菜不足
(食道がん患者が、女性と比較し男性が6倍ほど多いのは、これらの危険因子に長期間さらされることが多いためと言われています。)

2)腺がん
食道の内側の壁(食道壁)には粘液を分泌する「食道腺」があります。この食道腺を形成している腺細胞ががん細胞と化したものです。

原因:喫煙、食道炎が進行したバレット食道(食道の壁の内側の細胞が異常になる)

発がんしやすい人:逆流性食道炎※が慢性化し、食道粘膜の細胞が変質してしまった状態の「バレット食道」※胃酸が食道に逆流して食道が炎症をおこしている状態、白人男性、喫煙


  食道がんの進行と転移
   

扁平上皮の下に発生したがんは、周囲の組織を破壊しながら増殖を続け、上下左右へと広がっていきます。これを「浸潤(しんじゅん)」といいます。
奥深くへ浸潤し、粘膜層、固有筋層、外膜をこえ、やがて食道の外へ広がります。がんが粘膜内に留まっているうちは「早期食道がん」、粘膜下層にまで進んだものを「表在食道がん」、固有筋層まで進むと「進行がん」と呼びます。
「早期食道がん」の初期段階であれば、がん細胞を切除することで完全に治ります。
「表在食道がん」まで進むと、がんがリンパ節などへ転移しやすくなります。
「進行がん」にまで進むと、食道周辺の臓器に浸潤していきます。

さらに食道壁にはリンパ管や血管が張り巡らされ、また食道の周辺にはリンパ管が豊富にあるため、リンパ液や血液などによってがん細胞が体の様々な部位に運ばれ、転移していきます。


  食道がんの症状
   
  • 早期食道がん
    自覚症状がありません。人によっては飲み込む時にのどに違和感がある、熱いものや酸っぱいものでのどがしみるといった違和感があります。この違和感が続くようであれば、受診をおすすめします。
  • 進行がん
    飲み込む時に、つかえた感じがします。食事をするとのどや胸に痛みを感じるようになります。がんが進行して大きくなり、食道の内側に張り出したりして食べ物の通り道が狭くなっているからです。食事がしづらくなって体重が減少していきます。
  • 転移がん
    がんを放っておいてリンパ節や食道から遠い臓器にも転移すると、そこからがんが増殖していきます。
    例えば背骨に転移すると、背中や胸が痛み出します。
    肺などの呼吸器に転移すると、声がかすれたり咳が出たりします。

  食道がんの診断方法と治療方針の検討
   

自覚症状に気づいた、あるいは検診などでがんの疑いがあったら、専門医による診断を受けます。検査で詳しく調べ、体力や身体の状態など様々な状況を考慮して治療方針を決めます。

検査から治療方針の策定まで

  1. 検査
    内視鏡検査(胃カメラ検査)および食道造影検査(バリウムを飲んでレントゲン検査)で食道壁の状態を確認します。
  2. 診断
    内視鏡検査時に採取した食道の組織を詳しく調べ、がん細胞なのか正常な細胞なのかを判定します(組織生検)。「扁平上皮がん」なのか「腺がん」なのかはここで判定されます。
  3. 病期の確認
    がんの進行度や悪性度、転移の有無、健康状態などを検査します。検査方法は、CT検査、MRI検査、PET/CT検査、骨シンチグラフィーなどで行います。
  4. 治療方針の策定
    検査結果などを考慮し、治療方針を決めます。

  食道がんの治療法
   

食道がんの標準的な治療法は大きく4つあります。これら4つを組み合わせて治療がなされます。身体やがんの状態、転移の部位などによって治療法が異なります。

  • 手術療法
    治療の中心となるのは手術療法です。がんを切除する手術を行います。病巣の切除とその周囲の組織も切除します。病巣の位置によっては声帯や気管も切除しますので、これらの失った部分の再建が必要です。術後には飲み込みの訓練なども行われるため、入院期間が長くなります。近年はおなかを切らずに、内視鏡を用いて切除する方法もあります。
  • 内視鏡的治療
    がんの進行が初期の場合、内視鏡で操作器具を挿入してがんを切除することができます。がんの大きさによって切除方法が異なります。スネアを挿入し、がんを切り取る方法(EMR:内視鏡的粘膜切除術)、ナイフで粘膜下層の組織ごとがんを切除する方法(ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術)がよく用いられます。他にもレーザーやアルゴンプラズマ、電磁波を使った治療法があります。がんの深さと大きさから方法を検討します。
  • 化学療法
    抗がん剤と呼ばれる薬を注射したり、内服したりする治療法です。抗がん剤を使って、がん細胞の増殖・分裂を阻害し、がんを死滅させたり小さくさせたりします。抗がん剤は健康な細胞も攻撃してしまうため、化学療法は副作用が出やすい治療法です。
  • 放射線療法
    毎日少しずつ放射線をがんにあて、がん細胞を攻撃する治療法です。体の外側から放射線をあてる外照射と、内側からあてる腔内照射があります。

食道がんの疑いがあったら、すぐに専門医を受診しましょう。内視鏡検査(胃カメラ)では早期の小さながんでも発見することができます。
治療方針は、進行度、悪性度、体力などを総合的に判断して決定します。医師に相談したり調べたりして、ご自身の意思で決定しましょう。

参考:健康Salad


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