顔の片側が勝手に痙攣する・・・片側顔面痙攣
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


片側顔面痙攣とは?
 
片側顔面痙攣 普段、私たちは自分の意思で顔の筋肉を動かしています。しかし、時に自分の意思とは関係なく、片側の顔の筋肉がピクピクと痙攣したり、引きつったりする場合があります。このような症状が頻繁にみられる病気を片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)といいます。
 40代以上の中高年における発症率が高く、特に女性に多くみられます。
 症状が進行すると、片眼がつぶったままになるほど引きつることもあり、「歩くと物にぶつかる」「包丁をもつ手元が見えない」など、日常生活に支障をきたしてしまいます。また、「外見が気になって人前に出にくい」というように精神的な負担も大きく、抑うつ状態を伴うケースも見受けられます。
 片側顔面痙攣は、そのまま放っておいても治る病気ではありません。しかし、定期的な治療により、普段と変わらない日常生活をおくることは十分可能です。気になる症状がみられたら、早めに神経内科や脳神経外科、眼科を受診しましょう。

  症状は?
     ほとんどの場合、顔の片側に症状が現れます。発症初期では、片眼のまぶた周辺が時々軽く痙攣する程度です。しかし、進行するにつれて痙攣が頻繁に現れ、睡眠中にまで及ぶこともしばしば見受けられます。痙攣が同じ側の顔全体に広がると、「片眼が開けられない」「顔が引きつってゆがむ」といった状態に陥る場合もあります。また、痙攣の振動が内耳に伝わって耳鳴りが生じるケースもみられます。

  発症の原因は?
     近年の研究により、高血圧や高脂血症などの患者さんは、片側顔面痙攣を発症しやすいことがわかってきました。そのため、動脈硬化の進行した血管が顔面神経を圧迫することが原因だといわれています。
 そのほか、脳腫瘍や動脈瘤(※1)が顔面神経を圧迫しているとの説、顔面神経麻痺(※2)の後遺症だという説もあります。また、疲労や精神的ストレス、睡眠不足などが誘因になるともいわれています。
※1 動脈瘤・・・薄くなった動脈の壁に血圧がかかって、動脈が風船のように大きく膨らんでくる病気
※2 顔面神経麻痺・・・片側の顔面の筋肉が脱力して麻痺する病気
   


検査と診断
 
 まず、問診や視診を行います。下まぶたの痙攣を誘発して診断するために、眼を強く閉じてパッと開いたり、口元を横にイーッと引き伸ばしたりすることもあります。
 また、顔面神経を圧迫している血管の状態や、ほかの病気の可能性を調べるために、CT(Computed Tomography/コンピューター断層撮影)やMRI(Magnetic Resonance Imaging/磁気共鳴画像)、MRA(Magnetic Resonance Angiograhy /磁気共鳴血管造影)などの画像診断を行う場合もあります。
 片側顔面痙攣には、症状のよく似た病気もあります。受診の際には、自分に現れている症状について詳しく説明することが大切です。

【片側顔面痙攣の症状とよく似た病気】
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
  「まぶしくて眼が開けられない」「まぶたがピクピクと痙攣する」などの症状がみられる。症状は両眼まぶたにのみ現われ、範囲が広がることはない。
眼瞼ミオキミア
  片眼まぶたの一部がピクピクと痙攣するが、数日から数週間で自然に消える。
チック
  しかめ面、頻繁なまばたきなどがみられる。小児期や青年期によく見受けられ、自分の意思で一時的に症状を抑えることができる。症状の現れる場所が移動するのも特徴。


治療法は?
 
 薬物内服療法とボツリヌス療法、手術の大きく3つに分かれます。
 片側顔面痙攣は生命にかかわる病気ではありません。そのため、医師とよく相談した上で、自分の日常生活に見合った治療法を選択することが大切です。

薬物内服療法
 抗不安薬や抗てんかん薬、筋弛緩薬などを使用します。しかし、眠気やだるさなどの副作用も多くみられます。

ボツリヌス療法ボツリヌス療法
 最もよく行われている治療法で、痙攣している顔の筋肉にA型ボツリヌス毒素製剤を注射します。A型ボツリヌス毒素製剤はアセチルコリン(※)の放出を抑制し、収縮している筋肉をほぐします。個人差もありますが、その効果はおよそ3〜4ヵ月間持続します。数ヵ月ごとに再投与する必要はありますが、数分で終了するため、日常生活に取り入れやすい治療法だといえます。
 しかし、一時的に「まぶたが閉じにくくなる」「口角が下がる」などの副作用がみられる場合もあります。また、薬剤の拡散を防ぐため、治療当日は患部を揉んだりこすったりしないよう注意しましょう。入浴や直射日光などの高温環境、疲労を避けることも重要です。ボツリヌス毒素といっても、相当量を口から摂取し腸で吸収されない限り、中毒に陥ることはありません。治療で使用するのはごくわずかですので、安心して受診しましょう。
 片側顔面痙攣におけるボツリヌス療法には、健康保険が適用されます。さらに従来品よりも小容量で低価格の薬剤も承認されたため、多くの患者さんの自己負担が軽減され、より選択しやすくなりました。
 なお、安全に治療を行うため、所定の研修を受講した専門医以外は施術することができません。施術可能な医療機関について、まずは主治医に相談しましょう。片側顔面痙攣の関連サイト(http://btx-a.jp/kao/)で詳しい情報を入手することも可能です。そのほか、授乳中や妊娠中など、ボツリヌス療法を受けられない場合もあります。受診の際には、体調やいままでにかかった病気について医師によく伝えましょう。
※アセチルコリン・・・筋肉の収縮に関与する神経伝達物質

手術
 耳の後ろの髪の生え際を切開し、顔面神経を圧迫している血管を移動させる手術(神経血管減圧術)を行います。全身麻酔を行うため、2週間ほど入院する必要があります。有効性の高い根治療法ですが、まれに再発がみられたり、顔面神経麻痺や聴力障害などの合併症を引き起こしたりする場合もあります。


日常生活で気をつけたいこと
 
 片側顔面痙攣は、動脈硬化や精神的ストレス、疲労などと深い関係があります。日常生活において以下の点に注意し、発症を予防するよう心掛けましょう。

喫煙や飲酒は控えめに動脈硬化を上手に予防して
 高脂肪食を避け、青魚や食物繊維を中心とした食事を心掛けましょう。喫煙や飲酒は控えめに。できれば禁煙するのが望ましいでしょう。ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動も動脈硬化予防に効果的です。

精神的ストレスの解消を心掛けて
 リラックスできる時間を作って精神的ストレスを解消しましょう。音楽鑑賞や読書、軽いストレッチなど、自分の好きなことを楽しみながら行い、こまめに気分転換を図りましょう。

毎日十分な睡眠を
 疲労や睡眠不足は、片側顔面痙攣の引き金になることもあります。十分な睡眠をとり、一日の疲労を解消しましょう。


編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
ご利用規約
Copyrights ©2009 Empower Healthcare K.K. All rights reserved.