子どものアレルギー性鼻炎
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


「鼻をほじる・いじる・こする」に要注意!
 
「鼻をほじる・いじる・こする」に要注意! ハウスダスト(※)や花粉などで鼻粘膜が刺激されて起こる鼻炎をアレルギー性鼻炎といいます。最近では発症の低齢化も進み、子どものアレルギー性鼻炎も多くみられます。
 生命にかかわる病気ではありませんが、そのまま放っておくと、鼻のかゆみが気になって授業に集中できない、鼻が詰まって眠れないなど、日常生活に影響を及ぼします。鼻のかゆみや鼻づまりが気になり、鼻をほじったりいじったりして鼻出血がみられることもしばしば。乳幼児の場合は、鼻が詰まってミルクが飲めなくなったり、食事ができなくなったりすることもあります。
 子どもは、自分の苦しんでいる症状をうまく伝えることができず、病気を悪化させてしまうことも少なくありません。気になる症状がみられたら、早めに耳鼻咽喉科の医師に相談しましょう。
ハウスダスト・・・ダニの糞や死骸、カビやペットの毛などが含まれた室内の塵や埃のことで、アレルギーの原因になる

症状は?
 
 くしゃみ・鼻みず(水溶性)・鼻づまりが三大症状で、風邪の初期症状とよく似ています。
 子どものアレルギー性鼻炎では、成人に比べて鼻づまり型が多く、くしゃみ型が少ない傾向にあります。また、眼のかゆみや充血といった症状が成人に比べて強く現れる傾向があります。
 アレルギー性鼻炎の発症は、自律神経の働きと深いかかわりがあります。自律神経には交感神経と副交感神経があり、日中は交感神経が、夜から朝にかけては副交感神経が働きます。アレルギー性鼻炎の症状は、副交感神経の働きが活発になった時に出やすくなるため、朝夕に強く現れる傾向にあります。

原因は?
 
 アレルギー性鼻炎の原因となる物質を「抗原(=アレルゲン)」といいます。抗原が鼻から体内に侵入すると、私たちの体は「抗体(=IgE抗体(※))」という物質を作って抗原を攻撃します。このような体の防御システムを「免疫」といいます。しかし、抗体が体内で増えすぎると過剰反応を起こし、くしゃみや鼻みずなどによって抗原を排除しようとします。これがアレルギー性鼻炎の原因となります。
IgE抗体・・・アレルギーの原因となる抗原との接触を繰り返すたびに体内に蓄積される物質で、一定量を超えるとアレルギー性鼻炎を発症する

種類は?
 
 アレルギー性鼻炎は、ほぼ一年中症状が現れる通年性アレルギー性鼻炎と、ある特定の時期に症状が現れる季節性アレルギー性鼻炎の2つに分かれます。
 通年性アレルギー性鼻炎は、冬場や夏場に症状が強く現れる傾向にあります。これは、冷暖房をかけるため窓が閉め切った状態となり、ハウスダストが室内を飛び回るからです。また、空気の乾燥も症状を悪化させる原因となります。
 季節性アレルギー性鼻炎は「花粉症」とも呼ばれ、花粉が抗原である場合がほとんどです。発症時期は、抗原である植物の開花時期と一致しています。複数の花粉に反応を起こすと、ほぼ一年中症状が現れます。また、三大症状に加え、眼やのどのかゆみ・眼の充血・涙目などの症状を伴います。


検査と診断
 
 まず問診で、発症時期や症状の程度、家族のアレルギー既往歴などについて質問されます。
 次いで、鼻粘膜の状態をみるための鼻鏡検査や、風邪の初期症状とアレルギー性鼻炎を見分けるための鼻汁中好酸球検査などを行います。アレルギー性鼻炎と診断されると、原因となっている抗原を特定するための皮膚反応検査・血中特異的IgE抗体検査・鼻粘膜誘発テストを行います。
 そのほか、副鼻腔炎(蓄膿症)の合併の有無を調べるためレントゲン検査を行う場合もあります。

【アレルギー性鼻炎を診断するための主な検査】
鼻鏡検査
鼻鏡という器具を使用して、鼻粘膜の状態をみる検査。アレルギー性鼻炎だと、粘膜が青白くふくらんでいたり、鼻みずが粘膜の周りを覆っていたりする。
鼻汁中好酸球検査
風邪の初期症状とアレルギー性鼻炎の症状を見分ける検査。スライドガラスに鼻みずをとり、試薬を加えて好酸球(※)の数値を調べる。好酸球の数値が増加しているとアレルギー性鼻炎と診断される。
皮膚反応検査
抗原を特定する検査。抗原液を注射したり、ごく浅い傷を作って抗原液をたらしたりして、皮膚の反応をみる。抗原に対する抗体をもっていると、かゆみや腫れなどの症状が現れる。検査結果に影響を及ぼすため、薬を服用している場合は必ず医師に相談すること。
血中特異的IgE抗体検査
抗原を特定する検査。採血し、抗原に対する抗体の有無を調べる。
鼻粘膜誘発テスト
抗原を特定する検査。抗原を染み込ませたろ紙を鼻粘膜に置いて反応をみる。くしゃみや鼻みずなどの症状が現れることによって、抗原を特定する。
好酸球・・・白血球の1種。アレルギー反応を高め、症状を悪化させたり慢性化させたりする


治療法は?
 
治療法は? 治療法は、抗原の除去や回避・薬物療法・特異的免疫療法(減感作療法)・手術の4つに分かれます。重症度や抗原の種類、患者さんのライフスタイルによって治療法を選択します。


抗原の除去や回避
 アレルギー性鼻炎の治療の基本であり、患者さんやご家族が日常生活の中で行うことのできる治療法です。
【ハウスダストの除去】

室内の掃除には、排気循環式の掃除機を使用する。1平方メートルに付き20秒を目安に、1週間に2回以上掃除機をかける
ハウスダストが付くのを防ぐため、布製のソファーの使用を避ける
カーペットや畳をフローリングに変更する。また、ダニが繁殖しやすくなるため、畳にカーペットを敷くのを避ける
マットレスや布団、枕には抗ダニ作用のあるカバーをかける
ダニは高温多湿を好むため、部屋の湿度を50%、室温を20〜25℃に保つよう心掛ける
ぬいぐるみなどのハウスダストが付きやすい玩具は、小まめに洗って清潔に保つ
布団は日光に当てて乾燥させ、掃除機をかける。花粉症の場合は、掃除機をかけるのみとする

【花粉の回避】

花粉情報に注意し、飛散が多い時は外出を控える
窓や戸を閉めて花粉が室内に入らないよう注意する
外出時にはマスクやメガネを着用する
毛織物などの衣服は避ける。付いた花粉をふき取ったり、払い落としたりしやすいように、ツルツルした素材の衣服を着用する
帰宅時は、衣服や髪に付いた花粉をよく払い落としてから入室するよう心掛け、洗顔やうがいをし、鼻をかむ
基本的に布団や衣類は屋外に干さない

【ペット抗原の除去】
ペットは屋外で飼育する。特に寝室には入れないように注意する
ペットの飼育環境を清潔に保つ

薬物療法薬物療法
 最もよく行われる治療法ですが、市販薬の多くは成人用で、子どもには適さないことも少なくありません。必ず耳鼻咽喉科を受診したうえで、子どもに適した薬を処方してもらいましょう。
 また、点鼻薬が苦手な子どもの場合は、周囲の大人がまずお手本をみせてあげてから徐々に慣らしていくことが大切です。

【アレルギー性鼻炎の治療で使用される主な薬剤】
ケミカルメディエーター遊離抑制薬
鼻づまりに効果がある。内服薬と点鼻薬があり、効果が現れるまで2週間ほどかかる。
第二世代抗ヒスタミン薬
症状全般に効果がある。眠気などの副作用が少ない。内服薬は、効果が現れるまでに2週間ほどかかる。点眼薬や点鼻薬は比較的即効性がある。飲み合わせの悪い薬があるため、ほかの薬を服用している場合は必ず医師に相談すること。
抗トロンボキサンA2薬、抗ロイコトリエン薬
鼻づまりに効果がある内服薬。穏やかな効き目で効果が現れるまでに時間がかかる。
ステロイド薬
鼻粘膜の炎症を抑え、症状全般に効果がある薬。内服薬と点鼻薬がある。点鼻薬は数日で効果が現れ、副作用が少ない。内服薬は、ほとんどが症状の強い成人用であり、子どもには適さない場合が多い。
抗コリン薬
鼻みずに効果がある点鼻薬。副交感神経の働きを抑える薬で、原則として12歳以上に使用する。
血管収縮薬
鼻づまりに効果がある。即効性はあるが、使用しすぎると鼻づまりがひどくなる場合もあるため注意が必要。原則として6歳未満での使用は避け、それ以上の年長児に使用する場合にも医師に相談する必要がある。

特異的免疫療法(減感作療法)
 抗原を少量ずつ注射して体内に取り込むことによって、その抗原に対する反応を徐々に弱めていく治療法です。ごくまれに、アナフィラキシーショック(※)などの副作用がみられるため、反応に注意しながら行います。治療期間は2〜3年間ほどを必要としますが、治療を続けることで完治する可能性もあり、アレルギー性鼻炎の患者さんの約70%に効果があるといわれています。
アナフィラキシーショック・・・抗原が体内に入り、血圧低下や呼吸困難、皮膚の発赤などの全身症状が現れた状態

手術
 強度の鼻づまりやほかの治療法で効果がみられない場合は、手術による治療を行います。
 レーザー手術は、抗原に対して過敏になった鼻粘膜を軽く焼くことで反応を弱めます。入院が不要なため用いられやすい方法ではありますが、おとなしく治療を受けられない乳幼児などには適しません。個人差はありますが、数カ月から2年程度効果が持続します。しかし、焼かれた鼻粘膜はいずれ再生するため、完治にはいたりません。
 そのほか、鼻粘膜を切除する手術や鼻づまりを改善する整復術、鼻みずを分泌する神経を切って鼻みずを止める手術などがあります。これらの手術はそれぞれ全身麻酔で行われ、1週間ほどの入院を必要とします。 ただし、子どもに適用されることはほとんどありません。


日常生活での注意点
 
 アレルギー性鼻炎は完治の難しい病気ですが、日常生活に気をつければ症状の緩和や発症の予防も可能です。お子さんが快適に過ごせるように、次のことに気をつけましょう。

周囲の大人は禁煙を
 たばこの煙は鼻粘膜を刺激し、症状の悪化につながります。周囲の大人は禁煙を心掛けましょう。

十分な睡眠がとれる環境作りを
 睡眠不足は身体の抵抗力を弱めます。十分な睡眠がとれるような環境を整えましょう。


バランスのよい食事を
 野菜などのビタミンやミネラルを多く含む食品を取り入れ、バランスのよい食事を作るよう心掛けて。タンパク質や脂肪、食品添加物を多く含む食品はなるべく避けましょう。


室内の乾燥に注意
 鼻粘膜には適度な湿度が必要です。加湿器などを使用し、乾燥を防ぎましょう。加湿器はカビが発生しやすいため、定期的な掃除を行いましょう。


一緒に楽しめる運動を
 適度な運動は、ストレス解消とともに自律神経の働きを高めます。お子さんが継続して運動を楽しめるようサポートしましょう。休日は一緒に運動を楽しんでもよいでしょう。水泳は、鼻粘膜を敏感にして症状の悪化をもたらす場合があるため、十分に注意しましょう。


編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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