気をつけたい!血清尿酸値 ―生活習慣病との合併で心筋梗塞などの誘因にも―
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


放っておくと怖い!血清尿酸値
 
放っておくと怖い!血清尿酸値  近年、食生活の欧米化などのライフスタイルの変化に伴い、血清尿酸値の高い人が増加傾向にあります。血清尿酸値が高くなると高尿酸血症を発症し、放っておくと関節などに激痛を伴う痛風に進行します。怖いことに、糖尿病や高血圧症、高脂血症などを合併すると、心筋梗塞や狭心症を招くこともあります。
 血清尿酸値は、内科での血液検査、健康診断や人間ドックなどで、測定することができます。必ず検査して、健康管理に役立てましょう。検査の結果、血清尿酸値が高い場合には、早めに医師に相談しましょう。

血清尿酸値とは?
 
 血液の液体成分中(血清)における尿酸の濃度を表したものを血清尿酸値といいます。尿酸とは、細胞中にある核酸の構成物質であるプリン体が、肝臓で分解されて生じる老廃物です。プリン体は、細胞の新陳代謝によって核酸から放出されたり、身体を動かすときに使われるエネルギー物質の燃焼によって作られたりします。また、ほかの動植物にも含まれているため、食品からも体内に取り込まれます。


血清尿酸値が高いと発症する病気・・・高尿酸血症とは?
 
 生活習慣病のひとつである高尿酸血症は、現在、日本では潜在患者も含めて約500万人がかかっているといわれています。その多くは中高年の男性ですが、閉経後の女性にもしばしばみられます。
 尿酸は常時体内に1,200r蓄積されています。1日に700r産生され、同量が尿や汗、便とともに排泄されます。こうして、体内の尿酸量は一定に保たれています。しかし、尿酸が産生されすぎたり、うまく排泄されなかったりすると、血清中の尿酸の濃度が増し、血清尿酸値が高くなります。血清尿酸値が7.0r/dl(※)以上の場合を高尿酸血症といい、ほとんど症状が現れない場合を無症状性高尿酸血症といいます。そのまま放っておくと、痛風に進行するため、早めに血清尿酸値を下げることが大切です。
※7.0r/dl・・・血液100ml中に尿酸が7r溶けている状態

発症の原因は?
 
 主に、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足などによる肥満が原因であるといわれています。肥満になると、中性脂肪が尿酸の産生を促すため、血清尿酸値が高くなります。特に、内臓脂肪型肥満は要注意です。体格指数(※)(BMI:Body Mass Index)が25以上である場合や、腹囲が男性85p、女性90p以上の場合は注意しましょう。
 また、血清尿酸値は、高血圧症や糖尿病などにおける腎臓機能の低下や薬の副作用により高くなります。女性の場合は、女性ホルモンが尿酸の排泄を促すため、閉経すると排泄が困難になり、血清尿酸値が高くなります。
 遺伝や体質という説もありますが、生活習慣に気をつければ発症を防ぐこともできます。

体格指数・・・肥満度を示す指標。体脂肪率と相関しており、国際的に広く利用されている。日本人の男女においては、体格指数(BMI)22が最も病気になりにくい標準値とされている。
体格指数(BMI)=体重(s)÷<身長(m)×身長(m)>

高尿酸血症の3つの型
 
 高尿酸血症は、3つの型に分けられます。型によって治療方針が異なります。

尿酸排泄低下型
産生される尿酸量は正常なのに、腎臓の機能障害のために排泄量が減少している状態。高尿酸血症の約60%を占める。
尿酸産生過剰型
排泄される尿酸量が変わらないのに、尿酸が過剰に産生されている状態。高尿酸血症の約10%を占める。
混合型
尿酸が過剰に産生されるとともに、尿酸の排泄が減少している状態。高尿酸血症の約30%を占める。


検査と診断
 
 まず、血液生化学検査で血清尿酸値を調べます。血清尿酸値が7.0r/dl以上あると、高尿酸血症と診断されます。血清尿酸値は、その日に摂取した食品や気温などの影響を受けるため、数回の検査を必要とします。
 次に、高尿酸血症の型を診断するための検査を行い、治療方針を決定します。

【高尿酸血症の型を診断するための検査】

尿中尿酸排泄量検査
1日に排泄した尿を溜め、尿酸量を測定する。尿酸量が400r/dl以下なら尿酸排泄低下型、800r/dl以上なら尿酸産生過剰型、その中間なら混合型と診断される。午前中の空腹時の2〜4時間に排泄した尿を溜め、24時間分に換算して測定する場合もある。
尿酸クリアランス
尿酸を排泄する腎臓の機能を調べる。検査の1時間前に水を飲み、その1時間後に採血と採尿をし、血清尿酸値と尿中の尿酸濃度を調べる。
クレアチニン(※1)・クリアランス
血中と尿中のクレアチニン濃度を測定し、腎臓の糸球体(※2)のろ過能力を調べる。まず、検査の前に水を500ml飲み、1時間後に排尿する。その30分後に採血をして血中のクレアチニン濃度を測定。さらにその30分後に採尿をして尿中のクレアチニン濃度を測定。これらの結果から、腎臓が1分間に排泄したクレアチニン量を算出する。糸球体のろ過能力の低下や尿の排泄障害などがある場合は、この数値が低くなる。
※1クレアチニン・・・血液中のアミノ酸が使われた後の老廃物
※2糸球体・・・毛細血管という細い血管の網が小さな球体になったもの


治療法は?
 
 高尿酸血症の治療法は、食事療法・運動療法などの生活指導、尿路管理や薬物療法があります。治療の目安として、コントロール目標となる血清尿酸値を6r/dl、正常値の上限を7r/dl、治療を開始する基準を8r/dlと定めています。これを「6・7・8のルール」といいます。
 血清尿酸値の急激な低下は、症状の悪化や薬の副作用の原因になるため、徐々に下げることが重要です。

生活指導(食事療法・運動療法)
 高尿酸血症の治療の基本です。プリン体を多く含む食品やアルコールを控えるなど、1日の総摂取カロリー(※1)を制限します。また、ウォーキングや水中歩行などの有酸素運動を行い、標準体重(※2)に近づけます。
 過度の減量でホルモンバランスを崩したり、激しい運動(無酸素運動)をしてプリン体を発生させたりすると、血清尿酸値が高くなります。食事療法や運動療法は、必ず医師の指導の下で行いましょう。
※1 総摂取カロリー・・・1日の食事で摂取するカロリーの合計。運動量や年齢、性別によって適切な総摂取カロリーは異なる。適切な総摂取カロリーの目安=標準体重(s)×25〜30kcal
※2 標準体重・・・健康的な理想体重。最も病気になりにくいとされているBMI標準値を用いて算出する。標準体重(s)=22(BMI標準値)×身長(m)×身長(m)

尿路管理
 高尿酸血症になると、尿が酸性になりがちです。尿酸は酸性の尿に溶けにくく、結晶を作って腎臓の機能を損なったり、尿路結石(※)を作ったりして、尿の排泄を妨げます。そのため、尿が酸性にならないように管理します。これを「尿路管理」といいます。尿の酸性度(pH)は、pH7未満が酸性、pH7が中性、pH7を超えるとアルカリ性になります。
尿路結石・・・尿酸の結晶が固まって結石となり、尿管に流れ出てとどまったもの。結石が動くと粘膜を刺激して、激しい痛みを起こす

【尿路管理のポイント】

尿量を増やす
1日に2L以上の水分を摂取し、2L以上の尿を排泄する。特に、発汗後や就寝前は、水やお茶などの糖分を含まない飲料を十分補給すること。
尿の酸化を防ぐ
バランスのよい食事をすることで、尿の酸化を防ぐ。改善されない場合は、薬物
療法のひとつである尿アルカリ化薬(クエン酸製剤)を服用する。

薬物療法
 血清尿酸値が、生活指導を行っても下がらない場合や、8r/dl以上の場合に行われます。治療を開始してから半年間は副作用が起こりやすいため、定期的に検査を受ける必要があります。症状が治まったからといって、勝手に服用を止めると、血清尿酸値はすぐに元に戻ります。医師の指示に従い、用法用量を守って服用しましょう。
 使用する薬は、高尿酸血症の型によって異なります。

【高尿酸血症の治療で使用する薬】

尿酸排泄低下型の薬
尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロン、ブコローム)を使用する。血液中の尿酸は、腎臓の糸球体でろ過されるが、尿細管(※1)で再吸収される。尿酸排泄促進薬は、尿細管での再吸収を抑制し、多くの尿酸を尿中に排泄させる。副作用として、尿路結石がみられる場合もあるため、尿アルカリ化薬(クエン酸製剤)を併用して予防する。
尿酸産生過剰型の薬
尿酸生成抑制薬(アロプリノール)を使用する。尿路結石がある場合やその既往歴(※2)がある場合にも使用する。尿酸生成抑制薬は、プリン体が尿酸に分解されるときに働く酵素を抑制し、尿酸の産生を妨げる。副作用として、皮疹(※3)や肝機能障害がみられる場合もある。腎不全の患者さんは、症状が悪化することがあるため、投与量を調整する必要がある。
混合型の薬
症状によって、尿酸産生過剰型の薬と尿酸排泄低下型の薬を組み合わせる。
※1尿細管・・・腎臓内にあるうねり曲がった無数の細い管
※2既往歴・・・過去にかかったことのある病気の記録
※3皮疹・・・皮膚に出る発疹


合併しやすい生活習慣病
 
 高尿酸血症は、合併症が怖い病気です。高尿酸血症の患者さんの約80%は、ほかの生活習慣病を合併しており、その根底には内臓脂肪型肥満があるといわれています。
 合併症があると、血管を損傷する尿酸の力が強まるため、高尿酸血症と並行して合併症も治療する必要があります。合併している病気によって治療法が異なりますので、必ず主治医に相談し、それぞれの専門医にかかりましょう。
 次に説明する生活習慣病を合併し動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞、脳血管障害の誘因となります。そのため、高尿酸血症だけではなく、生活習慣病全般を改善するよう治療していくことが大切です。また、血清尿酸値をしっかりコントロールすれば、ほかの病気の予防にも役立つといえるでしょう。

高血圧症との合併
 高血圧症との合併では、尿酸排泄低下型の高尿酸血症が多くみられます。そのため、尿酸排泄促進薬を使用する場合がほとんどです。また、高血圧症では酸性尿である場合が多く、尿路結石ができやすいため、尿アルカリ化薬(クエン酸製剤)を併用します。降圧薬を使用しているときに血清尿酸値が増えると、症状が悪化しやすくなります。そのため、血清尿酸値の低下作用も兼ね備えた降圧薬(ロサルタン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウム拮抗薬、α1遮断薬)を使用する場合もあります。

糖尿病・耐糖能障害との合併
 通常、糖尿病では血清尿酸値は低くなります。これは、尿に糖が出ていると、浸透圧の関係で尿が増え、尿酸の排泄が促されるためです。
 しかし、糖尿予備群といわれる耐糖能障害(※)や、糖尿病が重症になって腎機能障害を併発した場合は、血清尿酸値は高くなります。さらに、耐糖能障害と高尿酸血症を合併すると、動脈硬化が進行しやすくなります。そのため、尿に糖が出ている場合は、血清尿酸値と血糖値の両方の管理が大切です。
※耐糖能障害・・・糖尿病ほどではないが、血糖値が高い場合

高脂血症との合併
 高脂血症とは、内臓脂肪型肥満により血中の中性脂肪値が高まった状態をいいます。中性脂肪は尿酸の産生を促すため、血清尿酸値も高くなります。その相乗効果により、動脈硬化が進行しやすくなります。また、高脂血症の薬が血清尿酸値に影響を及ぼす場合もあるため、注意する必要があります。尿酸排泄低下型の高尿酸血症と合併したときに、尿酸の排泄を促す作用を兼ね備えた薬(フェノフィブラート)を使用する場合もあります。


日常生活での注意点
 
 高尿酸血症を含めた生活習慣病全般を改善するために、日常生活でも以下の点に注意しましょう。

日常生活での注意点食生活を改善しましょう
 適切な摂取エネルギーの範囲内で、1日3食規則正しい食事を心掛けましょう。野菜や海藻類などのアルカリ性食品を多く取り、プリン体が多く含まれる肉類などは控えめに。

アルコールはほどほどに
 アルコールは、尿酸の産生を促し排泄を抑制するので控えましょう。特に、ビールの原料である麦芽は、プリン体を多く含むのでほどほどに。また、アルコールの飲みすぎは、中性脂肪を増やすため高脂血症の原因にもなります。

有酸素運動をコツコツと
 肥満防止のために、毎日継続して有酸素運動を行いましょう。短時間に身体を激しく動かす無酸素運動は、かえって尿酸を増やすので避けましょう。

ゆっくりと身体を休めて
 ストレスや疲労をためないように、リラックスする時間を作り十分な休養を取りましょう。

水分を十分に補給して
 1日に2L以上の尿を排出するよう、水分を十分に取りましょう。ただし、スポーツドリンクやジュースなどの糖分を含む飲料は避けましょう。

禁煙を心掛けて
 喫煙は、生活習慣病全般の原因であり、血管を収縮させるため動脈硬化の誘因にもなります。禁煙を心掛けましょう。

定期的な検査を心掛けて
 高尿酸血症だけではなく、ほかの生活習慣病を予防するためにも定期的な検査を心掛けましょう。


編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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