インフルエンザに気をつけよう!
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


かぜとインフルエンザ
 
 一般に「かぜ」といわれているものとインフルエンザ(流行性感冒)は、似ているようで、実際には原因となるウイルスや症状が異なります。
普通のかぜは、のどの痛み、鼻水、咳(せき)などの症状を伴う呼吸器の急性炎症で、発熱、頭痛、食欲不振などが起こることもあります。健康な人でも年に数回程度かかるといわれている非常に一般的な病気です。
 一方インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気で、普通のかぜよりも急激に発症し、症状が重いのが特徴です。
 インフルエンザにかかると、38℃以上の高熱や筋肉痛などの全身症状が現れます。気管支炎や肺炎を併発しやすく、脳炎や心不全になる場合もあります。
 インフルエンザウイルスには強力な感染力があり、いったん流行すると年齢や性別を問わず、多くの人に短期間で感染が広がります。日本では毎年11月〜4月に流行が見られます。

インフルエンザの特徴
   
潜伏期間 1〜3日
感染経路 おもに飛沫感染(※)
発症 急激に38℃以上の高熱が出る
症状 悪寒、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状、咳、痰(たん)、
  呼吸困難、腹痛、下痢などの胃腸症状 など
療養期間 一週間程度
     
    ※飛沫とは、くしゃみや咳(せき)などで唾液や鼻水が小さな水滴となって飛び散ることです。

インフルエンザウイルスにはどんな種類があるの?
   
 ヒトに感染するインフルエンザウイルスには、A型B型C型の3つがあり、現在流行の中心となっているのはA型B型です。
 A型B型よりも症状が重篤になる傾向があり、死に至ることもあります。また感染力が強いため、大流行(パンデミック)を起こしやすく、過去には香港かぜやスペインかぜなどの世界的な流行で多くの死者を出しました。
 それに比べてB型は、症状が比較的軽く、限られた地域で流行するケースが見られます。C型は鼻かぜ程度の軽い症状ですむことが多いウイルスです。

インフルエンザの合併症について
   
 特に65歳以上の高齢者や子ども、呼吸器・循環器系の慢性疾患のある人などは、インフルエンザにかかると合併症を併発するリスクが高く、後に述べるワクチンを接種したほうがよいとされています。
 合併症のうち、重篤な症状になりやすいのが肺炎で、細菌の二次感染などによって起こります。子どもに起こる合併症の代表例としては、脳炎・脳症、ライ症候群(※)などがあります。

※ライ症候群とは、インフルエンザ感染後、急性脳症や肝機能障害などを引き起こす原因不明の病気です。


インフルエンザの検査はどうやって行うの?
 
 インフルエンザにかかったかどうかの検査は、迅速検査キットを使って簡単にできます。綿棒を鼻やのどの中に入れて粘液を取り、インフルエンザウイルスの有無を調べるものです。検査に要する時間も30分以内と短く、ウイルスの種類を判定することも可能です。保険適用も認められ、広く一般的に行われている検査です。


インフルエンザを予防する方法は?

予防の第一はワクチンの接種
   
 インフルエンザの予防に効果が期待できるのがワクチンの接種です。65歳未満の健常者では70〜90%の発病予防効果があり、合併症の併発や高齢者の死亡を減らす効果があることが知られています。
 行政もワクチンの接種を推奨しています。65歳以上の高齢者とともに、60〜64歳で心臓や呼吸器系、腎臓などの基礎疾患を持つ人をワクチン定期接種の対象と、法令により定めています。市町村による費用補助の対象になっている場合もあります。詳しくはお近くの保健所または医療機関にお問い合わせください。

インフルエンザワクチン接種のタイミング
   
 インフルエンザワクチンは原則として、1〜4週間の間隔をおいて2回接種します。65歳以上の高齢者や過去にインフルエンザにかかったことがある人なら、1回の予防接種でも十分な免疫力が得られるといわれています。
 ワクチンは接種してから効果が現れるまで時間がかかります。通常、効果が現われるのはおよそ2週間後からで、その後約5カ月間持続するといわれています。
 ワクチン接種のタイミングとしては、流行シーズンを迎える前の11月ごろをおすすめします。
 ただし以下に述べるように、ワクチン接種に注意が必要な人もいます。

インフルエンザワクチンの副反応について
   
 インフルエンザワクチンは、ウイルスの病原性をなくした不活性化ワクチンというもので、接種によってインフルエンザを発症することはありませんが、接種を受ける際の健康状態や体質によって、何らかの症状が出ることがあります。これを「副反応」といいます。
 インフルエンザワクチンによる副反応は一般的に軽いもので、接種を受けた部分の皮膚が赤くなったり、腫れや痛みが生じたりするなどのほか、発熱、寒気、体のだるさなどが見られることがありますが、いずれも2〜3日で消失します。まれに、ワクチンに対するアレルギー反応(発疹、じんましん、皮膚の赤み・かゆみ)が見られることがあります。また、過去には重篤な副反応が報告されたこともありますので、既往症などがある人は医師に相談してください。
 
接種をしてはいけない人
  ・発熱している人 ・重篤な急性疾患にかかっている人
  ・これまでにワクチンを接種して副反応が現れた人 など
接種する前に医師と相談する必要のある人
  ・心臓病・肝臓病などの慢性の病気で治療を受けている人
  ・けいれんを起こしたことのある人
  ・卵やゼラチンのアレルギーがある人など


インフルエンザの治療について
 
 インフルエンザにかかったときには、安静にし睡眠を十分にとることが最も大切です。空気が乾燥していたり気温が低かったりするとウイルスが活発になるため、加湿器などを使って部屋の湿度を60%程度に保ちます(湿度計があるといいでしょう)。室内温度は20〜24℃に設定し、汗をかいたら下着を交換するなど、体を冷やさないようにしましょう。
 インフルエンザは、高熱による脱水症状が起こりやすいため、水分の十分な補給が大切になります。脱水の激しい場合には、補液を行います(点滴などによる)。
 発熱、頭痛、関節痛があるとき、一般的にはアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤(※)を使います。鼻水・鼻づまりがひどいときは、抗ヒスタミン剤を使って症状を抑えます。

※解熱鎮痛剤にはアスピリンなどもありますが、インフルエンザ脳炎・脳症・ライ症候群との関連性が指摘されているため、15歳未満の投与は控える必要があります。

抗インフルエンザ薬
   
 インフルエンザと診断された場合、特効薬として開発された抗インフルエンザ薬を使う方法が 一般的です。発症してから48時間以内、しかもできるだけ早く服用することが大切です。服用後24時間以内から効き始め、発熱が続く期間を1〜2日は短縮できるといわれています。
 抗インフルエンザ薬には、A型インフルエンザのみに有効な塩酸アマンタジンA型B型インフルエンザに有効なノイラミニダーゼ阻害薬としてザナミビル水和物(吸入薬)、リン酸オセルタミビル(経口薬)などがあります。これらの薬剤には副作用が起こる可能性があることから、医師の処方に従って使用することが大切です。また抗インフルエンザ薬は、ワクチンによる予防に置き換わるものではありません。
     
   
予想される副作用
塩酸アマンタジン 吐き気や不眠など
ザナミビル水和物 非常に少ないが、喘息のある人は発作の誘発に注意
リン酸オセルタミビル(※) 腹痛や下痢などの胃腸症状など
   
※因果関係ははっきりしていませんが、この薬を飲んだ後に幻覚や異常行動を起こした事例が報告されています。そのため、10歳以上の未成年者への使用は、原則禁止されています(2007年3月20日厚生労働省通達)。
   


日常の注意点は?
   
 インフルエンザ予防のために、普段の生活では以下のような点を心掛けましょう。
     
   
換気を心掛ける。
インフルエンザにかかった人がくしゃみや咳(せき)をすると、飛沫の中のウイルスが空気中を浮遊し、感染率が高まります。ウイルスを取り除くために、定期的に換気をしましょう。
   
外から帰ったら手洗いとうがいをする。
ウイルスへの感染を防ぐために、外から帰ったら手や手首を丁寧に洗いましょう。うがいは、のどの粘膜を清潔に保つとともに、のどを潤す効果があるため感染を予防する効果が期待できます。
   
栄養バランスのよい食事で体の抵抗力をつける。
特にたんぱく質やビタミンをとるように心掛けてください。たんぱく質には、ウイルスへの抵抗力を高めるはたらきがあります。ビタミンAには、鼻やのどの粘膜を丈夫にする作用、ビタミンCには免疫力を高める作用があります。
   
十分な睡眠、休養をとって疲労やストレスをためない。
疲労やストレスが蓄積すると、抵抗力が弱まります。ウイルスから身を守るためには、睡眠を十分にとり、体をゆっくりと休ませることが大切です。さらに、日ごろから適度な運動をして体力をつけておきましょう。
   
マスクを着用してウイルスや乾燥からのどを守る。
マスクをつけることで、ウイルスの呼吸器内への侵入を防ぎます。乾燥による、のどのはたらきの低下を防ぐ効果もあります。
     
   
インフルエンザの流行状況を把握しましょう。
インフルエンザの最新情報が、下記ホームページに掲載されていますので、こちらを参考にして予防対策を迅速に行ってください。

国立感染症研究所感染症情報センターのホームページ
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html
   


編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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