慢性頭痛の1つ、片頭痛とは?
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授

 
 頭痛は、原因がはっきりしている場合と、していない場合で大きく2つに分けられます。脳腫瘍やくも膜下出血、ケガなどで頭痛が起こることがあり、これは原因がはっきりしています。
  一方、原因のはっきりしない場合は、慢性頭痛といわれ、片頭痛もその1つです。慢性頭痛には片頭痛のほか、緊張型頭痛、群発頭痛があります。
  片頭痛に悩んでいる人は、15歳以上の日本人では8.4%、約840万人と推測されています。また、片頭痛は女性に起こりやすく、男性の4倍多いといわれています。
     

   
 片頭痛は、直接生命に危険を及ぼすものではありません。しかし、頭痛発作に伴う日常生活への影響は大きく、個人差もありますが家事や仕事などに大きな支障をきたすことがあります。
 日本頭痛学会では「片頭痛は頭痛発作を繰り返す病気で、発作は4〜72時間持続する。片側性(頭の片側に起こる)、拍動性(ズキズキする)の頭痛で、中等〜重度の強さであり、日常的な動作により頭痛が悪化することが特徴的であり、それに伴う症状として、悪心や光過敏・音過敏を伴う」としています。

   
   


 
 片頭痛がどのような仕組みで起こるのか、いろいろと研究されていますが、今のところ正確なことは不明です。
 現在、最も有力な説は「三叉(さんさ)神経血管説」です。この説は、何らかの刺激で頭の血管を取り巻く三叉神経の末端から正体不明の物質(X)が放出され、(X)が血管を拡張させ、炎症を起こす一方、(X)の刺激による興奮が脳に伝えられて吐気や頭痛を生じるという説です。この仕組みには、セロトニンという神経伝達物質の受け皿となるセロトニン受容体が関係していることが、トリプタンという薬剤の効果から考えられています。

   
 
  頭痛発作は、月に1〜2回、多い場合は週に1〜2回起こり、数時間から3日間ほど続く  
 
 
 
体を動かすと頭痛はひどくなる

 
 
     
 
  頭痛発作に、吐き気を伴う場合や実際に吐くこともある  
 
 
 
  頭痛発作時には、光や音に過敏になり、明るいところを避け、静かな場所を好む  
 
     
 
  頭の片側が、ズキンズキンと脈打つように強く痛む。  
 
 
 
  はじめの頭痛発作と次の頭痛発作の間は、全く症状がみられない。  
 
     
   
   
片頭痛といっても、必ずしも頭の片側だけが痛むのではありません。片頭痛の4割は、頭の両側に痛みを感じるといわれます。また、ズキンズキンとしない非拍動性の頭痛も約5割にみられています。
また、肩こりなどの前駆症状から始まる頭痛発作も7割以上にみられます。
   


 
 片頭痛かどうかを調べる検査はありませんが、頭痛の原因になる他の病気が隠れていないか調べておくと安心できます。
  この場合、神経内科か脳神経外科を受診します。頭の血管の異常を調べる検査にはCTやMRIなどがあります。
   


 
 片頭痛の診断は、問診が最大の情報源となります。できれば頭痛発作時だけではなく、ふだんから頭痛日記をつけておくと、発作とストレスの関係なども明らかにすることができるかもしれません。
  頭痛は、重症度と生活支障度によって区分され、片頭痛では治療薬の選択が異なってきます。
軽症 日常生活に対する支障がない
中等症 日常生活や仕事に影響がある
重症 日常生活や仕事が不可能で寝込む
   


 
 片頭痛は主に薬物療法が行われますが、頭痛発作の誘因を明らかにして、それを排除することも重要です。

   
 薬物療法には、発作前に行う予防療法と、頭痛発作時の急性期治療があります。
 また、片頭痛発作時の治療目的は、頭痛を消失させ、日常生活を回復することです。「慢性頭痛の診療ガイドライン」市民版では、軽症から中等症の頭痛には消炎鎮痛薬、中等症から重症ではトリプタン系薬が推奨されています。
頭痛発作の前に服用する、
主な予防薬
カルシウム拮抗薬など
頭痛発作時に服用する、
主な急性期治療薬
アセトアミノフェン、非ステロイド系消炎鎮痛薬(アスピリンなど)、エルゴタミン、トリプタン系薬、制吐薬

   
 現在、日本では5種類のトリプタン系薬が使用され、剤形も錠剤、口腔内崩壊・速溶錠(口の中で溶ける/崩れる錠剤)、点鼻錠、注射の4種類があります。また、点鼻薬は吐き気があっても使用できます。
スマトリプタンコハク酸塩 錠剤、注射薬
スマトリプタン 点鼻薬
ゾルミトリプタン 錠剤、
口腔内速溶錠
エレトリプタン臭化水素酸塩 錠剤
安息香酸リザトリプタン 錠剤、
口腔内崩壊錠
ナラトリプタン塩酸塩 錠剤

   
片頭痛がひどくなると、普通なら痛みを感じない程度の刺激でも痛みを感じるアロディニアという現象が起こります。したがって、トリプタンを使用する際は、片頭痛の早期に使い始めるほうが効果的とされます。
トリプタンは、片頭痛の治療効果が優れていますが、3ヵ月を超えて月に10日以上服用すると、トリプタン乱用頭痛が起こります。月に10日以内の服用であれば問題はなく、トリプタンの使用を心配することはありません。
   


 
 片頭痛発作の誘因として知られているのは、過剰な飲酒、睡眠不足、睡眠過多、過度のストレス、温度差などです。これらの誘因は個人差があり、人によって異なります。自分の発作誘因を見つけて、生活習慣の中でその誘因を上手に避けたいものです。

   
 まぶしいほどの明るい光や耳ざわりな騒音、強い香水などは頭痛発作の誘因になるばかりではなく、発作中の頭痛を悪化させることがあります。
 また、熱いシャワーの後、急に冷えたりするとその温度差が頭痛発作の引き金になる場合があるので、避けるようにします。

   
 片頭痛では、ハードな仕事が一段落した後などに、ストレスから開放されたタイミングで頭痛発作が起こりやすいことがわかっています。ストレスをためない生活をおくる工夫と、安定した精神状態を保つことが大切です。

   
 片頭痛の発作中は、適度な睡眠が頭痛の改善に効果がある場合もありますが、一方では、過剰な睡眠は片頭痛の誘因となることもあります。
  ふだんの睡眠不足を、週末にまとめて取り戻そうというような睡眠のとり方は、避けたほうがよいでしょう。

参考文献:日本頭痛学会編 これで治す最先端の頭痛治療「慢性頭痛の診療ガイドライン2006」市民版 保健同人社

   


編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
ご利用規約
Copyrights ©2009 Empower Healthcare K.K. All rights reserved.