性器ヘルペスって皮膚病なの?
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


 単純ヘルペスウイルスが原因です
 性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスが原因となる皮膚の病気です。
 このウイルスには1型と2型があり、1型は「口唇(こうしん)ヘルペス」の原因となります。
 性器ヘルペスの原因ウイルスは主に2型ですが、口唇ヘルペスの症状が現れているときに、患部を触った手でそのまま性器周辺を触れると、1型であっても性器ヘルペスの原因となります。
 これを分けてみると、下半身には1型、2型とも感染しますが、上半身には主に1型が感染すると考えられています。
  感染は?
  
 性器ヘルペスは、性行為などによる接触感染が多くみられますが、母子感染といって出産や乳幼児期の親子間での感染も知られています。
 また、性器ヘルペスの症状が現れているときに患者さんが使ったタオルや食器などから感染することもあります。
 大家族が多い昔は、乳幼児の時期に祖父母、親子など、周囲との接触で口唇ヘルペスの原因になる1型のウイルスに感染して抗体を持つことが多かったのですが、現在のような核家族化の時代では、衛生状態の向上も加わり、抗体を持たない人が増えています。
単純ヘルペスウイルスは1型に対する抗体を持っていると、2型に対しても感染しにくく、発症しても軽症ですみます。
  
 「性器ヘルペス」という病名
 最近、性器ヘルペスの患者さんを対象とした調査の中で「性器ヘルペス」という病名に対して、抵抗を感じる人が8割にも上ったという結果から、「性器ヘルペス」の英語名Genital Herpes を略して「GH」と呼称する提案があります。
 
  単純ヘルペスウイルス2型の特徴
   単純ヘルペスウイルス2型は、外性器や膣(ちつ)、膀胱(ぼうこう)などの皮膚や粘膜から侵入すると、神経に入り込み、神経を伝わって腰仙骨神経節(ようせんこつしんけいせつ)という腰の近くにある神経の集まりに潜伏する性質があります。この潜伏しているウイルスが、免疫力の低下などをきっかけに、初めて「性器ヘルペス」として発症することになります。
  

 性器ヘルペスの発症は3タイプ
初感染で症状がみられるタイプ。
 
個人差もありますが通常では、4〜10日後に現れます。

初感染では症状がみられずに、一定の潜伏期間を経てから、初めて発症するタイプ。
 
症状が現れない場合は感染に気がつかないことがあります。

初感染で症状がみられた後、一定の潜伏期間を経て再発するタイプ。
 
初感染後の再発は、80%が1年以内とされます。
  症状について
   症状は、初感染と再発の場合で大きく異なります。
通常は、初感染の症状が重く、再発が軽くなります。再発を重ねるごとに軽い症状になるといわれます。
 初感染後は、治療を受けていない自然経過の場合ですが、女性では2〜4週間、男性では2〜3週間、外性器に症状がみられます。
 また、再発の場合は、3〜7日間程度症状がみられます。
  初感染で現れる主な症状
  
患部に、ひりひり感、むずがゆさ、灼熱感、痛みなどを感じます。
赤いブツブツができ、水ぶくれになり、破れて潰瘍(かいよう:ただれ)になります。
患部に激しい痛みを感じます。また、女性の場合は、排尿時に痛みを感じます。
38度くらいの発熱を伴う場合があります。
まれにウイルスが、脳や脊髄(せきずい)を覆う髄膜(ずいまく)まで達し、「髄膜炎」を起こすことも知られています。髄膜炎になると強い頭痛がみられ、尿が出なくなります。
  
女性:
症状は、外陰、膣の入り口、おしりにみられ、膀胱や子宮頸部にまで及ぶこともあります。脚のつけ根のリンパ節が腫れることもあります。
男性:
症状は、外性器の先端・包皮・体部、おしりによくみられます。
  再発の主な症状
  
 再発は、神経節に潜んでいたウイルスが、再び感染した性器周辺に戻ってきて増殖しようとすることで症状が起こります。
 再発の症状は、初感染ほど重い症状ではありません。
 再発する前には、神経痛のような症状や、痛み、灼熱感、ムズムズするような違和感があります。
 多くの場合、小さな水疱(すいほう)や潰瘍が数個できる軽症です。
  

 検査
 性器ヘルペスの症状が現れたときは皮膚科や泌尿器科を受診します。女性の場合は婦人科を受診してもよいでしょう。
 検査は、病変部の皮膚や粘膜、分泌物を綿棒で擦り取って、単純ヘルペスウイルスの有無を調べます。
 また、血液検査でウイルスの抗体を調べる場合もあります。
  診 断
   専門の医師ならば、症状がいつどのようにして始まったかという問診と病変部の観察による視診で、性器ヘルペスの診断は下せます。
 できるだけ早期に診断し、早期に治療を始めることが、初感染、再発を問わず重要です。
  

 治 療
 ウイルスを消滅させる薬は、医学の進んだ現在でもありません。
 治療は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を使用します。抗ウイルス薬は、正常な細胞へウイルスが新たに感染することを防ぎ、症状が出ている期間を短くします。
 痛みに対しては鎮痛薬を使い、細菌感染の心配がある場合は抗生物質を使用します。
 初めての性器ヘルペスで、激しい痛みや排尿困難、高熱が続くなど重症になった場合は入院して治療することになります。
 頻繁に再発を繰り返す場合には、「抗ウイルス薬」を毎日少しずつ飲むことによって再発リスクを低下させる「再発抑制療法」を行う場合もあります。
  主な抗ウイルス薬
  
種 類薬の形状
バラシクロビル錠剤、顆粒
アシクロビル錠剤、顆粒、軟膏
ビタラビン軟膏、クリーム
 
 
症状の程度によって使用する薬の量や服用回数は異なります。
 
  

 症状が現れているときに注意すること
 「性器ヘルペス」で大切なことは、人にうつさないようにすることです。
 症状が現れているときは、患部の水ぶくれや、ただれた皮膚、および粘膜に、たくさんのウイルスがいます。もし患部に触れた手で他の場所を触ると、そこにウイルスが感染します。患部に触れた場合は、水で洗い流してください。
  
患部に触れたタオルは、洗濯をして日光に当てて乾燥するようにします。
同じタオルを家族と共有しないでください。
「性器ヘルペス」と診断されたら、症状が現れている間は性行為を避けてください。
妊娠中に、性器ヘルペスの症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。出産スケジュールによっては、産道から新生児への感染を避けるために、帝王切開をする場合もあります。
症状が現れていない場合でも、ウイルスは潜伏しているだけで感染は続いています。できるだけ再発をさせない意識が必要です。
  再発を防ぐために
   再発は、肉体的な疲労ばかりではなく、精神的なストレスがきっかけになる場合もあります。特に次のようなことに注意して、再発を起こさないように注意しましょう。
  
疲れたと思ったら無理をせず、休息をとり、疲労をためないようにします。
上手な気分転換で、ストレスを回避します。
多くの種類の食品をバランス良くとるように心がけて、よい体調を維持します。
適度な運動の習慣と共に、十分な睡眠もとるようにして、免疫力の低下を防ぎます。
外出するときは、帽子やマスクをこまめに着用して、直射日光を浴びないようにします。
アルコールの過剰摂取は、再発のきっかけになるため、注意をします。
  月経前は特に注意
   女性の場合、月経が再発のきっかけになることがあります。月経と再発の関係が明らかな場合は医師に相談して下さい。
  



編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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