口唇ヘルペスは免疫力の低下で再発!
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


 口唇(こうしん)ヘルペスとは
 口唇ヘルペスは、唇のまわりに小さな水ぶくれ(水疱:すいほう)ができる病気です。原因は単純ヘルペスウイルスですが、感染しても必ず症状が現れるとは限りません。
 昔は、幼小児期に親子、祖父母と孫といった家族の中で、頬ずりやキスなどの接触感染、飛沫(ひまつ)感染などで感染することが多い病気でしたが、生活様式の変化に伴い、感染する機会が減り、大人になってから初感染することが増えているといわれています。
 幼小児期の初感染では、症状が現れないか、現れても非常に軽症ですみます。しかし、大人になってからの初感染は重症化しやすいといわれています。
 また、幼小児期に一度感染すれば免疫ができるため、大人になってから再発しても軽症ですみます。
  

 症状
 幼小児期の初感染であれば90%に症状はみられません。
 初感染後は免疫機構により単純ヘルペスウイルスに対する抗体ができるため、ウイルスは血液の中では存在できず、神経がたくさん集まっている「神経節」の中に潜伏して活動を休止します。ウイルスが潜伏している限り、症状は現れません。
 しかし、風邪をひいたり、ストレスや疲労によって体の抵抗力が落ちると神経節からウイルスが出てきて増殖を始め、口唇ヘルペスが再発します。
 再発を繰り返す人は、水疱が現れる前、口元に違和感があり、口唇ヘルペスの再発を自覚できるようになります。通常、再発の症状は繰り返すたびに軽くなっていきます。
  
大人になってからの初感染
 大人になってからの初感染では、唇の周囲に大きさ数ミリの水泡がたくさんできて、顎(あご)の下のリンパ節に腫れなどがみられます。また、発熱、頭痛、喉の痛み、倦怠感など全身症状が出現し、重症化することもあります。
症状は4段階に分けられ、2週間ほどの経過で回復します
前駆期
  水疱が現れる前に、ピリピリ、チクチク、ムズムズといった、皮膚に違和感がある時期です。

初 期
  皮膚に違和感があってから半日くらいの間に赤い腫れがみられるようになります。ウイルスの増殖が活発になっている時期です。この時期から治療を始めることが大切です。

中 期
  赤く腫れたところに水疱ができます。水疱の中にはウイルスがたくさんいます。水疱が破れると水のような液体が出ます。
 破れたところを触るとウイルスが手に付着しますので、そのまま目などに触れないように気をつけてください。ウイルスが目に触れると目に感染します。
 触れた場合は、すぐに手を洗ってください。

後 期
  水疱の痕にかさぶたができ、治っていきます。
  

 検査
 口唇ヘルペスは皮膚科を受診してください。問診と視診の他、この病気に対する検査は特にありません。
 口唇ヘルペスに感染したことがあるかどうかは、血液検査でウイルスの抗体を調べればわかります。
 少数ですが、ウイルスが脳に入り、「ヘルペス脳炎」を起こすことがあります。ヘルペス脳炎の疑いがあるときは病院の神経内科を受診し、髄液(ずいえき)中のウイルス検査、CT、MRI、脳波検査を行います。
  ヘルペス脳炎
   ヘルペス脳炎は、口唇ヘルペスを起こすウイルスと同じ、単純ヘルペスウイルスが原因となります。
 初感染では、鼻の粘膜から嗅神経を通って脳へ移行することが多く、再発では三叉神経(さんさしんけい)というこめかみを通る神経を伝わって脳に侵入すると考えられています。
 症状は新生児、年長児、成人と発症年齢によって異なりますが、発熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれん、失語症、異常行動、人格変化などが短時間のうちにみられるようになります。
 年間300〜400人が発症し、死亡率は10〜30%とされます。
  

 診断
 診断は、皮膚科医あるいは内科医による問診と視診ではほとんどが確定します。
 また、ヘルペス脳炎の診断には、身体所見に加えて血液検査や隋液検査が必要です。
  

 治療
 抗ウイルス薬は、早い時期から使用するほど効果が高く、早期治療のためにも早期受診が大切です。
 治療は、ウイルスが増えるのを抑える抗ウイルス薬が最も効果があります。
 また、痛みがある場合は鎮痛薬を使います。細菌感染の心配がある場合は抗生物質を用いることもあります。
 再発を繰り返す場合は、どのようなときに再発するか、再発しそうになった場合の対処法などを医師と相談しておくとよいでしょう。
  ウイルスと細菌の違い
「ウイルス」
細菌よりも小さく、他の生物の細胞内に自分の遺伝子を送り込んで自己の複製・増殖を行います。
「細菌」
1つの細胞からなる微生物で、外界から栄養を取り込み、毒素を作ったり、細胞を溶かすなどをして分裂して増殖します。

治療薬
種類使用法
バラシクロビル錠剤、顆粒1回1錠、または顆粒1グラムを1日2回、5日間服用
アシクロビル錠剤、顆粒1回1錠、または顆粒0.5グラムを1日5回、5日間服用。年齢、症状によって適宜増減する。
軟膏適量を1日数回患部に塗布し、7日間使用
 ビタラビン軟膏、クリーム適量を1日、1〜4回患部に塗布または貼付し、7日間使用

症状の程度によって使用する薬の量や服用回数、日数は変わることがあります。

再発を防ぐために
  
日頃から免疫力が低下しないように過ごします
十分に休息し、疲労をためない。
上手な気分転換でストレスを回避する。
栄養バランスのよい食事を心がける。
帽子やマスクをこまめに着用して、直射日光や冷たい風は避ける。
適度な運動の習慣をつける。
深酒や夜更かしを避ける。
  

 日常生活の注意
  一度でも口唇ヘルペスになった人は、無症状の場合でもウイルスがいることを忘れてはいけません。神経節に潜伏しているとはいえ、ウイルスが唾液や精液などに排泄されていることもあります。
 単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、接触感染以外にもタオルやグラスなどについて感染することもあります。症状が現れているときは特に注意してください。
 
  
患部に直接触れないでください。触れた場合は、すぐに十分な手洗いをしてください。
アトピー性皮膚炎がある場合、皮膚のバリア機能が低下して感染しやすい状態になっているため、十分に注意してください。
新生児は、免疫機能が十分に発達していません。症状が現れている間は、キスなどの接触は絶対に避けてください。
タオルは、他の衣類と一緒に洗ってもかまいませんが、日光に十分に当ててよく乾かし、共用しないでください。
グラスなどの食器にも唾液からウイルスが移り、かなり長い間生きています。洗剤でよく洗ってください。
  



編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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