湿疹と蕁麻疹のちがいを知りたい!
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


 湿疹(しっしん)と蕁麻疹(じんましん)
  
 湿疹と蕁麻疹は、どちらも皮膚の病気です。「かゆみ」を主な症状とする点ではよく似ていますが、原因や治療は異なります。

湿疹の原因
 湿疹は、かゆみを伴う紅いブツブツが体の一部に現れることが多く、少なくとも数日から1週間以上、この症状が続きます。
 原因には、金属などの刺激物の接触による場合、皮膚表面がこすれたりする場合、内服薬などによる体の内側から起こる場合などがあります。
 刺激物となる金属には、指輪、ネックレス、イヤリング、ピアス、腕時計などに含まれるニッケルやコバルトなどが知られています。
 また、ウルシやギンナンなどの植物、手袋や下着に使われているゴム類、洗剤に含まれる界面活性剤、化粧品に含まれる化学物質も原因となります。

  蕁麻疹の原因
 原因は、食べ物、食品添加物、抗生物質などの薬剤、植物、虫、感染症、物理的刺激、運動・発汗などさまざまです。
 食物が原因となる場合によく知られているのが、サバやアジなどの青魚やそばアレルギーによる蕁麻疹です。


蕁麻疹の特徴
 蕁麻疹という病名は、人がイラクサ(蕁麻:じんま)の葉に触れると現れる皮膚症状に似ていることからつけられたといわれています。
  
 蕁麻疹は皮膚の一部に、蚊にさされたくらいの紅い膨らみができて、かゆくなりますが、数十分から数時間で消えるのが普通です。この膨らみは蕁麻疹の特徴で「膨疹(ぼうしん)」といいます。
    一方、短時間のうちにたくさんの膨疹が全身に出るような蕁麻疹もあります。
湿疹の場合は、症状が持続しながら悪化していきますが、蕁麻疹は膨疹が現れたり、消えたりを繰り返し、かさつきは伴いません。
  
蕁麻疹の起こるメカニズム
 皮膚の下の血管の周りにはアレルギーに関係する「肥満細胞」といわれる細胞が存在しています。肥満細胞は、蕁麻疹の原因になる刺激を受けると周囲に化学物質を放出します。このときに放出された化学物質の1つである、「ヒスタミン」が血管に作用すると、血管は拡張し、液体成分(血漿:けっしょう)が外に漏れ出て皮膚を盛りあげ、膨疹ができます。また、ヒスタミンは神経を刺激し、その結果、かゆみが起こります。
  
  

 湿疹と蕁麻疹の症状の違い
  湿疹の症状
 最初に現れるかゆみを伴った紅いブツブツは、症状が進むと大きな水疱(すいほう)になります。水疱は、やがて破れ、皮膚の表面がジュクジュクしてきます。この症状を繰り返すうちに皮膚は厚く、かゆみは強くなっていきます。かゆみに我慢できず、かいてしまうとさらに症状は悪化していきます。
  蕁麻疹の症状
 蕁麻疹には、食品や寒冷・機械的刺激など、原因がわかっているものもあります。一方、思い当たる原因もなく、症状を繰り返す場合もよくあります。
 最初の症状が現れてから1ヵ月以内のものを「急性蕁麻疹」、1ヵ月以上続くものを「慢性蕁麻疹」といいます。慢性蕁麻疹は、ほとんどの場合、原因がわからないまま経過します。
 最近の研究によれば自分自身の血液中に肥満細胞を刺激するタンパク質(自己抗体)が存在する人のいることがわかってきました。
 慢性蕁麻疹の多くは、夕方から夜にかけて現れ、翌朝から翌日の午前中には消えて、また夕方から現れるということを繰り返します。自覚症状が皮膚に限られている場合は、何ヵ月かあるいは何年か続いた後、おさまることが多いと考えられています。
  

 湿疹と蕁麻疹の検査
  
湿疹
 接触性皮膚炎の湿疹の場合、原因となる物質を調べるために「パッチテスト」を行うことがあります。
 パッチテストは、皮膚科でよく行う検査で背中や腕に検査する物質を貼りつけ、2日後にはがし、1時間後と翌日に判定します。陽性であれば、皮膚が紅くなります。原因は、1つとは限らず複数みられる場合もあります。
  蕁麻疹
 原因物質を調べるスクラッチテスト(細い針で皮膚に傷をつけ、検査物質のエキスをおいて25分後に判定)を行うことがあります。
 また、血液検査でアレルギーのときに増えるIgE抗体を調べる場合もあります。非アレルギー性であればIgE抗体に異常はみられません。
  

 診断
   湿疹は、皮膚科を受診して原因物質まで調べることが大切です。
 また、蕁麻疹では診察のときに症状が現れていなくても、問診で診断はできるので皮膚科の受診をすすめます。
  

 薬物療法
  湿疹
 重症の場合は、ステロイドの外用薬(塗り薬)を使います。ステロイド薬は効果の強さによって5段階に分かれています。湿疹の症状に応じて、効果の違うステロイド薬を使い分ける必要があるので、必ず医師の指導にしたがってください。症状が重い場合はステロイド薬と保湿剤を併用することもあります。
 また、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服することもあります。
 軽症の場合は保湿剤だけで治療します。
  蕁麻疹
 主に、肥満細胞から放出されるヒスタミンの働きを防ぐ、抗ヒスタミン薬の内服、または注射が行われます。また、抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬を用いる場合もあります。
  

 身近に多い「主婦湿疹」とは?
  
 今、「主婦湿疹」といわれる主婦特有の湿疹が注目されています。炊事や洗濯などの水仕事を長時間繰り返して行うことや、ストレスが原因で起こります。
 湿疹は利き手の親指、人差し指、中指など、よく使う指から順にできることが多く、しだいに手の平全体にひろがっていきます。カサカサに乾燥して皮がむけ、ひどくなると手の甲のほうにも拡大して、あかぎれや小さなブツブツができ、ジュクジュクしたり、かゆみなどの症状が起こります。主婦湿疹は、手以外に症状がみられないことが特徴です。
  「主婦湿疹」に対する対策
 「主婦湿疹」は、できるだけ症状の軽いうちに治療をするようにします。皮膚科では、生活指導と薬物療法を並行して行います。
 重症の場合は、ステロイド外用薬に保湿剤を併用して使用します。軽症の場合は、保湿剤だけで治療します。適切な薬を使えば1〜2週間で湿疹は改善しますが、生活習慣を変えないと、再発を繰り返します。
  
家事を休まずに手への負担を減らす方法
 主婦湿疹にかかるのは、家事をきっちりと行うまじめな主婦に多いといわれます。家事は毎日のことなので、負担の軽減が大きな効果になります。治療には家族の協力を得ることも必要です。
  
食器は、洗剤で洗う前に汚れをできるだけ落とすようにする。古くなった衣類やいらない布でふき取っておく。
食器は少量の洗剤を溶かした湯に汚れが落ちやすくなるまでつけておき、油汚れを浮かしてから洗う。
洗剤は、水で薄めて使う。
お湯の温度をなるべく低く設定する。
自動食器洗い機を使う。
木綿の手袋をした上にゴム手袋をする。
食器洗いを、家族で分担してもらう。
小皿はたくさん使わず、大皿料理にする。
水仕事のあとは必ず保湿剤やハンドクリームを塗る。
  

  日常生活の注意点
   湿疹も蕁麻疹も、原因物質や、発症するきっかけがわかればできるだけ避けるようにします。
  
湿疹
入浴は、かゆみを刺激しないようにぬるい湯で短めに。
直接肌に触れる下着類は、肌にやさしく、刺激の少ない柔らかな木綿製のものにしてください。
  
疲労やストレスは、蕁麻疹を悪化させるので、できるだけ溜めないようにしましょう。
防腐剤や色素などの食品添加物は出来るだけ避け、魚介や肉類は新鮮なものを摂るように気をつけてください。
  



編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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