止めたい!アトピー性皮膚炎のかゆみ
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


  皮膚の仕組みと働き
   
 アトピー性皮膚炎は皮膚の病気ですが、皮膚の仕組みや働きは意外に知られていません。
皮膚には、物理的な力や化学的な刺激物質、紫外線などの有害な光線、微生物や細菌などの攻撃から体を守る働きがあります。また、ビタミンDの合成や発汗による体温調節作用のほか、熱い寒いといった感覚器官としても働いています。
    皮膚の構造
 
 皮膚は表皮、真皮(しんぴ)、皮下組織からなる3層の構造をとり、表皮の表面は角質層という硬いタンパク質で覆われています。角質層には、細菌など異物の侵入を防ぐバリアー機能があり、健康な皮膚を保つ上で大切な役割をしています。
 
   

    アトピー性皮膚炎の皮膚
 アトピー性皮膚炎になりやすい人の皮膚は、角質層の異常によりバリアー機能が弱く、健康な皮膚よりも細菌や化学物質などが侵入しやすい状態になっています。これは角質層をつなぎとめるセラミドという脂質が不足しているからです。セラミドが不足して角質層に隙間ができると水分も失われやすく、乾燥肌になります。バリアー機能が低下した乾燥肌では、アレルギーを起こす原因となるアレルゲン物質の花粉やハウスダスト、化学物質などの侵入を防ぐことができません。
   
     一方、人の体には免疫という、もう1つの大きな防御機構が備えられています。
 皮膚のバリアー機能を破って侵入したアレルゲンは、すぐに免疫細胞にみつかり、外敵として認識され攻撃を受けます。この攻撃の起こっている状態が炎症です。
 免疫細胞は、攻撃のために様々な化学物質を武器として使いますがその1つがヒスタミンといわれる物質です。ヒスタミンは、かゆみや腫れを引き起こす原因物質です。かゆみを我慢できずに引っかいてしまうと、皮膚のバリアー機能が壊れて、細菌などの侵入口をつくってしまいます。
 同じアレルゲンでも、アトピー性皮膚炎になる人とならない人がいるのは、皮膚のバリアー機能がアレルゲンの侵入を許さないほど十分に働いているかどうか、また、皮膚に侵入した花粉などのアレルゲンを免疫細胞が外敵と判断するかどうか、という違いが考えられます。アレルギー体質といわれる場合、免疫細胞が必要以上に攻撃的になっていて、敵ではないものまで攻撃してしまうと考えられます。
   

  症状
   
 アトピー性皮膚炎の最大の症状は、我慢できないほどの強いかゆみです。症状と現われ方は、年齢によって違いがみられます。いずれの場合も強いかゆみがあり、ジュクジュクとした湿疹になって、よくなったり悪くなったりすることを繰り返します。
 症状は顔や首、肘や膝のくぼみに現れやすく、ひどくなると全身に広がることもあります。
 かゆみが強いため、無意識のうちにかいて出血することもあります。
 また、湿疹になる場合と、逆に皮膚が厚くなることもあります。
    年齢による症状の現れる場所の違い
  症状の現れる場所
乳児期 症状は最初、頭や顔(口の周りや頬)にみられ、しばしば胴体や手・足に移動していきます
幼小児期 症状は首あるいは肘の内側、膝の裏側などのくぼみに多くみられます
思春期、成人期 症状は顔、首、胸、背中など上半身に多く現れる傾向があります
   

  検査と注意点
     血液検査では、アレルギーの時に増加するIgEという抗体の量を調べます。
また、どんな原因物質(アレルゲン)でIgE抗体が増加するかを調べることもあります。
 スクラッチテストといって、アレルギーの原因物質を調べる検査をする場合もあります。スクラッチテストは、皮膚を細い針で傷つけて、花粉やハウスダストなどのアレルゲンの試験薬を置いて、どのアレルゲンに対してアレルギー反応が起こるかを調べる検査です。
   
 
ただし、アレルゲンがわかっても1種類のアレルゲンだけが原因とは限らないことに注意してください。特に子供の場合、成長で体質は変化しますのであまり神経質にならないほうがよいでしょう。
 
   

  診断のポイント
   
 診断では、皮膚の観察と症状の経過を聞くことが重要な情報になります。乳幼児や小児の場合、家族が正確な情報を医師に伝える必要があります。
   

  治療のポイント
     アトピー性皮膚炎では、強いかゆみのために無意識のうちに患部をかきむしってしまいます。かきむしると、皮膚のバリアー機能はますます低下し、細菌や汚れが侵入して、さらにひどい湿疹になっていきます。
 このため、かきむしらないように炎症を改善してかゆみを抑える治療を行い、次に皮膚のバリアー機能を回復させる治療を行います。
    治療薬の種類
 炎症を改善してかゆみを抑える薬には、外用薬(塗り薬)と飲み薬があります。
いずれの薬も、必ず医師に指導された塗り方で、指示された量を塗ってください。
 医師は症状の重症度にあわせて、外用薬の種類を使い分けます。症状がよくなると弱い薬に変えていき、塗る量や、頻度を考えて少しずつ薬を減らし、副作用が出ないように注意深く治療していきます。
アトピー性皮膚炎の治療では、抗ヒスタミン薬と抗アレルギー薬を組み合わせて使用する場合もあります。
    アトピー性皮膚炎の皮膚
ステロイド薬 効果の強弱で「ウィーク」から「ストロングゲスト」と5段階にランク分けされています。
免疫抑制薬 免疫抑制薬タクロリムス水和軟膏の外用薬です。
   
抗ヒスタミン薬 肥満細胞から出るヒスタミンがヒスタミン受容体と結びつかないように働く薬です。
抗アレルギー薬 アレルギー反応に関係する化学物質が体内でつくられるのを抑えます。
   
    皮膚のバリアー機能を回復する
皮膚のバリアー機能を回復させるには、皮膚の清潔と保湿がポイントになります。
   
皮膚の清潔を保つ
毎日の入浴やシャワーで汗や汚れを速やかに落としますが、強くこすらないことが大事です。
石鹸やシャンプーは、香料の強いものや洗浄力の強いものは避け、残らないように十分にすすぎます。
石鹸は直接体に当てないようにし、お湯で泡立てて、その泡で洗います。
入浴剤は、できれば避けます。
   
皮膚の保湿を保つ
保湿剤は乾燥肌の改善に効果があります。
入浴やシャワーで清潔にした後、保湿剤を用います。
   

    日常生活の注意
衣類は、吸水性と通気性のよい素材を選び、毛羽立ちのない柔らかいものを選ぶようにします。新品では、防虫加工がしている場合があるので、一度洗濯をしてから着用します。
洗濯する場合は洗剤が残らないようにすすぎを1回多くし、洗濯糊や柔軟剤の使用は避けます。
室内は、ダニやハウスダストを避けるため床をフローリングにして、通気をよくして掃除をこまめに行います。
寝具は、刺激のない肌触りのよい素材を選びます。布団や枕は、できるだけ日光に当て、ほこりは掃除機で吸い取ります。
   



編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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