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適応障害を知ろう - ストレスに適応できずに起こる心の症状


 

昇進、転勤、進学・・・春から新しい環境に身を置くことになった方は多いので無いでしょうか?新しい環境で、新しい生活をスタートすることは一見、とても楽しいことですが、中にはこれにとてもストレスに感じて、馴染めずに心の病気になってしまう人もいます。



 
適応障害とは
   

適応障害とは、例えば進学、部署異動、結婚、離婚など、悪いことだけでなく良い出来事にも生活が変化することにストレスを感じ、そのストレスに適応できずに生じる、心の症状です。「学校に行けない」「無気力」などの症状があらわわられ、社会生活に影響します。
環境が変化してもとくに問題なく適応できる人もいます。一方で、同じ環境の変化でもそれが苦痛だと感じて、健康的な社会生活ができなくなってしまう人もいるのです。

適応障害の症状
「適応障害」の症状はいずれも一見は強くはありませんが多岐にわたります。しかしそれらはどれもストレスに適応できない場合の心の反応であり、また健康かそうではないかは社会生活を維持できているか否かによります。
適応障害の精神症状は、不安、抑うつ、焦燥感、敏感、混乱などがみられます。
一方で身体的にあらわれる症状は、倦怠感、頭痛、腹痛、行動面では遅刻、欠勤、不眠、犯罪などがあります。

適応障害のタイプ
「適応障害」の症状は多岐にわたりますが、主な症状から下記の6つにタイプ分けされています。

  1. 抑うつ気分を伴うタイプ
    憂鬱感、涙もろくなる、絶望感、思考力・判断力の低下、感情のコントロールが難しくなるなど。いずれの症状も、気分障害ほどではありません。
    気分障害:抑うつ気分を主症状とする精神疾患のグループ。代表的なものは「うつ病」。
  2. 不安と伴うタイプ
    漠然とした不安感があり、災害、病気、死などを心配しすぎたり、精神が過敏になって、不安から呼吸困難に陥るなどの軽いパニック発作を起こすなど社会生活を送ることが困難な状態。不安障害ほどではない。
    不安障害:病的な不安感が高まり社会生活が困難になる症状。神経症とも。
  3. 抑うつと不安を伴うタイプ
    不安と心配、気分の落ち込みが同時に現れ、社会生活に支障をきたすタイプ。例えば健康診断で「要精密検査」となることで不安と憂鬱な日々が続くことです。身体の病気で入院したことが心に影響した人の多くは、このタイプの適応障害です。
  4. 行動の障害を伴うタイプ
    万引き、飲酒運転、暴力、無断欠席・無断欠勤、公共の場へのいたずらなどの行動を伴うタイプです。ただ思春期の青年は、この時期によくある精神的な不安定さから反社会的な行動や言動を起こしてしまうことがあります。
  5. 情緒と行為の混合した障害を伴うタイプ
    不登校やかん黙など。子どもが適応障害となる場合、情緒障害や行動障害を伴うタイプである場合が多い傾向があるようです。
    情緒の障害:情緒障害とは病名ではなく文部科学省が規定している名称。
  6. 特定不能のタイプ
    肩こり、頭痛、疲労感などの身体症状を主に訴えたり、主症状がひきこもりだったりする例です。

医師による診断

様々な症状がありますが、どれも適応障害特有のものではないため、医師は患者さんの病歴や環境などから診断を進めます。

適応障害の診断基準(DSM-IV-TRより)

  • A
    はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現
  • B
    これらの症状や行動は臨床的に著しく、それは以下のどちらかによって裏付けられている
  • (1)
    そのストレス因子に暴露されたときに予測されるものをはるかに超える苦痛
  • (2)
    社会的または職業的(学業状の)機能の著しい障害
  • C
    ストレス関連性障害は他の特定のT軸*障害の基準を満たしていないし、既に存在しているT軸障害またはU軸*障害の単なる悪化でもない。
  • D
    症状は、死別反応を示すものではない
  • E 
    そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない

*I軸・II軸とは
DSM(米国精神医学会診断基準)では、診断が偏らないように「多軸方式」をとっています。
I軸:II軸以外の心の病気
II軸:パーソナリティ障害と精神遅滞
III軸:体の病気
IV軸:心理社会的・環境問題の視点
V軸:機能

※DSM-Vでは、家族など愛する人との死別も適応障害の発症の原因となるストレスとみなされています。この基準は変更されることがあります。


 
適応障害の原因
   

適応障害の原因はストレス
日常生活において大きなストレスになる出来事が起こると、身体に様々な反応が出ます。これは普通のことですが、これが「反応」を超えて「症状」にまで至った状態が適応障害です。
誰でもショックな出来事に遭遇すれば驚いたり、あるいは悲しみます。環境の変化があれば緊張したり不安を感じることがあります。はじめはこのような心の動揺があっても、だんだん気持ちがこの状況に適応してきて、環境に馴染んだり、価値観を変えてみたり新たな楽しみとして受け取るなど問題解決の方法を考えはじめます。
適応障害は、このような出来事への心理的な反応がうまくいかなかったために起こります。本人にとっては極端な反応に見え不思議に思うこともあるでしょう。

身のまわりの様々なストレス
ストレスとは、つらい・悲しいことだけではありません。結婚や引っ越し、昇進など、プラスのことも心のストレスになります。あるいは、それらの受け取り方によってマイナスのストレスにもなります。少しのストレスは生活の「はりあい」にもなりますが、これも過度になっていくと心にとって大きな負担となっていきます。
住居や経済的な問題といった環境的なストレス、病気や食習慣といった健康面のストレス、家族・異文化・学校・職業など心理社会的なストレス、対人関係のストレス、一般的には良いことと思われていることへのストレス(結婚、出産、就職、子どもの独立、定年退職など)

ストレスへの耐性が弱いと適応障害になりやすい
同じ環境下でストレスを受けても、適応障害になる人とならない人がいます。これはストレスを乗り越える力は人によって異なるためです。
この力は個人の資質によるところがあり、よく「がんばりやさん」は適応障害になりやすいといわれています。まじめで努力家、他者からの評価を気にし、仕事も多少無理をしてでも片付けて、自分を抑えてでも相手に合わせようとする。子どもの頃からわがままを言わず、聞き分けがよく、自分を抑えて生きてきた人が少なくありません。その反面、自己主張ができず、感情や欲求の表し方がわからなくなっている可能性があります。一見、「いい人」のようですが、とてもストレスをためています。
資質的な傾向としては下記が挙げられます。

  • 感情の表し方がわからない
  • 傷つきやすい(周囲の人が理解できないほどささいなことで傷ついてしまう)
  • 白黒思考(100点でなければ0点と同じ)
  • まじめだけどがんこ(いいかげんなことが許せない、これと思ったら変更できない)
  • 断れない(無理なことや嫌なことも自分を抑えてしまい断れない)
  • 自律神経失調傾向(もともと自律神経のバランスが乱れやすい)

IT関連企業に勤めている人は適応障害になりやすい?
IT関連企業に勤めている人にはうつ病や適応障害が多いと言われています。仕事量が多く、残業しがちで職場によってはパーテョーションで区切られ、人と会話することなく、一日パソコンに向かっているなど環境的な問題もあります。また目の疲れや肩こりなど身体的不調もあらわれるでしょう。


 
治療
   

最初は我慢したり、家族や友人に相談するでしょう。ストレスはこの段階で解消することも多くありますが、それができない状態が続き。抑うつ状態が続くようであれば、カウンセリングや医療機関での受診を検討しましょう。医師は、上記のような個人の資質やその他の精神疾患を念頭におきながら患者さんの話を聞ききます。

適応障害の原因はストレスであることから、そのストレスの原因をつきとめ、解決するための行動を起こしますが解決できないストレスなら、受け止めることで気持ちを楽にしていきます。
あるいは薬物療法で、あらわれている症状を緩和します。
いずれの治療も、社会生活が送れるようにすることを目的としています。したがって、医師に治してもらうのではなく、自分で治していく意識が大切です。


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