成人気管支喘息(ぜんそく)
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


 
 成人の気管支喘息は、過去30年間で約3倍にも増加したといわれています。40歳を過ぎてから初めて発症するようなケースも決して珍しくありません。
 成人気管支喘息の多くが、アレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)を特定できない非アトピー型です。風邪や過労、ストレスなども喘息を発症させる誘因と考えられています。
 過去に小児喘息にかかった経験がある場合、成人になって再発するケースは少なく、全ての成人気管支喘息の3〜4%といわれています。

   
 喘息は、主にアレルギー性の炎症によって気管支が狭くなる病気で、炎症を鎮めないでおくと、発作の起こりやすい状態が慢性化してしまいます。
 慢性化すると、突然の咳き込みや呼吸をするたびにゼイゼイ、ヒューヒューといった音がする喘鳴(ぜんめい)、息苦しくなる、といった症状が起こります。

   
 喘息の発作が起こると、気道(空気の通り道)の粘膜がさまざまな刺激に過敏に反応して炎症でむくみ、狭くなります。その後、痰(たん)がたくさん分泌されて気道をふさぎ、呼吸が困難になります。
 発作は治療によって通常は数分から数時間でおさまりますが、激しい発作が長く続くと危険な状態になる場合もあります。
   


 
 
皮膚反応テスト:アレルギー反応を調べる
血液検査:血液中のアレルギー関連物質を調べる
吸入誘発テスト:(血液検査で陽性反応が出た場合)
アレルゲンエキスを吸入して発作が起こるかどうかを調べる
 
胸部X線検査
呼吸機能検査
(気道が狭くなっていないかどうかを確認するため、肺活量などを測定する検査)
喀痰(かくたん)検査
気道過敏性検査
   


 

 喘息は、1日のうちで深夜から明け方にかけて強い咳が出たり、温度差のある場所へ移動したときに咳が出たりするのが特徴です。そういった症状が、長期間続くようなら喘息を疑う必要があります。
 診断のポイントは、発作時の症状のほか、小児喘息やアレルギー疾患の既往の有無、家族歴、職業歴、喫煙歴、ペットの飼育歴などがあげられます。

   



   
 喘息(ぜんそく)治療薬には、コントローラー(Controller/長期管理薬)リリーバー(Reliever/発作治療薬)の2種類があります。
  コントローラー(長期管理薬)
発作を予防するために用いる治療薬。
気道の慢性的な炎症を抑えたり、気道を長時間拡げる
リリーバー(発作治療薬)
発作をいち早く和らげる治療薬。突然の発作が起こった場合に応急的に使う
抗炎症薬 ■吸入ステロイド薬
■ロイコトリエン受容体拮抗薬
■抗アレルギー薬
■ステロイド薬(静注)
気管支拡張薬 ■テオフィリン除放製剤
■長時間作用型β2刺激薬
 (吸入/貼付/服用)
■短時間作用型β2刺激薬
■テオフィリン剤
 (錠剤・静注)
経口ステロイド薬
 コントローラーとして、喘息治療に最も効果を上げているのが、抗炎症吸入ステロイド薬です。ごく少量の成分が気道に直接作用して炎症を抑えるため、副作用も少なく、長期の使用ができます。
 口の中の炎症やのどの痛み、声がれなどの副作用がみられることもありますが、吸入後にうがいを十分にすることで、それらの症状を未然に防ぐことができます。
 発作が起こった場合、狭くなった気管支を拡げる「β2(受容体)刺激薬」という気管支拡張薬を用いるケースもあります。この薬は呼吸困難による苦痛を取り除く効果はありますが、喘息の原因である炎症を抑える作用はないので使用時には注意が必要です。また、この薬には「長時間作用型のコントローラー」と「短時間作用型のリリーバー」の2種類があります。
 経口ステロイド薬は、リリーバーとして重症の喘息や、大きな発作が起こったときに用いられます。炎症を抑える作用が強い分、副作用のリスクも高いので、吸入ステロイド薬と使い分けることが大切です。
ステップ 1 日常長期管理薬
ステップ 2 どれか1つを選択
吸入ステロイド薬(低用量)
ロイコトリエン受容体拮抗薬
ステップ 3 どれか1つを選択
吸入ステロイド薬(低用量)+長時間作用型β2刺激薬
吸入ステロイド薬(中用量か高用量)
吸入ステロイド薬(低用量)+ロイコトリエン受容体拮抗薬
吸入ステロイド薬(低用量)+テオフィリン除放製剤
ステップ 4 1つ以上を追加
吸入ステロイド薬(中用量か高用量)+長時間作用型β2刺激薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬
テオフィリン除放製剤
ステップ 5 1つか両方を追加
経口ステロイド薬(必要最低限)
抗IgE治療
(GINAガイドライン2006より)
※全ステップで必要に応じて、短時間作用性吸入β2刺激薬を用いる。
※一項目目が各ステップの第一選択薬。
   



   
 喘息で大切なのは、自分の体調を常に把握する(自己管理をする)ことです。
 その方法として、「喘息日誌」を毎日つけるのが効果的です。記載する項目は、発作の状況や薬の使用頻度、治療の記録などです。この日誌は、発作が何をきっかけに起こりやすいのかを客観的に把握したり、薬の飲み忘れや飲み過ぎを防ぐといった点で有効です。またかかりつけの医師が、治療方針を決めるための情報としても大変役立ちます。

   
 喘息は、自覚症状だけでは病状がはっきりとわかりません。
 家庭でも簡単に呼吸機能をチェックできる「ピークフローメーター」という器具を使うことによって、客観的に病状を把握することができます。ピークフロー値(最大呼気流量)は通常、起床時と就寝時に測定します。自覚症状が現れる前に気道の状態を確認できるため、この測定を毎日続けることで、発作を予測したり、症状の悪化を防ぐことができます。

   
1. 息を深く吸う
2. マウスピースをくわえる
3. できるだけ勢いよく、ひと吹きでピークフローメーターの中に息を吐き出す
4. 1、2、3、を3回行い、最も高い数値を記録します
 ピークフローの測定によって、喘息がどれくらいの症状なのか、薬の効果がどれくらいなのか、発作を誘発する原因は何か、などを把握することができて便利です。

   
 喘息発作を防ぐためには、普段の生活を今一度見直す必要があります。家の中をこまめに掃除してハウスダストを減らし、じゅうたんや布製のソファ、ぬいぐるみなど、ダニの温床になりやすい環境を無くして、アレルゲンを排除することが重要です。
 過労やストレスは、喘息の大きな誘因になるので、疲れた時はあまり無理をせず、十分な休養と睡眠をしっかりとることを心がけてください。
 アルコールや煙草は、気道の過敏性を高め、炎症を悪化させる原因になるため、極力控えたほうがいいでしょう。
 喘息を悪化させないためにも、発作の誘因を避けるのはもちろん、過度のストレスをできるだけ減らし、心身を常に良好な状態に保つことが大切です。

   


編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
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