インフルエンザかな?と思ったら
 
 
監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


  インフルエンザは冬に流行する・・・
     毎年12月から3月にかけて決まったように流行するのがインフルエンザです。
 インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスが活動しやすい環境は、摂氏20度前後、湿度20%前後ということがわかっています。
 冬季は、特に湿度が低いという点でこのウイルスが活動しやすくなる季節といわれています。
 また、冬季は身体も細菌やウイルスに侵入されやすい状態になると考えられています。
    インフルエンザウイルスの侵入経路
   
空気中に含まれるウイルスやゴミ、細菌などの異物が気道(呼吸時の空気の通り道)の表面を覆っている粘液に付着します。
気道の表面を覆う繊毛(せんもう)細胞の働きで粘液を外へ外へと送り出し、痰(たん)として排出する繊毛運動がウイルスの侵入を防ぎます。
寒い時期は体温を保つため血管が収縮し、気道粘膜の血流も悪くなり、繊毛運動の働きが低下します。
その結果、ウイルスが侵入しやすい状態を招いてしまいます。

    インフルエンザは、法律で定められている感染症
     厚生労働省は国民の健康に影響を及ぼす恐れのある重要な感染症について、その発生を監視しています。
 定められた医療機関では、インフルエンザが発生した場合、診断した医師が厚生労働省に届け出ることになっています。
 インフルエンザを重症の風邪と考えている人も多いでしょうが、実は国家的な規模で監視を行う必要のある重要な感染症の1つなのです。
インフルエンザウイルスなどの微生物を病原体と呼び、こられの病原体が体に入ることで起こる病気のことを感染症と言います。
   

  症状は急激に・・・
     インフルエンザウイルスに感染すると、1〜3日間の潜伏期間後発病し、高熱(38〜40度)とともに悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状が現れます。
 また鼻水、喉(のど)の痛みや胸の痛みを伴うこともあります。発熱は3〜7日間程度続きます。
 一般的な体力のある大人であれば、1週間ほどで回復に向かいます。これは、体の中の免疫機能が働いて、ウイルスに対する抗体ができたことによります。
 インフルエンザの症状は、普通の風邪とよく似ていますが、1つ1つの症状を比べていくと違いがはっきりします。
 風邪は、鼻や喉などの症状が強いのに対し、インフルエンザは悪寒、発熱、関節痛などの全身症状が急激に現れます。
    インフルエンザと風邪の違い
   
  インフルエンザ 風 邪
初期症状 悪寒、頭痛 喉の痛み、くしゃみ、鼻水
主な症状 発熱(38〜40度)
頭痛、悪寒(重度)
筋肉痛、関節痛、
倦怠 (けんたい)感(重度)、
下痢、腹痛
発熱(軽度)
鼻水、鼻づまり、悪寒(軽度)、
倦怠感(軽度)
その他 ・感染は短期間で急激に拡がる。
・肺炎などを併発して重症化することがあり、高齢者では死亡率が高くなる。
・感染は、徐々に拡がる。
・重症化することは少ない。
   

  検査で判定、A、B型?
     インフルエンザウイルスはA型B型、C型の3種に分けられます。人に感染して問題を起こすのは、このうちA型とB型のウイルスです。
 特に、A型ウイルスは非常に変異しやすく、10年〜30年ごとに大流行することが知られています。
 C型ウイルスは変異がほとんどみられず、安定した性質のため、感染しても病気になることはめったにありません。
 現在のインフルエンザの検査は、迅速(じんそく)診断キットを利用し、15分くらいで判定ができるようになりました。鼻や喉の粘液を採取するだけで済むため、患者さんの負担も軽くなっています。

     

  診 断
     インフルエンザウイルスの迅速診断キットを利用すると、ウイルス感染の有無ばかりでなく、感染したウイルスがA型かB型かということまで判定ができます。
 A型かB型かを判定することは、治療薬を選ぶ上で重要です。
インフルエンザは、普通の風邪よりも重い症状ですが十分な体力があれば免疫機能が働いて自然に治ります。
 しかし、体力の落ちている高齢者や、成長途上で免疫機能が未熟な小児の場合、危険な合併症を起こすことがあり、できるだけ早いうちに病院で受診することが必要です。
   

  治療法と治療薬
     インフルエンザの治療には、家庭での「一般療法」、薬での「対症療法」と「化学療法」があります。
   
一般療法
体力の低下を防ぐため、安静にして睡眠と栄養を十分にとります。
室内を乾燥させないようにして(湿度60〜70%が目安)、インフルエンザの活動を抑えます。
水分を十分にとって脱水症状を起こさないように気をつけます。
   
対症療法
発熱や関節痛、頭痛などには解熱鎮痛剤。
鼻水やくしゃみには抗ヒスタミン剤。
咳(せき)には咳止め。
  痰には去痰(きょたん)剤を使います。
一方、インフルエンザの症状はインフルエンザウイルスに対する体の自然な抵抗なので、薬で抑えると逆効果になることがあります。医師の指導のもとで、慎重に治療する必要があります。
   
化学療法:抗インフルエンザウイルス薬
 インフルエンザウイルスに有効な抗ウイルス薬が開発されて、現在では特効薬といえるものが登場しています。
 ただし、どの抗ウイルス薬も発病後48時間以内に服用しないと十分な効果が得られないため、インフルエンザかもしれないと思ったら、できるだけ早いうちに病院でウイルス検査を受ける必要があります。
   
「塩酸アマンタジン」
■特徴■ ・A型インフルエンザウイルスに有効
  ・発病後48時間以内の服用で有効
  ・ウイルスが耐性化しやすい
  副作用はめまいやふらつきなどがある
   
「ノイラミニダーゼ阻害剤」
■特徴■ ・A型、B型インフルエンザウイルスに有効
  ・発病後48時間以内の服用で有効
  ・ウイルスは耐性化しにくい
  副作用は少ないとされる
   

  インフルエンザを予防する
     インフルエンザにかからないようにするためには、流行する前にワクチン接種を受けておくことです。ワクチン接種をした全ての人の感染を防げるわけではありませんが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても軽い症状で済むというメリットがあります。
 日本では、毎年どのようなタイプのインフルエンザウイルスが流行するか予測し、それに対して有効なワクチンを準備しています。
 厚生労働省は、特に65歳以上の高齢者に対して積極的にインフルエンザワクチンの接種を勧めています。
 アメリカでは、乳幼児に対しても高齢者同様にワクチンの接種を勧めています。
 ただし、卵アレルギーのある場合は医師に相談してください。インフルエンザワクチンは製造過程で卵を使用しているため、アレルギーを起こす恐れがあります。
   
ワクチン接種のタイミング
 ワクチンは、接種してから効果が現れるまでに約2週間かかり、効果の持続は約5ヵ月と考えられています。
 インフルエンザの流行が12月からとすれば11月までに接種を済ませておいたほうがよいでしょう。
ワクチン接種の回数
 ワクチンは、1〜4週間の間隔を置いて2回接種するのが原則です。
 しかし、「65歳以上」「昨年予防接種をしている」「近年、インフルエンザにかかったことがある」人は、1回の予防接種でも十分な効果が得られるといわれています。
 接種回数を1回にするか2回にするかは医師にご相談ください。
抗ウイルス薬の予防投与
 2004年の7月からノイラミニダーゼ阻害薬の1つ「オセルタミビル」の予防投与が承認されるようになりました。
 原則として、インフルエンザ患者と同居している家族、あるいは共同生活を行っている人で次のような条件を満たすことが必要です。
   
65歳以上の高齢者 慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者
代謝性疾患患者(糖尿病など) 腎機能障害患者

家族がインフルエンザウイルスに感染しても健康な成人では、抗ウイルス薬の予防投与は認められていませんので、ご注意ください。
   



編集:株式会社ライフメディコム
制作:エンパワーヘルスケア株式会社
ご利用規約
Copyrights ©2009 Empower Healthcare K.K. All rights reserved.